日本生協連とWWFが6年の協働で実現。インドネシアでの認証取得の舞台裏(Part 2)

日本生協連とWWFが6年の協働で実現。インドネシアでの認証取得の舞台裏(Part 2)

日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室 松本 哲
(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 海洋水産グループ 吉田 誠

第6回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード(JSSA)。コラボレーション部門で特別賞に選出された「インドネシア・エビ養殖業改善プロジェクト(AIP) 第三期」。Part 1では、2018年の第一期スタートから8年間にわたる、現地生産者との関係構築や養殖池での稚エビの池入れから収穫までの生残率向上や、ASC認証取得までを振り返りました。

認証取得のためには苦渋の決断もあったという今回の取り組み。今後はどのような方向を目指していくのでしょうか。Part 2では、マングローブの植樹活動やアチェ州 親エビ漁業の改善活動などについてもお話を伺います。

一筋縄ではいかないマングローブの再生活動

——ASCのエビ養殖基準ではマングローブ林の再生も求められています。どのように取り組んでいらっしゃいますか?

 

松本さん:ASC基準では、対象の養殖場を開くにあたって失われたマングローブ林がある場合、少なくともその50%以上を回復することが求められます。そのため、プロジェクト対象地域でもマングローブの再生活動に取り組んでいます。南スラウェシ州と中部ジャワ州において25.4ヘクタールで再生を行い、このうち16.2ヘクタールで活着(根付き)が確認されています。(2025年3月時点)

マングローブの再生活動を行っている南スラウェシ州の現場 マングローブの再生活動を行っている南スラウェシ州の現場

吉田さん:マングローブの再生は、一筋縄ではいかない難しい取り組みです。南スラウェシ州では、2022年のはじめまでに16ヘクタール近くにあたる面積の再生を確認していましたが、その後モニタリングを行ったところ、半分以上が根付かずダメになっていることが分かりました。その主な原因は、苗木を植えても波などの影響で損傷したり、その場所が新たな養殖池になってしまったことによるものでした。

これを教訓に、自然環境面と社会環境面からマングローブの再生に適した場所かを判断するためのガイドラインを作成しました。2023年からはこのガイドラインをもとに再生と定期的なモニタリングを行い、活着率も改善してきました。マングローブは、洪水や高波から養殖地を守り、周辺地域の暮らしも守る重要な存在です。だからこそ、今後もこの再生活動を続けていきたいと考えています。

責任あるエビ養殖に向けた天然の親エビ漁業の改善

——インドネシア アチェ州で天然の親エビ漁業の改善活動も行っていらっしゃいます。概要をお聞かせください。

吉田さん:アチェ州での天然の親エビ漁業改善は、第二期にスタートしました。インドネシアのブラックタイガー養殖は、天然のブラックタイガーを漁獲して、孵化場で産卵させ、そこで生まれた稚エビを養殖池で育てる仕組みです。つまり、親エビ漁業のサステナビリティが確保されていなければ、養殖のサステナビリティも確保できないと考え、日本生協連様にご提案して協働の取り組みに加えることになったのです。

まず、アチェ州では漁業管理の体制がなかったので、現地政府を含むステークホルダーに体制構築の働きかけを行いました。働きかけを通じて漁業管理計画策定のためのワーキンググループが形成され、ステークホルダー話し合いを重ね作業を進めた結果、2023年に計画が完成しアチェ州知事令として正式に承認されました。

これと並行して、現場でも漁業者と協力して改善を進めました。アチェ州では非正規な漁業者への対応や混獲管理の改善が特に課題となっていました。そこで、正規の漁業者に必要なライセンスの取得に関するサポート、また混獲を適切に管理するための研修などを行ってきました。その結果、ライセンスを取得し正規の漁業者になった事例も徐々に増えてきました。さらに、資源状況を把握し管理に生かしていくために、漁獲データの収集にも取り組んでいます。

そして、こうしたアチェ州での天然の親エビ漁業を改善する取り組みと、中部ジャワ州や南スラウェシ州での養殖業改善とをつなげることも進めています。親エビは漁業者から中間業者を通じて孵化場に、そこで生産された稚エビが養殖生産者へ販売するという、流通が地域もまたがり複雑になっています。

そこで、アチェ州の中間業者の協力のもと孵化場との関係を構築し、南スラウェシ州や中部ジャワ州の一部の養殖池で、アチェ州の親エビ由来の稚エビを使うことができるようになりました。個々の取り組みで進捗がありつつ、さらにそれらがつながってきていることに、私たちも大きな手応えを感じています。

——南スラウェシ州での養殖改善の取り組みも継続していらっしゃるのですね。

松本さん:はい。ただし、ASC認証の取得を目標とするかどうかは検討をしているところです。三期にわたって取り組みを続けてきた経験から、認証の厳しい基準をクリアすることを目標に継続することが果たして現地の生産者の生計向上や環境改善につながるのか、見直していくことも必要と感じています。

NGOとの協働で新たな気づきと視点を得られた

——これまでの取り組みの一つひとつ、そしてそれらを継続することがいかに大変だったか、これまでのお話で理解できました。最後に、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか。

松本さん:担当者としては、来期もこの取り組みを継続したいという思いがあります。ASC認証の取得をさらに広げることは簡単ではありませんが、現地の生産者にとってはブラックタイガー養殖が重要な生計手段であり、日本生協連にとっても戦略的な主力商品であるという点で、両者は強くつながっています。日本生協連はブラックタイガーの調達を維持しながら、環境や社会への責任を果たしていくことを今後も追求していかなければなりません。

インドネシアと日本をつなぐブラックタイガー。日本生協連・WWFと現地との取り組みは今後も続く インドネシアと日本をつなぐブラックタイガー。日本生協連・WWFと現地との取り組みは今後も続く

これまで8年間の三期を通じて、現地で起きている課題を知り、生協としてどのようなことができるのかを考えてきました。そして、取引先だけでなく、WWFと協働することで新たな気づきや視点も得ることができました。サプライチェーンの一部だけではなく全体を見て、生産者から消費者までをつなぐ取り組みが大切と感じています。これまでの教訓を生かしつつ、第四期の取り組みを提案できればと思います。

吉田さん:まず、これまでASC基準に沿って取り組みを進め、実際に認証も取得できたことを踏まえて、今後どのように改善の規模を拡大できるか、その方法を検討していきたいと考えています。

またこのプロジェクトは、現地エビ加工会社、日本生協連様、WWFによる協働体制のもと、生産者との密な協力があってこそ、ASC認証の取得という成果につながりました。しかし、将来的にはサプライチェーン関係者で改善の取り組みを自走できるようになる必要があると考えています。次の段階では、その自立のためにどのような支援が可能か、さまざまな角度から検討しているところです。

さらに、今回のような協働が他の日本企業にも広がることを期待しています。小規模養殖業や漁業を対象とした改善は複雑で難しさもありますが、WWFは世界各国にオフィスがあり、現場に精通したスタッフもいますので、そうしたネットワークと知見を生かし、多方面からサポートができればと考えています。

 

松本 哲(まつもと さとし)1988年 日本生活協同組合連合会入職。物流管理、商品営業、商品開発・企画などコープ商品(PB)事業に関わる業務を経験。2010年〜共同開発推進部部長、2012年〜東北支所支所長、2014年〜水産部部長、2016年〜生鮮原料事業推進室室長、2017年〜商品本部・本部長スタッフを経て、2022年よりブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室で水産分野を中心にサステナビリティへの取り組みを担当。

吉田 誠(よしだ まこと)
WWFジャパン海洋水産グループ所属。南米、東南アジア、中国などで、日本が輸入・消費している水産物(シーフード)の持続可能な生産と、現地の自然保護活動のコーディネートを担当。海外のWWFスタッフとも協力し、多くの生物が息づく海の自然と、漁業・養殖業、流通、消費のサプライチェーンを結んだ視点で活動に取り組む。

 

 

取材・執筆:河﨑志乃

デザイン事務所で企業広告の企画・編集などを行なった後、2016年よりフリーランスライター・コピーライター/フードコーディネーター。大手出版社刊行女性誌、飲食専門誌・WEBサイト、医療情報専門WEBサイトなどあらゆる媒体で執筆を行う。

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