日本初 サステナブル・シーフードを学食に! 横浜市立大 学生団体 挑戦の裏舞台(前編)

日本初 サステナブル・シーフードを学食に! 横浜市立大 学生団体 挑戦の裏舞台(前編)

2022年の「第4回ジャパン・サステナブル・シーフード アワード」で、U-30部門のファイナリストに選ばれたTEHs(テフズ)。TEHsは横浜市立大学公認の学生団体で、学生の発意から大学の食堂に“サスシー”(サステナブル・シーフード)を導入する「サスシープロジェクト」を実現させたことが注目されました。

そのTEHsは立ち上げから5年目を迎え、今年3月には創立メンバーが卒業。今まさに転換期を迎え、新たな一歩を踏み出そうとしています。
今回は、TEHs第3期メンバーの折田実祐さん、池田果南さんにお話を伺います。前編では、団体立ち上げの経緯や活動内容、国内で初めて学食にサステナブル・シーフードを導入した「サスシープロジェクト」実現の苦労などについてお話しいただきます。

 

横浜市立大学公認SDGs学生団体「TEHs」
大学での授業をきっかけにSDGsに関心を持った学生有志が集まり、2019年8月から活動をスタート。2020年2月に大学の公認団体となり、2022年5月、日本の大学で初めて生協食堂にサステナブル・シーフードを導入。今年8月で活動5年目を迎える。2022年の「第4回ジャパン・サステナブル・シーフード アワード」で、U-30部門のファイナリストに選ばれた。インスタグラム(@tehs22__/@ycu_tehs_sustainableseafoodpj)、ツイッター(@TEHsycu)で活動内容を公開中。

 

きっかけは、パナソニックの特別講義

——TEHs立ち上げのきっかけと、活動内容をお聞かせください。

池田:
私たちの二つ上の先輩が、「国際関係論」という授業をきっかけに「横浜市立大学の学生にSDGsを広めたい」という思いでTEHsを立ち上げました。その後、「環境論入門」という授業でゲスト講師としてパナソニック株式会社の喜納厚介さんが登壇されました。喜納さんは日本で初めて社員食堂にサステナブル・シーフードの継続導入をした方で、その取り組みについてお話をしてくださったそうです。そこで、先輩が横浜市立大学の生協食堂にもサステナブル・シーフードを導入したいと考え、「サスシープロジェクト」がスタートしました。TEHsは最初5、6人でスタートしたのですが、5年目の現在は100名ほどのメンバーが活動しています。

TEHsは、SDGsの目標に沿って学生主体で発案し行動を起こすということを目的に活動しています。サステナブル・シーフードを学生食堂に導入する「サスシープロジェクト」がTEHsの始まりであり最も大きなプロジェクトですが、そのほかにもスポーツ感覚でゴミ拾いを楽しみながら街の美化に貢献する「スポGOMI」の第7回イベント(2022年7月開催)に参加したり、手話の勉強会や、難民への理解を深めるための講演会や上映会なども行ったりしています。

 

3期・4期のサスシーメンバー

 

——折田さん、池田さんはなぜTEHsのメンバーになったのですか?

折田:
私は大学でSDGsのことを初めて知ったのですが、インプットする機会はあるのにアウトプットする機会がないと感じました。そこで、少しでも何かできないかと思いTEHsのメンバーになりました。

池田:
私はもともと社会活動やSDGsに興味があり、友人に誘われたということもあってTEHsに入りました。実際にプロジェクトに参加すると、各課題の解決にはなかなかうまくいかないことも多いのですが、それ自体も自分にとって貴重な経験になっていると感じています。普段、学生は企業とコンタクトをとる機会は少ないですのが、TEHsの活動を通じて企業と連携した活動ができていることも自分のプラスになっていると思います。

 

大学や複数の企業と連携しながら実現へ

——「サスシープロジェクト」を実行するにあたり大学側とはどのようにして連携しているのでしょうか?

池田:
生協食堂でサステナブル・シーフードを提供するためには、CoC認証を取得する必要があります。CoC認証の取得には費用がかかりますが、立ち上げたばかりのTEHsはまだ大学公認の団体ではなく、活動補助金も支給されておらず、その費用を用意することができませんでした。そこで横浜市立大学の学生支援課と横浜市立大学生活協同組合(生協)に費用を負担していただきました。

そして、サスシープロジェクトのメンバーが生協理事会に出席し、これまでの活動報告と継続するメリットについてプレゼンしました。その後、議決により継続が認められたため、現在も活動を継続することができています。

——サスシープロジェクトではいくつかの企業とも連携しているとのこと。具体的な連携内容を教えてください。

池田:
プロジェクト立ち上げのきっかけとなったパナソニック株式会社様には、当初よくご指導いただき、社員食堂で使用されていたパネルやのぼりを無料で提供していただきました。サステナブル・シーフードを導入する背景や意義を示したもので、食堂の入り口などに掲示し、サスシープロジェクトの認知活動に活用させていただきました。

CoC認証については、パナソニック株式会社様からの紹介で、株式会社andBLUE(アンドブルー)様に認証取得のための確認事項やプロセスをサポートしていただきました。認証取得後も、ポップやポスターに認証ロゴマークを表記するための監査を受ける際には、サポートをお願いしています。

食材の仕入れ先はイオン株式会社様です。横浜市立大学がイオン金沢八景店と協定を結んでいるため、サステナブル・シーフードの仕入れに協力いただけることになりました。

 

生協食堂前に設置したパネルやのぼり

 

一年かけて大学を説得。継続にも困難を感じながら

——サスシープロジェクトは日本で初めて生協食堂にサステナブル・シーフードが導入された事例となりましたが、実現までにご苦労はありましたか?

池田:
まず、CoC認証を取得するための費用を学校に負担してもらう際に、すぐには承認が得られませんでした。そのため、当時の立ち上げメンバーが企画書を作成し、約1年かけて大学側にプレゼンを行い、その熱意が伝わって、徐々に理解を得られるようになり実現に至りました。

現在はプロジェクトを継続させること自体が大きなハードルになっています。立ち上げメンバーが今年3月に卒業してしまったこともあり、その際の引き継ぎがスムーズに行えずに苦労しました。また、今年の春休みに学校側も参加する理事会があったのですが、学生支援課から「立ち上げメンバーに比べて継続の熱意が感じられない」と指摘を受けてしまいました。そこで、春休み中はTEHsで何度もミーティングを行い、今後のプランニングや、そのプランに実現性があるのか、これからTEHsをどのように発展させていくのかということなどを新たな未来を見据えて話し合いました。

また、これまで提供するサステナブル・シーフードはイオン様から仕入れていましたが、価格の高騰などによって生協食堂で提供するのが難しくなりつつあるという問題もあります。その点でも苦労しましたが新しい仕入れ先が見つかり、現在はそちらのサンプルで新メニューの開発を行なっているところです。

 

立ち上げから5年目を迎え、継続にも苦労があったというTEHs。大学からも指摘を受け、改めて未来を見つめ直す時期を迎えているようです。後編では、サスシープロジェクトの具体的な内容や、今後の展望などについてお話を伺います。

 

取材・執筆:河﨑志乃
デザイン事務所で企業広告の企画・編集などを行なった後、2016年よりフリーランスライター・コピーライター/フードコーディネーター。大手出版社刊行女性誌、飲食専門誌・WEBサイト、医療情報専門WEBサイトなどあらゆる媒体で執筆を行う。