SeafoodWatch
Seafood Watchは、アメリカのモントレー・ベイ水族館が、サステナブル・シーフードを推進するために科学的根拠に基づいて情報提供している、水産物の資源状態についての格付け機関です。
アメリカ西海岸のモントレーでは、かつてイワシを中心に漁業と水産加工業が栄えましたが、乱獲の結果、1950年代に資源が壊滅し、1972年には最後の缶詰工場が閉鎖になりました。その跡地が1984年、過去の教訓を伝え海洋環境を保全することをミッションとするモントレー・ベイ水族館に生まれ変わり、オープン以来、野生動物の保護や教育プログラムなど様々な企画を打ち出してきました。その中で、1997年の企画展「Fishing for Solutions(解決策のための漁業)」の一環として環境に配慮して獲られたシーフードのリストを入館者に配布したのが、Seafood Watchの始まりです。1999年にはプログラムとして本格的に始動しました。
Seafood Watchの特徴は、北米で一般的に消費されている世界各地の水産資源の持続可能性を「赤」、「黄」、「緑」の3色に分けて、格付けしていることです。
・赤= avoid(回避):
乱獲による資源枯渇状態、あるいは、他の海洋生物や環境に悪影響を及ぼす方法で漁獲・養殖されているため、買うべきではない水産物
・黄= good alternative(可):
買ってもよいが、漁獲や養殖がどのようになされ、管理されているか注意すべき水産物
・緑= best choice(ベスト・チョイス):
よく管理され、責任ある漁獲や養殖によって生産され、 買うならまずこれがおすすめの水産物
このほか、認証の対象となっている魚種を「青」で示し、認証を取得している水産物を購入するように勧めています。また、認証商品はSeafood Watchの分類による「黄」と同等以上と評価できるとしています。消費者や企業はこれらの格付けを参考にすることで持続可能に生産された水産物を探すことができます。Seafood Watchは水産物のサステナビリティを確認する格付けツールの中で最もよく知られている存在の一つです。
格付けは最新の資源情報や生態系へのインパクト、漁業の管理状況を元に定期的に更新されて公式サイト上に公開されており、また、消費者向けにポケットサイズの冊子も配布されています。環境に配慮した持続可能性の明確な基準を確立し、購買力を持つ大手のバイヤーと協働することにより、Seafood Watchはサステナブル・シーフードを推進する上で、科学的根拠に基づいた有力な情報源となっています。
現在、Seafood Watchは、関連する科学や業界の専門家からのアドバイスを得ながら、他の水族館や動物園を通じて地域コミュニティへの普及を図るとともに、食品関連企業、レストランのシェフ、NPO等との協力関係でネットワークを広げています。
Seafood Watchのビジネスパートナーとして、水産物調達方針にSeafood Watchを組み込んでいる企業もあります。たとえば、2007年に、大手ケータリング会社のコンパスグループ・ノースアメリカ(Compass Group North America)は、Seafood Watchの格付けツールを活用して、環境に配慮した責任ある水産物の調達を2017年までに100%にするというコミットメントを表明しました。こうした企業のコミットメントは社会に大きなインパクトをもたらします。
日本でも、科学に基づく客観的な情報をもとに、日本の状況に適した格付けのツールを活用してサステナブル・シーフードを推進する上で、Seafood Watchの取り組みは先進事例として参考になります。
<引用文献>
Seafood Watch公式サイト:https://www.seafoodwatch.org/
モントレー・ベイ水族館公式サイト:https://www.montereybayaquarium.org/