2025年 押さえておきたいサステナブル・シーフードニュース

2025年 押さえておきたいサステナブル・シーフードニュース

2025年も水産サステナビリティに関連する数多くのニュースがありました。その中から、シーフードレガシータイムズ編集部が注目するニュースをお届けします。

日本初 企業による環境・人権デューディリジェンスイニシアチブ誕生

今年も昨年に引き続き、水産関連企業の人権デューディリジェンスの取り組みに進展が見られました。7月、三菱商事は水産物に係る調達ガイドラインマグロ類に係る調達ガイドラインをそれぞれ制定。IUU 漁業に加え人権侵害の防止に取り組んでいくことが盛り込まれました。

一方で、マグロ漁船における強制労働問題の指摘も続きました。9月、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、台湾を拠点とするNGO、台湾人権促進会(TAHR)と共同で台湾漁船における強制労働問題の調査報告書を発表。それによると、強制労働の疑いのあるマグロが台湾の大手水産企業を経由して日本市場に流入していることが判明しました(レポートの詳細はこちら)。2024年に台湾から輸出された刺身用マグロの85%は日本に輸出されていることから、日本政府、並びに企業の対応が強く求められています。

【報告書】Silenced Voices:船上労働者の声はなぜ聞こえてこないのか?国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)

法制化に向けた動きもありました。6月に、韓国で企業に環境・人権デューディリジェンスを義務付ける法案が議会に提出されました。法案は500人以上の従業員がいる企業もしくは年間予算が2000億ウォン(約 211億8000万円)以上の企業が対象になります。法案では企業に対し、環境・人権政策の立案や人権アセスの実施、結果のモニタリングと情報開示などを求めています。アジア圏で、環境・人権デューディリジェンスが法制化された国はまだなく、可決されるとアジア初の取り組みとなります。

日本では、10月に水産流通企業7社による「責任ある水産物調達ラウンドテーブル」が始動しました。日本初となる取り組みで、一社では解決できない、サプライチェーンにおける人権・環境デューディリジェンスや相互運用可能なトレーサビリティーの確保などを協働で実施していきます。

科学に基づく目標設定を求めるSBTN 水産業界向けガイダンス

生物多様性の分野では、科学的根拠に基づく目標設定を求める国際イニシアチブ、「サイエンス・ベースト・ターゲット・ネットワーク(SBTN)」が水産業界向けのガイダンスを3月に発表。ガイダンスでは乱獲の防止や海洋環境保全、絶滅危惧種や保護種のリスク軽減などを求めています。

株式会社オカムラ食品工業(青森県)の子会社であるMusholm A/S(デンマーク)は、この枠組みを策定するためのパイロット企業の一つとして選出され、指標の策定に協力しました。

そして9月には「公海等の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用に関する協定(BBNJ協定)」が発効のための要件となる60か国の批准が集まり、2026年1月17日に発効することになりました。これで世界の海の約6割を占める公海を保全する包括的な仕組みが整うことになります。今後、協定の発効により海洋保護区の設置が進み、2030年までに陸と海の3割を保護区とする30by30の達成が期待されています。

企業による生物多様性保全を支援する金融商品

3月、ニッスイは三井住友信託銀行と「ネイチャー・インパクトファイナンス」の契約を締結したことを発表しました。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言などに基づく情報開示のさらなる充実化をはかることで、企業活動によるインパクトを評価する試みで、同行にとっては初の「ネイチャー・インパクトファイナンス」でもあります。

ニッスイは、2023年12月に「ニッスイグループTNFDレポート2023」をいち早く発行しています。金融機関からの支援を得ることで「持続可能な水産資源の確保」に向けた情報開示のさらなる進展が期待されています。

TNFD開示のパイオニア、ニッスイがいち早く報告書を発行できた理由

この他にも、みずほ証券が8月、生物多様性の保全や回復などに特化した債券(ネイチャーボンド)の発行を国内で初めて行うなど、投融資機関による、企業の生物多様性保全を支援する金融商品の誕生が続きそうです。

認証水産物 躍進。背景にSDGsへの関心

今年は認証水産物の躍進もありました。5月には、養殖水産物の国際認証BAP認証を運営するグローバルシーフードアライアンス(GSA: Global Seafood Alliance)が、日本国内で流通しているBAP認証ロゴ付き商品数がエビやサーモンを中心に200商品を超えたことを発表しました。

10月には、MSC認証水産物を扱うためのMSC CoC認証の取得事業者数が日本国内で400を突破。欧米を上回り、日本は中国、アメリカに次ぐ世界3位になったことが発表されました。特にマグロ・カツオ類を扱う事業者による認証取得が増加している点も注目されています。背景には水産資源への危機意識やSDGsへの関心の高まりがあると見られ、2016年から2019年の間に、前年比約35〜40%超で増加しています。

現場から水産資源保全を求める提言

漁業者やシェフなど、魚と日々向き合っている「現場」から、政策者に対し、水産資源保護を求める声もあがりました。

トップシェフチームChefs for the Blueは、小泉農林水産大臣(当時)と森水産庁長官(当時)に対し、水産資源の回復と食文化の維持継承に向けた提言書を提出。江戸前鮨の花形であるコハダをはじめ、地域の食にとって重要なマダコ、シャコ、アサリ、和食には欠かせない天然マコンブなど、多くの水産物が消えつつあり、このままではユネスコの無形文化遺産である「和食」が危機に瀕すると訴えました。

さらに9月には全国の漁業者や水産会社の有志が業界の未来に向けて議論する「水産未来サミット」で誕生した「国に現場の声を届けるプロジェクト」メンバーが、水産資源の回復に向けた研究予算確保を求める政策提言書を小泉農林水産大臣(当時)と藤田仁司水産庁長官に提出しました。

「現場」からの声をどう政策に反映していくか。内容と共に実現のスピードが求められています。

太平洋クロマグロの資源管理の動き

7月には富山で中西部太平洋まぐろ類保存委員会(WCPFC)の委員会が閉幕。資源回復を果たした太平洋クロマグロの持続可能な漁業にとって必要不可欠な中長期的な漁獲戦略と漁獲戦略評価を合意する予定だったものの失敗に終わりました。

ただIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策強化は進捗があり、クロマグロ漁業の監視強化についても、日本が提出した強化方針案をベースに議論が行われました。

12月には、シーフードレガシー含む日本の21組織がWCPFCと日本の水産庁に対し、マグロ資源の持続可能な利用と保全のための予防原則に従った漁獲戦略の導入を求める要望書を提出しました。

サステナブルシーフード・サミット 初の大阪開催 

今年は、アジア最大級のサステナブルシーフードイベント、サステナブルシーフード・サミットが初めて東京を離れ、大阪で開催された年でもありました(2025年10月1-2日開催)。

昨年掲げた目標「サステナブルシーフードの主流化」実現のため、のべ約463人の参加者の皆様と共に、今年のテーマ「水産業の未来地図」を描くべく議論を重ねた2日間でした。

各セッションのアーカイブ動画はこちら

TSSS 2025写真

同時期に開催されていた大阪・関西万博の「BLUE OCEAN DOME」(認定NPO法人ゼリ・ジャパン出展)では、サステナブルシーフードについて考える1週間のプログラム「選んで守るサカナの未来 Week」を9月29日から10月5日まで開催。万博に来場した方を対象に、サステナブルシーフードへの関心を持っていただくため、参加型のワークショップやトークセッションを行いました。

魚week写真

サステナブルシーフード・サミット2026は、2026年10月21日(水)〜23日(金)に東京で開催いたします。

サステナブルシーフード・サミット2026は、2026年10月21日(水)〜23日(金)に東京で開催いたします

新たな一年が皆様にとって飛躍の年となりますことを、編集部一同心よりお祈り申し上げます。

 

 

サステナブル・シーフード用語集 JAPAN SUSTAINABLE SEAFOOD AWARD 歴代チャンピオン紹介

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