2025年夏 特別対談:大阪・関西万博で目指す「海の蘇生」。気づきを広め変革を起こす(Part 2)

2025年夏 特別対談:大阪・関西万博で目指す「海の蘇生」。気づきを広め変革を起こす(Part 2)

4月13日に開幕し、10月13日まで開催されるEXPO 2025 大阪・関西万博。その中に注目すべき民間パビリオン「ブルーオーシャン・ドーム(BLUE OCEAN DOME)」があります。テーマは「海の蘇生」。海洋資源の持続的活用と海洋生態系の保護を掲げ、環境保護の考え方を学べるパビリオンです。

このパビリオンを出展し名誉館長を務めるのは、サラヤ株式会社 代表取締役社長の更家悠介さん。前半ではパビリオン出展に込めた思いや企業としての環境・社会問題への取り組み方などについて語っていただきました。現地を訪れたシーフードレガシー 花岡が引き続きお話を伺います。(Part 1を読む)

地域の問題を考える「対馬ウィーク」などを開催

花岡:前編では、プラスチックによる海洋汚染や、特にその問題が深刻な対馬の現状を知っている人が少ないというご指摘がありました。

更家:はい。そういった方々に現状を知っていただくため、ブルーオーシャン・ドームでは 6月16日〜22日に「対馬ウィーク」を開催し、アメリカや韓国とも協力して、さまざまな切り口でイベントを実施しました。対馬は現在マグロの養殖を行っていて、ニッスイのような大企業に加えて地元の漁業協同組合も養殖に乗り出しています。地域の中でも、魚を獲るだけでなく育てようというモチベーションが生まれている。そんな対馬の環境をゴミから守りたいという思いです。

ブルーオーシャン・ドームで6月に開催した「対馬ウィーク」。対馬の環境を守るために何ができるかを語り合った

 

花岡:大企業がまずムーブメントを起こすために行動し、それに続いて地域のコミュニティもサステナブルな取り組みを始めていくのが理想ですが、対馬がそのモデルになっているのですね。ブルーオーシャン・ドームでは対馬ウィークのほかにも、毎週のようにイベントを開催していますね。

更家:7月22日〜27日には「昆布の未来ウィーク」というのも予定しているのですよ。北海道もだんだん昆布が採れなくなってきているので、北海道庁職員、北海道庁出身の方が立ち上げたスタートアップ企業、函館市などと協力して、北海道の昆布を再生するための取り組みを立ち上げることになったのです。「函館ブランド」の構想なども発表する予定です。大阪は昔から昆布問屋が多く、出汁文化ですし、堺市でつくられている「都こんぶ」にも馴染みがあって、昆布にはご縁が深いですからね。海藻はブルーカーボンでもありますし、再生の取り組みは重要です。

シーフードレガシーとのコラボイベントも開催

花岡:9月25日〜10月5日には私たちシーフードレガシーと、「サステナブル・シーフードの未来」というイベントを開催していただきます。講演やディスカッションを行うほか、TSSSのセッションを中継でお伝えする予定です。TSSSには日本の方はもちろん海外の方も参加されるので、そういう方々にもブルーオーシャン・ドームを知っていただくきっかけになればと思います。

ブルーオーシャン・ドームでシーフードレガシーとのコラボイベントも開催 TSSSセッションの中継も予定している ブルーオーシャン・ドームでシーフードレガシーとのコラボイベントも開催 TSSSセッションの中継も予定している

更家:ブルーオーシャン・ドームのドームCのテーマが「叡智」です。日本だけでなく海外も含めた叡智を持ち寄って、中継やアーカイブ、YouTubeなどで発信していけたらいいですね。

海外と言えば、香港などで日本の寿司が人気ですが、現地のものではなく「日本で獲れた魚で、日本と同じ寿司を食べたい」という要望が強いようです。そうなると、日本の寿司ネタを味を落とさずにチルドや冷凍にして海外に運び、現地で再加工する技術が必要です。このパビリオンに先日、鳥取の氷温協会の方が来られたのですが、魚が完全に凍らないマイナス3度くらいの温度で熟成させる技術を開発していて、これがすごいのです。その技術をサステナブル・シーフードと組み合わせて新しいスタンダードを確立するような取り組みができるといいですね。

花岡:日本でとれた魚にはブラント価値があります。そこにサステナビリティ、トレーサビリティの要素が加われば海外市場に出すことができ、さらにそういった技術が加われば競争力が高まりますね。

ところで、サラヤ株式会社は一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブの幹事企業でもあります。こちらではどのような活動をしているのでしょうか。

更家:ブルーオーシャン・イニシアチブは2022年に設立したもので、海に関わるあらゆるステークホルダーと事業共創をして、海の課題解決を目指すプラットフォームです。課題解決のアイディアを持っている中小企業やスタートアップに大企業が資金援助をすることで、アイディアを実現しようというもので、現在は約100社が参画しています。

日経SDGSフェスにて。ブルーオーシャン・イニシアチブの自治体パートナーでもある対馬市の担当者と、海洋プラスチックの問題に関するセッションに登壇

日経SDGSフェスにて。ブルーオーシャン・イニシアチブの自治体パートナーでもある対馬市の担当者と、海洋プラスチックの問題に関するセッションに登壇

こちらはNIKKEIブルーオーシャン・フォーラムと連携して活動しています。NIKKEIブルーオーシャン・フォーラムはメディアの立場から政府への提言も行っていますから、そこと連携することでブルーオーシャン・イニシアチブも取り組みを進めやすいという面があります。

花岡:私はNIKKEIブルーオーシャン・フォーラムの水産資源分科会の分科長として、更家さんとも議論をさせていただいています。水産に関してはどのようなご意見をお持ちですか?

更家:日本の漁業はこれまで魚を獲りすぎてきました。この歴史がほかの国で繰り返されることが怖いと感じています。例えばモーリタニアはJICAなどによって派遣された日本の中村正明さんがタコ漁の技術「たこつぼ漁」を伝えタコ漁が盛んになったのですが、近年漁獲量が半分近くにまで減っています。日本は他国への指導も含めて漁業資源管理を体系的に行う必要があるのではないでしょうか。

3つのキーワードでサステナブル・シーフードを主流へ

花岡:日本は資源を利用する方法だけでなく、守る方法も教える必要があるということですね。

ところで、TSSSは昨年、「2030年までにサステナブル・シーフードを主流に」という目標を掲げました。この目標を達成するためには何が必要だと思われますか?

更家:まずはサステナブル・シーフードが何かということを皆さんに知っていただくこと。そして流通・加工業社がコストだけに捉われず消費者に受け入れられる工夫をすることだと思います。消費者はいま懐が厳しいですし、新しい魚種や深海魚を使ってもサステナブル・シーフードへの理解がなければ受け入れられません。

そして、地産地消も大きなテーマです。全国への流通も大切ですが、地域ブランドを立ち上げ地域の食に付加価値をつける方法もあります。美味しいものを少しだけ食べたいという需要もあります。消費者の反応をこまめに見ながら地域の魚を楽しんでいただくという取り組みも考えていただきたいですね。

「地産地消も日本の食の価値を高める方法」と語る更家さん
「地産地消も日本の食の価値を高める方法」と語る更家さん
「まずはサステナブル・シーフードを知ってもらうこと。それも花岡さんの仕事ですね」

花岡:私も同感です。インバウンドも増え、日本の各地域でその土地ならではの体験をしたいという需要が高まっていますから、そこをターゲットにすることもできますね。

そのほかにも、サステナブル・シーフードを主流化していくには、IUU漁業や人権問題、生物多様性の破壊など解決すべき問題が山積みです。こうした難問を乗り越えていく鍵は何なのでしょうか?

更家:そういった問題に対処するためのルールを決めるのは行政の役割です。行政があるべき姿をしっかりと示し、私たち民間はそれに従って正しく行動し、ルールを活用して新しいビジネスを生み出すこともできます。

ヨーロッパでは漁業に使う浮き玉の規制を始めていますが、日本やその周辺の国ではまだ浮き玉を使っています。コストが低いから、という理由からですが、そのゴミを処理するコストを私たちが負担しています。これは正すべきことで、そのために行政にはしっかりとルールを決めていただきたいですし、私たち民間ももっと声を上げるべきだと思います。

 

 

更家 悠介(さらや ゆうすけ)
1974年大阪大学工学部卒業。1975年カリフォルニア大学バークレー校修士課程修了。1976年サラヤ株式会社入社。工場長を経て1998年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。1986年にセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを設立し、理事長に就任。公益社団法人日本青年会議所会頭、一般財団法人地球市民財団理事長などを歴任。さらに特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン理事長のほか、特定非営利活動法人エコデザインネットワーク副理事長、大阪商工会議所常議員、公益社団法人日本食品衛生協会理事、ボルネオ保全トラスト理事、公益社団法人日本WHO協会副理事長、在大阪ウガンダ共和国名誉領事などを務める。2010年藍綬褒賞、2014年渋沢栄一賞受賞。

花岡 和佳男(はなおか わかお)
1977年山梨県生まれ。幼少時よりシンガポールで育つ。フロリダ工科大学で海洋環境学および海洋生物学を専攻した後、モルディブとマレーシアにおいて海洋環境保全事業に従事、2007年からは国際環境NGO日本支部にて、サステナブルシーフード・プロジェクトを推進した。2015年7月に独立し、株式会社シーフードレガシーを創立、CEOに就任。環境持続性および社会的責任が追求された水産物を日本を中心としたアジア全域において主流化させるためのシステムシフトを牽引している。
先見性のあるビジョンと国内外の水産業界、金融機関、政府、NGO、アカデミア、メディアなど、多様なステークホルダーをつなぐ、その卓越したリーダーシップにより、アジアの水産業界における革新的なリーダーとして注目されている。

 

サラヤ(株)はサステナブルシーフード・サミットin大阪の協賛企業です。また、更家社長は同サミットにもご登壇(10月1日(水)午前の基調講演)されます。ぜひご登録の上、ご参加ください。

 

 

取材・執筆:河﨑志乃
デザイン事務所で企業広告の企画・編集などを行なった後、2016年よりフリーランスライター・コピーライター/フードコーディネーター。大手出版社刊行女性誌、飲食専門誌・WEBサイト、医療情報WEBサイト・医療書籍など、あらゆる媒体で執筆を行う。

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