2023年 シーフードレガシータイムズ編集部が選ぶ5大ニュース

2023年 シーフードレガシータイムズ編集部が選ぶ5大ニュース

2023年の水産業を振り返ると、2月の大間産クロマグロの漁獲量未報告事件、8月の海水温過去最高記録、サンマの初競価格1尾2万8000円、など数多くのこれまでは想定できなかったような出来事が起こりました。

その中でも、サステナブル・シーフードのムーブメントにおいて影響力の大きかった5つのターニングポイントを、Seafood Legacy Times編集部が独自に選びました。おすすめ記事もあわせて、2023年を振り返ってみてはいかがでしょうか?

 

1. 世界・日本初!愛南漁協がマダイでBAP認証を取得(3月)


BAP(Best Aquaculture Practice)認証は、養殖業のサステナビリティを担保する認証として、ASC認証とともに国際的に認知されています。2023年3月に日本初、またマダイでの養殖では世界初の事例として、愛南漁協(愛媛県)に加盟するマダイ養殖業者の安高水産有限会社と水産加工会社である有限会社ハマスイが協働で取得しました。

国際認証は欧米に輸出する際のアドバンテージとして位置付けられますが、同漁協 販売促進部部長の岡田さんは水産業が盛んで、サステナビリティの取り組みにも熱心な愛南町にとって「持続可能な地域産業として取り組んでいくためにも認証を取得して「行動」をおこして行くことがマスト」と認証取得の背景についてコメントしています。

 

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2. 東京電力福島第一原子力発電所の汚染処理水の放出開始(8月)

汚染処理水の放出開始後、中国、香港、マカオ、ロシアが日本産水産物の輸入禁止・制限を開始しました。特に中国は、放出を開始した8月には日本産水産物の輸入を全面停止、2023年12月現在でも続けています。

その結果、日本の水産業はさまざまな影響を受け、対応に追われました。これにより政府からも多額の補助金が拠出され、例えば中国への輸出量が最も多いホタテは、国内外で盛んに消費キャンペーンが行われています。一方で北海道のホタテ漁業は全てMSC漁業認証を取得しており、2023年、その認証の取得が更新されました。

消費キャンペーンを単純な消費促進ではなく、サステナブル・シーフードの普及のきっかけとしたり、国内の他の魚種でもこの制限期間中にサステナビリティやレスポンシビリティを高め、欧米など他のマーケットにも輸出する際の武器をつくるチャンスとして活用することが望まれます。

 

3. TNFDフレームワーク公開(9月)

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、企業が自社の事業による自然への影響や依存度、それにより生じるリスクとその対策について開示するための枠組です。

どの業種、業界、事業規模でも活用できる形になっており、開示対象には海洋も含められています。近年、金融業界のブルー・エコノミーに対する注目が高まっていますが、TNFDの活用を機に、サステナビリティに関する取り組みを行う企業がより投融資を受けやすく、それによりネイチャー・ポジティブの実現が早まることが期待されています。水産業界では、2023年12月にニッスイが初めてTNFDレポートを発行しました。

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4. 企業の水産サステナビリティ・イニシアチブが加速


2023年も多くの水産・水産関連企業が、水産サステナビリティを達成するための調達方針の策定や水産資源の現状把握、目標設定をする動きが見られました。
FOOD & LIFE COMPANIES:調達基本方針を策定
ヒルトン:日本・韓国・ミクロネシア地区が、グローバル目標であるサステナブル・シーフードの調達率25%を達成
ニチレイグループ:持続可能な水産物調達ガイドラインを策定
極洋:グループの水産物資源調査
三井物産シーフーズ:水産物調達方針を発表 など

また、2023年は、World Benchmarking Allianceが発行する、影響力の大きい水産企業のサステナビリティの取り組みランキング「Seafood Stewardship Index」第3版が発行されました。金融機関が投融資をする際の参考資料として活用されていますが、日本企業ではスコアリングのための情報不足の項目もまだ少なからず存在します。こうした評価や世界からの注目は、バッシングをするためではなく、取り組みを応援するためのものでもあり、積極的に企業の取り組みの情報公開をしていくことが今後も求められます。

 

5. EUで水産企業のESG情報公開に関する政令発布、共通漁業政策も改正(1月、11月)

世界最大の水産市場をもつEUでは、日本にもいずれ波及するであろう動きがありました。まず、5月にCorporate Sustainability Reporting Directiveが施行されました。これは、大企業と上場企業に対し、社会・環境に関するリスクと機会、事業が人や環境に与える影響を開示することを求めるもので、水産・水産関連企業も対象に含まれるため、今後、EUと取引のある日本の水産企業も情報開示を求められることになります。
また、Common Fisheries Policyの改正では、EUの全漁船にVMSの設置を義務付ける、特定の魚種の遊漁については電子的に釣果を記録・報告することなどを求め、過剰漁獲、トレーサビリティ強化、IUU漁業の抑止が強化されました。

 

2024年は日本でも、施行開始以来初となる水産流通適正化法の見直しなどがあり、ムーブメントがさらに進む年になりそうです。Seafood Legacy Timesでは、来年も取材記事やコラムを通じて皆さんとムーブメントを共有し、一緒につくり上げていきたいと思っています。ぜひ今後もご愛読のほどよろしくお願いいたします!