TSSS2025 DAY2:水産の未来のために。非競争連携で課題を共有し、トレーサビリティと投融資をつなぎ、アジアから変革を起こす

TSSS2025 DAY2:水産の未来のために。非競争連携で課題を共有し、トレーサビリティと投融資をつなぎ、アジアから変革を起こす

サステナブルシーフード・サミット in大阪の2日目は、水産業で日本初となる企業連携プラットフォームの発表にはじまり、終盤はアジア各国での行政、市民社会、企業など多様なセクターの複層的な連携を語り合うセッションとなりました。トレーサビリティと投融資をつなぐための仕組みづくり、天然資源を補う切り札とされる養殖を支える飼料のサステナビリティなど、課題をこれまでよりも一段と深く掘り下げ、手薄になりがちな視点を拾い上げる議論が交わされました。最後は2026年に開催されるサステナブルシーフード・サミットin東京(TSSS2026)へ向けて、また新たな知恵の共有をめざす取り組みの紹介で幕を下ろしました。

日本の水産流通企業による
非競争連携ラウンドテーブル誕生、困難な課題解決にインパクトを

 

パネリスト
・サステナブル・フィッシャリーズ・パートナーシップ(SFP) カルメン・ゴンザレス-ヴァレス
・株式会社セブン&アイ・ホールディングス セブンプレミアム開発戦略部 生鮮マーチャンダイザー 馬渕悠人
・マルハニチロ株式会社 サステナビリティ戦略部 部長 佐藤雄介

モデレーター
・株式会社シーフードレガシー 取締役副社長 山内愛子

水産企業がサステナビリティに取り組む上で、連携によって課題を解決するためのプラットフォームとして、日本の水産業界で初となる「責任ある水産物ラウンドテーブル(JRSR)」が発足。参加企業の他、経験豊かな国際NGOからパネリストを迎えて、新しい協働体制へのビジョンと期待を語りました。

新プラットフォームの事務局をつとめるシーフードレガシーの山内から主旨を説明し、サプライチェーンによるラウンドテーブルをすでに国際規模で実施している、サステナブル・フィッシャリーズ・パートナーシップ(SFP)のゴンザレス-ヴァレスさんから経験とアドバイスを共有。続いて馬淵さんと佐藤さんが、それぞれ小売店と水産メーカーの立場から、課題意識と自社の取り組みを紹介しました。

佐藤さんは「これまで水産業では情報共有の文化がなかったが、持続可能な水産業を構築するためには今後必ず、連携しての取り組みが必要になる」。馬渕さんは「日本の水産業は、連携しなくては生き残れない」と協働の重要性を語り、「沿岸の漁業者さんたちもとりこぼさず、産業を守っていきたい」と期待を寄せました。

(詳しいセッションレポートはこちら

「責任ある水産物ラウンドテーブル(JRSR)」のロゴを前に、発足をアピール 「責任ある水産物ラウンドテーブル(JRSR)」のロゴを前に、発足をアピール

資金調達のためにも求められる、サプライチェーン全体のトレーサビリティ

 

パネリスト
・FAIRRイニシアチブ 生物多様性・海洋研究 自然・海洋プログラム統括責任者 マックス・ブッシェー

・グローバル・ダイアログ・オン・シーフード・トレーサビリティ エグゼクティブ・ディレクター ヒュー・トーマス

・みずほフィナンシャルグループ 兼 みずほ銀行 サステナブルビジネス部 GCSuO補佐(サステナビリティ&インパクト) 末吉光太郎

・三井住友トラスト・アセットマネジメント スチュワードシップ推進部 シニア・スチュワードシップ・オフィサー 和田健

・立教大学 社会デザイン研究科 特任教授 河口眞理子

モデレーター
・東北大学グリーン未来創造機構・大学院生命科学研究科教授 兼 日経ESGシニアエディター 藤田香

近年では、投融資機関から求められる環境や人権に関する情報開示に応えるには、フルチェーントレーサビリティの構築が欠かせません。それにはサプライチェーン全体のトレーサビリティを可視化することで、IUU漁業や人権侵害などのリスクを排除することが重要です。

ブッシェーさんは、世界の大手上場水産企業20社を対象としたサステナビリティ基準(Coller FAIRR Seafood Index)を紹介。こちらは2026年に発表が予定されています。企業間プラットフォーム、GDSPのトーマスさんは、投資家も関心を寄せる、水産物トレーサビリティの国際標準化の重要性について説明しました。金融の現場からは、末吉さんが中小水産事業者のトレーサビリティ導入を支援する資金調達の仕組みについて、また和田さんが自然資本分野についてアセットマネージャーの関心が高まっている状況を紹介しました。

河口さんは、投資家が海に関わる事業を評価する難しさ、それゆえトレーサビリティとその信頼性を支えるGDSTやFAIRRのような仕組みが重要であると指摘しました。

(詳しいセッションレポートはこちら

FAIRRイニシアチブのマックス・ブッシェーさんが、水産業のサステナビリティ評価の重要性を紹介FAIRRイニシアチブのマックス・ブッシェーさんが、水産業のサステナビリティ評価の重要性を紹介

日本の水産物、世界の需要と輸出の壁

日本の水産物に世界から熱い視線が注がれる一方、輸出には国際基準への対応が必要です。このセッションでは日本の水産業と海外市場をつなぐさまざまな視点から、水産物輸出のカギを探る議論となりました。

パネリスト
・一般社団法人 大日本水産会 専務理事 髙瀨 美和子
・Wismettacフーズ株式会社 フードセーフティ&トレーサビリティマネジメント部 執行役員 岸 克樹
・あづまフーズ株式会社 販売事業本部 東京支店 東京支店長 久米 尚
・オディシー スーパーフローズン LLC グループCEO/NFIスシ・カウンシル代表 マイケル・マクニコラス

モデレーター
・株式会社シーフードレガシー 企画営業部 チーフ 孫 凱軍

髙瀨さんは大日本水産会の概要を紹介。1882年に準政府機関として設立され、現在は一般社団法人として水産業界の支援や輸出促進などに取り組み、また日本発の水産サステナブル認証であるMEL(Marine Eco-Label Japan)を推進し、国際基準GSSIの認証を受け、2025年5月20日現在で281件が認証を取得していると説明しました。

岸さんは、神戸で創業し、北米をはじめ海外へ日本食を輸出してきたWismettacフーズを紹介。近年では「製造者のHACCP認証*1、原料からのトレーサビリティ、容器包材のサステナビリティまで、製品に対する業界や顧客からの要求が高まっている」と実感を共有しました。

久米さんは、水産加工メーカーのあづまフーズが昔から海外で日本食製品を生産・販売してきたことを紹介。「日本では原材料のHACCP認証がまだ少数なので、国産品で扱えるのは養殖のマダイやホタテくらい」と現状を語りました。

マクニコラスさんはアメリカで冷凍水産品を扱う輸入流通会社、オディシースーパーフローズンのグループCEOであり、またNFIスシ・カウンシル*2の設立代表でもあります。ここではスシ・カウンシルの代表として、スーパーマーケットのテイクアウトスシが北米で大きく伸びている状況を紹介。「アメリカでは水産物消費が伸び悩む中、スシは過去4年間で60%成長。今やテイクアウトスシはピザと並ぶ定番テイクアウトメニューになっています」と語りました。

*1 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point、危害要因分析重要管理点)は、食品の原料入荷から製造、出荷まで全工程で、食中毒など健康被害を引き起しうる要因を分析し、記録・管理する手法で、国際的に広く用いられている。
*2 NFIスシ・カウンシル(NFI Sushi Council)は、北米の水産業団体、NFI(National Fisheries Institute)内に2024年に発足した、漁業者からスーパーマーケットまで水産物サプライチェーン上のステイクホルダーが参加する非競争連携グループ。スシに関する安全性と信頼性の確立へ向けて、品質・食品安全・表示方法の明確化、標準化、およびその浸透をめざす。公式サイトはこちら
大日本水産会の髙瀨美和子さんからも、日本の水産業の現状と輸出拡大に向けた課題を共有 大日本水産会の髙瀨美和子さんからも、日本の水産業の現状と輸出拡大に向けた課題を共有

それぞれの視点から見た課題

高瀬さんは、漁業の現場から聞く実感として、獲った時点では輸出は意識されないことが多い、と実情を語りました。「漁業者にとって、輸出は(自分の手を離れて)流通の中で起きることで、自分の獲った魚が輸出されるかどうかはわかっていないのです」。

岸さんは「問題は食品自体にとどまらず、調味料の原料や容器素材のリサイクル適性でつまずく例も多い」と指摘。食に関わる産業すべてが、輸出を意識して取り組む必要性を訴えました。

久米さんは、自社では資材や調味料は現地工場で、現地基準のものを調達できている、としながら「(同様の基準をクリアできる)日本産の原材料の調達が難しく、国産の天然魚は事実上扱えていない」と明かします。

マクニコラスさんは、北米の水産物調達においては食品安全、サステナビリティ、人権が3本柱で、これらを担保するために不可欠なのがトレーサビリティだと指摘。「これらの取り組みに適切な方針を与えてくれるのが、第三者認証に対する、業界としての信頼性ベンチマークです。食品安全についてはGSFI、サステナビリティはGSSIがよりどころで、またサプライチェーン上の人権・福祉については、最近SSCIができました。さらにGDST準拠のソフトウェアがこれらを統合し、相互運用のできる電子プラットフォームを介して、サプライチェーン全体で原料の出処までたどれるようになっています。また「日本で作られたMELもGSSIに適合した評価基準なのだから、多くのバイヤーにとってはMSCと同等の意味があります。そのことを輸出先へきちんと伝えるべきです」と加えました。

* GFSI、GSSI、SSCIはいずれも、第三者評価の認証スキームを評価するベンチマーク。GFSI(Global Food Safety Initiative、世界食品安全イニシアチブ)は、食品安全の向上と消費者の信頼強化にフォーカス。GSSI(Global Sustainable Seafood Initiative、世界水産物持続可能性イニシアチブ)は、持続可能性な水産業にフォーカスする。詳しくはこちらSSCI(Sustainable Supply Chain Initiative、持続的なサプライチェーンイニシアチブ)は、主要なサステナビリティ要件の網羅に加え、適切なガバナンスと社会的コンプライアンスの検証を監査する。

スシ・カウンシル」による品質基準づくり

マクニコラスさんは「スシ・カウンシル」を設立した目的のひとつが、スシの食品安全、品質、表示の統一的な基準づくりだった、と明かしました。「北米でスーパーマーケットのスシが年間40億ドルを売り上げる中で、たとえば『サシミ・クオリティ』といった言葉は消費者に強い印象を与え、高級品を連想させます。しかし実際にはこうした表現がイメージ先行で乱用され、生食を連想させておきながら、加熱用の食品だったりすることもあります」と語りました。スシのカテゴリーが北米で高成長を続け、シーフード全体の売り上げを牽引しているとすら言える状況にあって、これはますます急を要する課題だ、と危機感を訴えました。

透明性とたしかな品質を求める市場の声が高まる中で、この分野が消費者に信頼され、今後も成長を続けるためには国際的な課題への対応が必須、とマクニコラスさんは強調。「しかし日本で調べてすら、品質のガイドラインも基準も見つかりませんでした。ないなら作るしかない」と決断した、と言います。「私たちが作ろうとしている基準は、法的な規制ではありませんが、おそらく今後のデファクトスタンダードとなり、業界と市場に広く浸透していく可能性の高いものです。その基準づくりのプロセスに、日本の企業や全関係者に参加してほしいのです」。スシ・カウンシルへの直接参加によって、アメリカへの輸出の条件となりうる基準づくりに積極的に参画してほしい、とマクニコラスさんは日本の生産者に呼びかけました。

これには高瀬さんも「日本の水産業界が自ら、輸出拡大に必要な基盤づくりに取り組めたら」と同意。岸さんも、ナポリのピザやフランスのシャンパーニュなら原産地が基準をおさえているのに、寿司の市場を日本がリードできなくていいはずがない、と賛同しました。また久米さんは、特に欧米では生魚でのリスクが懸念されるリステリア菌食中毒の例を挙げて、国際基準の必要性に同意しました。

NFIスシ・カウンシル代表のマイケル・マクニコラスさんが、北米市場で高まる寿司需要と、安全性・信頼性・表示の標準づくりの重要性を解説NFIスシ・カウンシル代表のマイケル・マクニコラスさんが、北米市場で高まる寿司需要と、安全性・信頼性・表示の標準づくりの重要性を解説

中小の漁業者も含めた輸出政策を

輸出による成長は、個別の漁業者だけでなく、その集合としての組合にもメリットがあります」と高瀬さん。大日本水産会としても、今後は輸出なしに日本の水産業は成り立たないと考え、政府に支援を訴えている、と述べました。

岸さんはさらに、まず海外に大きな市場があることを実感してもらうこと、そして輸出をサポートする体制とノウハウが必要、とステップを分けて説明。「小規模漁業者も取り入れられるようなノウハウの蓄積も欲しい」と加えました。

久米さんは気になる点として「消費者にも生産者にも、認証のメリットがない」と指摘。「ここを解消しないと、いくら中間でがんばっても結果が出ません。認証を取れば生産者が具体的なメリットを得られるように、政府は方向性を明確に示して、方策を考えてほしい」と訴えました。

マクニコラスさんは、日本の水産物はすでに世界中で絶大な信頼を得ている、と力説。しかし輸出するなら相手国ごとのルールや規制があることを受け入れなくては、と述べ、日本からの輸出品もアメリカのニーズに合わせる必要がある、と語りました。「たとえば私が日本で商品を売るなら、日本の基準に合わせるのが基本です。日本からの輸出も同じではありませんか? これは障壁というよりも、単に目的のための手段にすぎず、その先にはかりしれない市場があります」と強く訴えました。

責任ある養殖飼料調達でひらく養殖の未来

水産物への世界的な需要が増加し、天然魚の資源が限られる今、養殖は水産物の重要な供給源となっています。養殖の環境負荷を軽減するために、特に飼料のサステナビリティに注目が集まり、エサに占める天然魚への依存率を下げる取り組みも進みつつあります。

パネリスト
・スクレッティング株式会社 マーケティング本部 ディレクター 徳井 貞仁
・水産養殖管理協議会(ASC)市場開発 欧州&アジア太平洋コマーシャル・ディレクター バーバラ・ユンカー
・マリントラスト CEO フランシスコ・アルドン
・株式会社ニッスイ 漁業養殖推進部 漁業養殖推進課 課長 平山 健史

モデレーター
・WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)自然保護室 海洋水産グループ長 前川 聡

スクレッティングの徳井さんからは、ノルウェーの飼料メーカーである自社は、魚を健康的かつ効率的に育成するために、栄養面から研究開発に取り組んでいる、と紹介。また養殖飼料にもサステナビリティ問題があり、IUU漁業の排除や労働問題にも対応が必要な中、「独自の追跡システムを含むトレーサビリティ、飼料のASC認証、そしてイノベーションによる魚の成長や健康促進などの付加価値創出」の、3つのアプローチで臨んでいると語りました。

ASCのユンカーさんは、養殖水産品を対象とした認証とラベリングによるポジティブなインパクトをめざすASCの活動を紹介。ASCのラベルは現在、120ヵ国で約3万点の商品に使われています。最近では新たに飼料の基準にも着手し、「総合的アプローチにより、水産由来と植物由来を含めすべての原料について、環境負荷の軽減をめざしています。現在100件の工場がプログラムに参加、46は認証済み、54が審査中、日本からも3社が参加しています」と紹介しました。

マリントラストのアルドンさんは海産原料(マリン・イングリディエント)について、主に魚粉と魚油を指し、75%が養殖飼料に使われる、と説明。その原材料には、海産原料用のために漁獲されたものと、水産物加工の副産物(食用に使われない頭、内蔵、皮など。漁業由来と養殖由来の両方を含む)がある、と説明。「マリントラストによる海産原料の工場認証は、飼料のサプライチェーンを原材料の由来までさかのぼって、責任ある調達と生産を担保し、安心して使える原料だと保証するものです。現在、世界31ヵ国で181ヵ所の認証工場、23ヵ国で121件のCoC認証、7ヵ国で8件のFIPがあります」と紹介しました。

平山さんからは、ニッスイグループで年間約5万トンに上る養殖生産(2024年)のうち約67%を生産するチリのサーモン養殖会社、サルモネス・アンタルティカ社を紹介。「採卵から種苗、海面養殖、飼料、加工まで一貫生産で、年間3万トン以上を生産。製品は2024年に100%ASC、100%BAPを取得、飼料工場は2025年4月に工場としてASCを取得」とのこと。また飼料の原料には、「認証品の海産原料の他、藻類オイル、EPA・DHAカプセル食品の副産物を原料とするマリンオイルを活用して、天然魚への依存を減らしています」と述べました。

ニッスイの平山健史さんが、チリでの一貫生産体制と飼料サステナビリティへの取り組みを紹介 ニッスイの平山健史さんが、チリでの一貫生産体制と飼料サステナビリティへの取り組みを紹介

飼料認証が浸透するための強みと課題

徳井さんは「当社はパーパスをFeeding the Futureと定義しており、次世代に持続可能な方法で水産物を供給していくという考え方が、事業の中に浸透している」とした上で、「課題はサステナビリティをいかに価値として訴求していくか」であると指摘。「サステナビリティの価値化は1社ではできず、持続可能な養殖業の発展に向けてバリューチェーン全体で取り組みたい」と語りました。

日本への浸透について問われ、ユンカーさんは、ASCの飼料基準は新しい基準なので、自分たちも学びながら、工場と緊密に連携して進めている、と答えました。「企業規模の大小にかかわらず、すべての原材料について人権デューディリジェンスに取り組むことは簡単ではありません。しかしそれは、サプライチェーンの透明性へ向けた一歩でもあります」と課題の先にあるものを語りました。

同じ問いに対し、アルドンさんは「今はまだ言葉の壁があります。現在の基準はスペイン語と英語しかないので、翻訳に取りかかっているところです」。

世界と日本、背景と課題

平山さんはチリでの養殖について、自社の飼料工場でさまざまな原料を使ってテスト飼料を製造し、これらの飼料を自社養殖場で評価できたことが強みだった、と説明。チリでは「産業の規模が大きく、周辺産業が確立されている」ことが大きな特徴だと語りました。「日本では海外と比べてASCの知名度がまだ高くありませんが、飼料のサステナビリティやその認証は、いずれ直面する課題。今後は飼料のサステナビリティへの取り組みも拡大していくでしょう」と展望を語りました。

一方、日本で飼料の原料として多く使われる飲食店や食品加工の残渣について、ユンカーさんは「そこに多くの魚種が混在していることが事態を難しくしています。私たちとしては、副産物の活用を排除はしたくありません。捨てられていたものがリサイクルされること、それ自体がポジティブなことですから。ただし、IUU漁業由来や絶滅危惧種が含まれていないことが条件です」と説明しました。

ユンカーさんはさらに続けて「簡単ではありませんが、今後には期待を持っています。日本でもいろいろなイニシアチブが出てきた今、期限を設けたアクションによって、結果につなげていくことが重要です。そのためには、私たちも含め、協働が有効だと思っています」と呼びかけました。

日本での取り組み拡大に期待を寄せ、協働の重要性を呼びかけるASCのバーバラ・ユンカーさん 日本での取り組み拡大に期待を寄せ、協働の重要性を呼びかけるASCのバーバラ・ユンカーさん

アジアで持続可能な水産業を実現する「新メタ・コアリション」構想

パネリスト
・株式会社シーフードレガシー 取締役副社長 山内愛子
・青島マリーン・コンサベーション・ソサエティ(QMSC) 創設者兼会長  ソンリン・ワン
・ヌサンタラ自然保護財団(YKAN) 漁業シニアマネージャー グラウディ・ペルダナハルジャ

モデレーター
・株式会社シーフードレガシー 創立者 / 代表取締役社長 花岡和佳男

サステナビリティへの取り組みを主として欧米に牽引されてきたアジア地域ですが、欧米の市場に大きな成長が見込めず、関税障壁などのハードルも高くなっています。シーフードレガシーの代表取締役社長、花岡は「アジア自身の市場でサステナビリティを追求し、水産現場を支えるモデルを緊急につくるしかない」と危機感を語り、アジア各国のプラットフォーム同士が連携する「新メタ・コアリション(連合の連合)」を提唱。

ワンさんからは中国、ペルダナハルジャさんからはインドネシア、山内からは日本の視点から、現状と取り組みが共有され、各国の関係性を含めた議論が交わされました。中国、日本、韓国の東アジア3ヶ国は世界の水産物の40-50%を生産し、かつ互いに活発な貿易相手国。インドネシアは世界最大のマグロ漁獲量を誇り、日本をはじめ多くの国へ輸出しています。互いに市場として、供給源として依存しあう中で、各国内での多様な関係者の連携に加え、アジア圏内での視点や経験を共有しあうことで、共通の課題に取り組み、水産コミュニティを含めた持続可能性への展望を語りました。

(詳しいセッションレポートはこちら

QMSCのソンリン・ワンさんが、中国の水産サステナビリティの取り組みを紹介 QMSCのソンリン・ワンさんが、中国の水産サステナビリティの取り組みを紹介

 

日経BP 総合研究所 総合研究所長 河井 保博

議論された話題の幅広さからも、あらゆる立場の人が共に取り組まないと解決しない問題であることが、改めて実感された2日間でした。最近、他分野でも頻繁に聞く「共に」という言葉が、決して気持ちの問題ではなく、そのように考えざるを得ない危機感の高まりがあるのだと気づかされました。共に取り組んで地道にチャレンジを重ねていくしか解決への道はないのだと。このサミットも今年で11回目になりますが、そのためにもますます多くの人を巻き込んで、みんなでチャレンジしながら、それを人の心に刷り込んでいくことが大事だと考えています。

株式会社シーフードレガシー 創立者 / 代表取締役社長 花岡 和佳男

初の東京外での開催に、多くの国々からの登壇者、参加者、迎えてくださった大阪、関西のみなさまのおかげで大成功をおさめることができ、本当に感謝しています。TSSSはアジア最大のサステナブルシーフード旗艦イベントとして定着し、この運動がますます大きく広がっていく流れを実感した11回目でした。

今後、もう一つ「S.E.A.FOOD Platform Design Lab(シーフード・プラットフォーム・デザインラボ)」という、新しい取り組みが始まります。これまで共に、市場に変革を起こす連携のプラットフォームづくりを進めてきた経験を、記録し、学術的に形にして、共有していきたいと考えています。「S.E.A.」はサステナビリティ(Sustainability、持続可能性)、エクイティ(Equity、公平性)、アカウンタビリティ(Acountability、責任)の頭文字です。これからもみなさまと「S.E.A.FOOD」を推進し、共に歩んでいければと思います。

日経BPの河井保博さん(右)とシーフードレガシーの花岡和佳男が、TSSS2025の多様なセッションを振り返った日経BPの河井保博さん(右)とシーフードレガシーの花岡和佳男が、TSSS2025の多様なセッションを振り返った

 

アーカイブ動画はこちら▼

サステナブル・シーフード用語集 JAPAN SUSTAINABLE SEAFOOD AWARD 歴代チャンピオン紹介

KEY WORD

サステナブル・シーフード用語集

水産分野の専門用語や重要概念を解説。社内説明やプレゼンにも便利です。