サステナブル・シーフード用語集

ブルーカーボン

マングローブ林や湿地、干潟、海藻(かいそう)・海草(うみくさ)などが生えている藻場などの海洋生態系に貯留される炭素を「ブルーカーボン」といいます。森林など陸上の植生によって吸収される炭素を「グリーンカーボン」と呼ぶのに対比する形で、2009年10月に国連環境計画(UNEP)の報告書で命名されました。

大気中や陸域からの海に吸収された炭素は、やがて光合成を通じて、マングローブやアマモやスガモといった海草、コンブやワカメといった海藻に取り込まれます。それらが枯れたものが、海底に堆積、埋没していくことで炭素が閉じ込められ、貯留するという仕組みです。

海は、大気中に放出された約55%ものCO2を吸収します。そのうちの半分から最大7割ぐらいが、マングローブ林や干潟、海藻・海草などに吸収されると試算されています。これらの生物資源量は植物の0.05%しかないにもかかわらず、植物とほぼ同量のCO2を吸収することがわかっており、強力な吸収源であることがわかります*1

気候変動枠組条約(UNFCCC)でも、ブルーカーボンの算出方法が採択され、CO2の削減量として計算することが認められています*2。2021年には、日本もはじめて、国連への温室効果ガス排出・吸収量​​の報告の際にマングローブ林の吸収量を算定しました*3

日本のブルーカーボン吸収量は約100万トン*4。森林や農地などの吸収量の最大12%を担うと試算されています*4。今後、40、50年を超える森林が増え、CO2吸収量が減ることが予測されており、ブルーカーボンが担う役割が重要になるとみられています。

こうした期待を受け、海藻・海草を育成し、積極的に海洋生態系での炭素吸収を増やそうとする動きが国内の自治体レベルでも活発化しています。たとえば、福岡市や横浜市ではアマモ場やワカメの育成などを行い、それらのCO2吸収・削減量をクレジット化​​し、販売しています*5

藻場の育成は炭素吸収源になるだけではなく、水の浄化や、海洋生物の産卵・保育場所になります。そのため、水産業界にとってもメリットがあります。横浜市などでは、子どもたちを巻き込んだワカメの育成や収穫イベントを開催しており教育プロジェクトとしても活用しています。ブルーカーボンは多様な価値を生む可能性があると言えそうです。

 

*1 UNEP. (2009) Blue carbon, https://digitallibrary.un.org/record/673428 (p6)
*2 2013年発行の「2006年国別温暖化ガスインベントリ・ガイドラインに対する2013年追補:湿地」
*3 2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について
https://www.env.go.jp/press/press_01477.html#:~:text=%E7%92%B0%E5%A2%83%E7%9C%81%E3%81%A8%E5%9B%BD%E7%AB%8B%E7%92%B0%E5%A2%83,8%2C530%E4%B8%87%E3%83%88%E3%83%B3%EF%BC%89%E3%81%AE%E6%B8%9B%E5%B0%91*
*4 桑江ら(2019)、浅海生態系における年間二酸化炭素吸収量の全国推計、土木学会論文集B2(海岸工学),Vol.75, No.1, 10-20
*5 福岡市
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/kankyotaisaku/shisei/hbn_zm.html

 

横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/ondanka/etc/ygv/bluecarbon.html

 

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