サステナブル・シーフード用語集

海洋保護区

経済発展の一方で、環境が悪化し、生物多様性の低下が深刻になっている海を守るために設置されたのが海洋保護区です。

海洋保護区の定義は、日本政府と環境NGOである、IUCN(国際自然保護連合)、CBD(生物多様性条約)それぞれで異なります。

これらに共通するのは科学的な手法で保全価値が高い、海洋生物多様性分布マップを作成し、その海域の生物多様性の保全を目的としていることですが、その管理内容は制度によって異なります。

 

日本において海洋保護区は目的によって以下の3種に区分されています。(*1)

 

IUCNでは以下の保護区管理カテゴリーを設けて、海洋保護区の管理目的を分類しています。

それぞれによって規制内容は異なりますが、主に開発規制(届出制・許可制)や特定水産動植物の採捕規制などがあります。

また2021年に開催されたG7サミットでは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させるネイチャーポジティブという目標達成に向けて、陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護する「30 by 30」を約束しました。しかし、日本における領海および排他的経済水域のうち海洋保護区に該当する割合は約13.3%と低く、目標達成に向けては課題が多くあります(*2)。

特に漁業関係者からは海洋保護区によって操業が制約される場合もあるため、その大幅な拡大に懸念の声が多く上がっています。

しかし、海洋保護区の設定が必ずしも禁漁につながるわけではありません。海を適切に保全管理することによって、海洋資源を将来的につなげていくことが海洋保護区の目的です。
さらには、2021年3月に学術誌「Nature」で発表された研究によると、海洋の30%保護を進めることで世界の年間漁獲量を800万トン増やすことができるとわかりました。(*3)つまり、海洋保護区拡大と漁業の関係は表裏一体と言えます。

単に保護区を設定するだけでなく、規制内容を厳重にするなど、質も高めることも重要です。現在日本では国際的に推奨されている海洋保護区の質の評価・整理、情報収集や異なる関係者の参加などが不足しており、そうした部分を拡充しながら具体的な指導や支援策を反映させていく必要があります。

*1 https://www.env.go.jp/council/12nature/y120-35/mat02_4.pdf
*2 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/sanyo/dai49/shiryou2_9.pdf
*3 https://www.nature.com/articles/s41586-021-03371-z

 

<参考文献>
https://portals.iucn.org/library/sites/library/files/documents/PAPS-016-Ja.pdf
https://www.env.go.jp/nature/biodic/kaiyo-hozen/viewpoint/viewpoint05.html
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/031900137/
https://www.wwf.or.jp/activities/data/wwf_2011marine_genba.pdf
https://www.jaczs.com/03-journal/ronbun/koukai/2013_11_treatise.pdf
https://education.nationalgeographic.org/resource/marine-sanctuary

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た行

調達方針 トレーサビリティ

は行

プラネタリーバウンダリー ブルー・エコノミー ブルーカーボン

ま行

未利用魚 モントレー・フレームワーク

ら行

陸上養殖

A

AIP ASC認証

B

BAP認証 BSP認証

C

CoC認証

F

FIP

G

GDST Global Fishing Watch GLOBALG.A.P.総合農場認証 GSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)

I

ILO漁業労働条約(第188号) IQ(個別割当方式) IUU(違法・無報告・無規制、Illegal, Unreported and Unregulated)漁業

M

MEL認証 MSC認証

S

SeaBOS SeafoodWatch

T

TAC(漁獲可能量制度) TNFD

V

VMS