2025年に開催された第6回ジャパン・サステナブルシーフード・アワード(JSSA)。コラボレーション部門で「現場起点で日本の海の未来を考える『水産未来サミット』」がチャンピオンに選出されました。
水産未来サミットは、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング代表取締役 社長の津田祐樹さんが実行委員長を務め、日本の水産業を未来へと続く産業にするため、全国の漁師、水産会社、研究者などが集まり、「現場起点で何ができるか」を議論する合宿形式の共創型サミット。多様な立場の関係者が集い、本音の議論から実際のプロジェクトや政策提言につなげている点が高く評価され、受賞につながりました。
そこで津田さんに、水産未来サミットに込めた思いや、サミットから生まれたプロジェクトや政策提言の内容などについて伺いました。
【水産未来サミット】
「現場起点で日本の海の未来を考える」をテーマに、全国の漁業者、水産関連企業、研究者、行政担当者などが一堂に会し、合宿形式で議論と共創を行うサミット。2024年に第1回(三陸)、2025年に第2回(鹿児島)を開催し、その場で立ち上がったプロジェクトが、政策提言や教育、資源管理、普及啓発など具体的なアクションへと発展している。2026年3月には、震災からの復興と地域漁業の再生モデルづくりを見据え、能登で第3回の開催を予定している。
——これまで2回、水産未来サミットを開催してこられました。サミット立ち上げの経緯やその特徴、開催に込めた思いをお聞かせください。
日本の海洋環境や水産資源の課題は、もはや一地域だけで解決できるものではありません。そのために、日本全体でこの課題を共有し、漁師を含め水産に関わる企業や研究者など多様な立場の人たちが集まって話し合う場を作りたいと開催したのが「水産未来サミット」です。さまざまな立場の方にこのサミットに参加いただき、互いの立場から新たな気づきを得ていただきたいという思いを込めています。
水産未来サミットでは、2日間の合宿の後に、自分で何かをやりたいと思った方がプロジェクトを起案し、賛同者を募ってプロジェクト化します。議論で終わらず、当事者が主体となり“動くプロジェクト”が次々と生まれる、これがサミット最大の特徴です。
これまで、2024年(三陸)、2025年(鹿児島)の2回の開催を経て、すでに十数件のプロジェクトが立ち上がり、日本全国の漁業者が主体となって情報交換をしながら成果を出すために動いています。このサミットから生まれたプロジェクトが実際の行動につながっていることは、大きな成果だと感じています。

——現在、水産未来サミットから生まれた18のプロジェクトが進行中とのこと。その中で注目すべきものをご紹介いただけますか?
今回は3つほど紹介させてください。
1つ目は「サスシー普及・啓蒙・拡販プロジェクト」。認知度がいまだ十分とは言えないサステナブルシーフードの現状を変えるため、生活者が自然と触れる場所へアプローチしています。たとえば、子どもから大人まで幅広い世代が利用する回転寿司チェーンやホテルなどにサステナブルシーフードの取り扱いを働きかけたり、EXPO 2025 大阪・関西万博にサステナブルシーフードのキッチンカーを出店しました。
また、そもそも「サステナブルシーフードとは何か」という定義の見直しにも踏み込み、これまで10回ほど勉強会も開催し、消費者にとってサステナブルシーフードを理解しやすく、より身近なものにすることを目指しています。
2つ目は「海と教科書プロジェクト」です。現在、日本の学校教育では、水産業の基盤になる海の基本的な知識を学ぶ機会がまだ十分ではありません。そこで、このプロジェクトでは、学習指導要領に海洋の教育課程を入れてもらうよう、文部科学省などを訪れ、必要性を訴えました。学習指導要領への正式な追加は簡単ではないもの、「教育現場では何ができるのか」という視点で、話し合いをしているところです。
3つ目は「資源管理事例集プロジェクト」です。日本の水産業を持続可能なものにするためには、資源管理は大変重要です。特に沿岸漁業では、自主的な資源管理が求められる一方、実際に行うにはどうしたらいいかわからず悩む声も少なくありません。そこで、日本各地で成功している自主管理の事例を調査し、共通点を分析しています。
その結果、大事なのは資源の管理手法そのものではなく、それを実行できるような”コミュニティの健全性”だということがわかりました。資源管理を行う必要性にメンバー全員が賛同し、それが長く続けられる土壌があるかどうかが重要なのです。そういった環境がどのようにしてつくり上げられているのか、さらに調査を続けているところです。
——「国に現場の声を届けるプロジェクト」では2025年に政策提言もされました。どういった提言をされたのでしょうか。
政策提言はこれまで2度行っています。1度目は2025年2月、自由民主党の水産総合調査会で「水産資源の減少や異変の原因究明に向けて研究予算を拡充すべきだ」という訴えは、同調査会や自民党水産部会を通じて議論され、2025年6月の骨太方針に政府の公式姿勢としても反映されました。
2度目は2025年9月、農林水産省の小泉進次郎大臣(当時)と藤田仁司水産庁長官を訪問し沖合魚種に限らず沿岸魚種の研究強化の必要性も直接訴えました。合わせて、研究者の不足を解消して漁業者との対話を増やしながら、科学に基づいた資源保全策への協力機運を高める必要性についても提言しました。
——水産未来サミットから生まれたプロジェクトの数々が形となり、結果を出しているのですね。議論する場から実際の行動に移し、それを継続させるために、どんな工夫をしていますか?
それぞれのプロジェクトは、2日間開催する水産未来サミットの後に自分で何かをやりたいと思った方がプロジェクトを起案し、賛同者を募ってプロジェクト化します。サミットの興奮もあって発足時はモチベーションも高いのですが、時間が経つにつれてそのモチベーションが薄れやすい。そこで、オンラインで月次報告会を毎月行い、サミットとサミットの中間に東京でリアルな中間報告会を行って、お互いの進捗を確認し合っています。
私のモットーは「有言実行」です。やれるかやれないかは後で考えることにして、まずは意思を表明し宣言する。そうすれば自ずとやらないわけにはいかなくなりますからね。
第1回・第2回と開催を重ね、多数のプロジェクトが立ち上がり成果を生みつつある水産未来サミット。後編では、2026年3月に能登での開催を予定している第3回について伺いながら、日本や世界の水産業の未来についてもお話しいただきます。
津田 祐樹(つだ ゆうき)
1981年、宮城県石巻市生まれ。グロービス経営大学院 経営学大学院修士課程修了。家業の水産小売・卸を営む中、東日本大震災に遭遇。地元水産業の後継者不足などの課題を解決するため、若手漁師ら数名と2014年に「一般社団法人 フィッシャーマン・ジャパン」を発足。2016年、フィッシャーマン・ジャパンの販売部門「株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング」代表取締役社長に就任。2024年より「水産未来サミット」を開催し、2026年3月には能登にて第3回開催を予定している。
取材・執筆:河﨑志乃
デザイン事務所で企業広告の企画・編集などを行なった後、2016年よりフリーランスライター・コピーライター/フードコーディネーター。大手出版社刊行女性誌、飲食専門誌・WEBサイト、医療情報専門WEBサイトなどあらゆる媒体で執筆を行う。
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