5年目を迎えて第3期のメンバーになり、大学側から「継続の熱意が感じられない」という厳しい指摘も受けたという横浜市立大学公認SDGs学生団体 TEHs(テフズ)。それから何度もミーティングを行い、これからTEHsをどのように発展させていくのか話し合ったといいます。
後編では、日本で初めて大学の生協食堂にサステナブル・シーフードを導入した「サスシープロジェクト」の具体的な内容や、今後の展望、日本の水産への思いなどについてお話を伺います。
——前編では、TEHsが5年目を迎え「当初と比べて継続の熱意が感じられない」と大学からの指摘があったというお話がありました。それが再び奮起するきっかけになっているようですね。
池田:
TEHs立ち上げの際には複数のメディアに取材していただき注目も集まりました。大学側もプロジェクトを継続できるようサポートしてくださっているのですが、それだけではダメだということで厳しい指摘があったのだと思います。学生側が主体となって、具体的にこれからどうして行きたいのか、どのようにステップアップしていくのか、ビジョンを描くことが求められていると感じています。
今思えば、来年再来年とTEHsの活動をつないでいくためには、このタイミングでしっかりと将来について考える必要があったということが理解できますし、大学側からの指摘は重要だったと感じています。
折田:
TEHsのスタートから5年が経って立ち上げメンバーも卒業し、残ったメンバーの士気がたしかに下がっていたと思います。大学の指摘を機にメンバーが再び結束し、現在は新メニューの提供に向けて皆でまた頑張っています。
——サスシープロジェクトで実際に提供したメニューについて教えてください。最初のメニューはどんな内容だったのでしょうか。
折田:
昨年5月に初めて提供したのが、「サスシーミックスフライ丼」(494円、以下全て税込)と副菜の「サスシーちくわサラダ」(118円)です。「サスシーミックスフライ丼」にはMSC認証のイカリングフライ、MSC認証の白身魚フライ、ASC認証のエビフライを使用し、「サスシーちくわサラダ」はMSC認証を取得した魚のすり身のちくわをトッピングしています。6月にはASC認証のスチームアサリを使用した「サスシーアッサリ塩ラーメン」(396円)を提供しました。
サスシープロジェクトのメニューは長期休暇の期間を除いて毎月、月初の1週間限定で提供しています。ほぼ毎回違ったメニューを提供していて、1日50食限定販売を目標にしています。目標は概ね達成できていますが、中でも人気だったのは、最初に提供した「サスシーミックスフライ丼」です。
現在は夏休み期間中ですが、10月の新学期に提供する新メニューを開発しているところです。明太子やエビ、タラなどを使用したメニューを考えています。今後はメニュー数を増やしたり、季節感を意識したメニューを開発できたらと思っています。
——メニュー開発では、生協食堂の調理スタッフの皆さんと連携しているのですね?
折田:
はい。メニューを開発するときは学生が内容を考えるのですが、生協食堂のスタッフの皆さんも「もっとこうした方がいい」「ちょっと味付けを変えてみたよ」というふうに積極的に提案してくださいます。また、CoC認証を取得するにはトレーサビリティの確保や他の食品との分別が必要ですので、そのための講習会も受けていただきました。生協食堂のスタッフの皆様には全面的にサポートしていただいています。
——サスシープロジェクトに対する学生の反応はいかがですか?
折田:
サスシーメニューを食べてくれた学生を対象に行なっているアンケートでは、この活動がきっかけでサステナブル・シーフードやSDGsについてを知ることができたという声がありました。さらに、自分で買い物をする際にサステナブル・シーフードを選ぶようになったという学生もいます。また、慶應大学の学生から、私たちの活動を参考にしたいということでインタビューを受けたこともありました。
——サスシープロジェクトを通じて、新たな気づきはありましたか?
折田:
残念ながら、人はなかなか行動に移すことは難しいということを実感しています。アンケートではこのプロジェクトでサステナブル・シーフードを知った、自分で買ったという回答がたしかにありますが、その数はまだまだ多くはありません。サステナブル・シーフードは、そうでないものに比べて多少価格が高いということもありますが、知識を得ても行動に移す学生はまだ少ないと感じています。
また、日本全体でも、サステナブル・シーフードがまだ身近に感じられていないようにも感じます。私たちは大学の授業でSDGsやサステナブル・シーフードを知りましたが、中学校や高校など、もっと早い段階で学校へゲスト講師を呼んでお話を伺うなど、学生が生の現場の声を聴く機会が増えていくと良いのではないでしょうか。
そして私たち学生側も、自分から情報を集められるようにアンテナを張ることが大事だと思います。興味を持って学び、サステナブル・シーフードを選ぶという行動を起こすことが、これからの社会への貢献につながるはずです。
——最後に、今後の目標をお聞かせください。
折田:
TEHsの立ち上げ時の目標が、横浜市立大学にSDGs広げることでした。この目標のもと今後も多くの学生にサステナブル・シーフードを知ってもらい食べてもらうことに加えて、これからは日常でも自分でサステナブル・シーフードを買ってもらえるよう、「学生の行動を変える」ことも目標にしたいと思っています。
池田:
今後は、TEHsが学生と社会の間の距離を縮めるプラットフォームのような場所になればと思っています。日本では学生が企業とコンタクトをとる機会があまりありません。そのため、TEHsでは「ジャパン・サステナブルシーフード・アワード」などに申し込んだり、イベントに参加したりという活動も積極的に行なっています。そのような場で企業や団体の皆様と出会うことが、今後のさらなる活動の広がりにもつながると考えています。
横浜市立大学公認SDGs学生団体「TEHs」
大学での授業をきっかけにSDGsに関心を持った学生有志が集まり、2019年8月から活動をスタート。2020年2月に大学の公認団体となり、2022年5月、日本の大学で初めて生協食堂にサステナブル・シーフードを導入。今年8月で活動5年目を迎える。2022年の「第4回ジャパン・サステナブル・シーフード アワード」で、U-30部門のファイナリストに選ばれた。インスタグラム(@tehs22__/@ycu_tehs_sustainableseafoodpj)、ツイッター(@TEHsycu)で活動内容を公開中。
取材・執筆:河﨑志乃
デザイン事務所で企業広告の企画・編集などを行なった後、2016年よりフリーランスライター・コピーライター/フードコーディネーター。大手出版社刊行女性誌、飲食専門誌・WEBサイト、医療情報専門WEBサイトなどあらゆる媒体で執筆を行う。