モントレー・フレームワーク
水産業界は何十年にもわたり、環境の持続可能性に取り組んできました。しかし、漁業と養殖業では労働者や地域の人々、先住民などの人権侵害が根強く残っています。例えば人種差別、性差別、階級差別、外国人差別などの慣習的な不平等、食料と生活の安全保障の弱体化、先住民族と地域社会のアクセス権の喪失など、他の深刻な問題を伴っていることが多くあります。
2017年、環境活動家、人権・労働権擁護者、学者、業界代表が、米カリフォルニア州モントレーに集まり、社会的責任に配慮した水産物の定義を「モントレー・フレームワーク」と名付け、共同発表しました。モントレー・フレームワークは、市民社会的、政治的、生態的、社会的、文化的人権を扱う3つの主要原則に基づいています。
原則 1: 人権、尊厳、リソースへのアクセスを保護
原則 2: 平等性と公平な機会を保障
原則 3: 食料と生計手段の保障を改善
これらの原則は、「国連のビジネスと人権に関する指導原則(英語)(日本語)」、「FAOの持続可能な小規模漁業を保障するための自主的ガイドライン*(英語)」を含む国際法、政策、条約に基づいて設定されています。
モントレー・フレームワークは、企業が自社のサプライチェーンにおいて人権や労働者の権利に与える潜在的な影響を評価する際の基礎となっています。「国連のビジネスと人権に関する指導原則」によると、企業は、自社のサプライチェーンに関わる人やコミュニティに与える全ての直接的な、または負の影響を評価、緩和、是正しなければなりません。モントレー・フレームワークは水産業に特化し、水産物における社会的責任は何をもって果たされるのかを示しています。
これを発展させたのが「社会的責任評価(SRA)ツール」です。SRAとは、漁業、養殖場、加工施設などサプライチェーンにおける人権と労働者のリスクのデータを収集、評価するために活用するツールで、モントレー・フレームワークの理論を実務レベルでの運用に生かすものとなっています。
モントレー・フレームワークは「社会的責任のある水産物」の共通の定義として、また包括的な人権デュー・デリジェンス・プロセスの一部として活用され、企業が水産サプライチェーンにおける社会経済的・労働的条件を改善するための取り組みを開始、または継続するのに役立っています。
執筆:
Ashley Apel, Director, Partnerships & Strategy, Conservation International
Emilie Carroll, Manager, Food & Agriculture, LRQA
Nahla Achi, Social Responsibility Senior Project Manager, FishWise