丸紅「Sustainable Food Days」に潜入 社食で広めるサステナブル・シーフード

丸紅「Sustainable Food Days」に潜入 社食で広めるサステナブル・シーフード

商社大手・丸紅株式会社(以下:丸紅)の東京本社の社員食堂で、2023年7月24日から28日まで「Sustainable Food Days」が開催されました。

社員食堂は、多くの社員が利用するため、例えばパナソニック株式会社を筆頭に、サステナブル・シーフードや水産資源の現状を伝えるタッチポイントとして普及してきました。

このイベントにはどのようなねらいがあったのか、また、どのような効果があったのでしょうか? 当日の模様とともにお伝えします。

利用者は1日1,600人! 社食で社員へのサステナビリティへの理解を一気に促進

丸紅では、水産物以外にも様々な環境に配慮した製品を輸入しています。例えば、日本で輸入されるコーヒーの3分の1を取り扱っており、生産地の教育支援や労働環境の整備などに20年以上前から取り組んでいます。

しかし、自社のサステナブルな製品やサステナビリティに対する取り組みを社員が知る機会はあまり多くありません。そこで、複数の部署が「食」という切り口で横断的に協力し、サステナブルな食品・容器や取り組みに対する社員の認知度やサステナビリティに対する意識向上を目的に「Sustainable Food Days」が開催されています。2021年度から半年に一度のペースで行われており、イベントのメディア露出による製品のマーケティングも見込まれています。

丸紅の東京本社の社員食堂は1日に約1,600人もの社員が利用し、イベントの限定メニューは1つのランチメニューにつき1日に約200食が提供されました。開催期間中は社員食堂入口に、サステナブル・シーフードに関するパネルを展示したり、社内のエレベーター内でも動画を流したり、とイベントが社員の目に止まるような工夫がなされていました。パネルでは水産資源の現状や、サステナブル・シーフードについての説明があり、シーフードレガシー企画営業部の高橋諒も協力しました。

 

左:イベント期間中は食堂入口に水産資源の現状やサステナブル・シーフードについての説明パネルを設置。右:食堂内の画面でも動画でイベントをアピール。

 

新たな寿司ネタに!? ASC認証取得のバラマンディ

初日と2日目は、ASC認証を取得した「バラマンディの海鮮丼〜胡麻漬けと生〜」が提供されました。バラマンディ(和名:ミナミアカメ)は熱帯域に生息するアカメ科の魚で、気候変動への耐性が強い大型養殖魚として注目されています。

メニューに使用されたバラマンディはベトナムのAustralis社が養殖したもので、これまでは主に米国向けに輸出されていましたが、今回丸紅が日本向けに輸入を開始しました。色合いも真鯛に似ているため寿司ネタにも適しており、今後、認証を取得した寿司ネタとして日本での需要増加が見込まれています。

 

左:ランチの受け取りカウンターへの入り口には、ASCジャパンのパンフレットを設置。右:バラマンディの海鮮丼。真鯛のような淡白な味が楽しめる。

 

バラマンディの海鮮丼を選んだ社員の方数名に、選んだ理由をお伺いしたところ、「食堂でASCのパネルが目に入った」「“バラマンディ”という名前の珍しさに興味を引かれた」という意見が上がりました。また、多くの方がASCや水産業の課題については知らなかったものの、通常品と値段が大差なければサステナブル・シーフードを選んでみたい、と話していました。

 

陸上養殖サーモンを食育に活かす

4日目、5日目(最終日)は「陸上養殖サーモンの海鮮ちらし重」が提供されました。丸紅の推測では、社員食堂で陸上養殖サーモンが提供されたのは今回が日本で初めて。

丸紅は、プロキシマー社が静岡県小山町に建設した閉鎖循環式陸上養殖(RAS)プラントで生産されるアトランティックサーモンの独占販売契約を締結しており、そこで養殖されたサーモンが来年から日本で販売される予定です。

最終日の子ども向け食育イベントでは、社員の方が子どもたちに向けて、地球環境の課題や、閉鎖循環式陸上養殖とサステナビリティの関わりなどを説明し、最後に陸上養殖サーモンの試食会も開かれました。

 

経営方針に根差したサステナビリティ

丸紅では、地球環境と社会課題に対して「企業の中長期的な方針を明確化し、実践することが非財務価値および企業価値向上に直結する*1」との考えからサステナビリティ向上に取り組んできました。

今回のイベントに協力したシーフードレガシー企画営業部の高橋は、「サステナブルフードを社員食堂に導入することは、これまでも企業にとってSDGsへの貢献方法の一環となっていました。今回のイベントでは、大人だけでなく、将来の購買層となる子どもたちにも、両親が働く会社のサステナブルな商品を訴求しています。このような形は、企業が社員食堂でサステナブル・シーフードを取り扱う意義として大きなものであり、普及啓発と長期的なビジネス発展が合わさった効果的なモデルケースの一つだと感じています」と話しています。

「Sustainable Food Days」をリードした、食料第一・第二本部戦略企画室企画課、兼サステナビリティ推進部の藤本さんは「当社は、美味しさや品質・安全と言った従来の食に求められる要素に加え、環境社会課題の解決を可能とする食料を企画・提案することで、世の中の食卓を持続可能なものとする責務を担っています。今回は社員やメディアの皆様に加え、未来を担う社員の子供たちに、当社が取扱うサステナブルな食品について学んでいただき、実際に食べて頂きました。『サーモンが美味しかった。私も大人になったら人の役に立つ仕事につきたい』などの感想が寄せられており、両親と食べたサステナブルフードの美味しい記憶が、子どもたちの食、未来、将来の仕事を考えるきっかけとなってくれれば嬉しいです」と話しています。

 

*1 丸紅のサステナビリティ: https://marubeni.disclosure.site/ja/themes/11/