第1回ワークショップレポート:今さら聞けないサステナブルシーフードとは

第1回ワークショップレポート:今さら聞けないサステナブルシーフードとは

 

11月1日に行われた東京サステナブルシーフードシンポジウムにて、株式会社シーフードレガシーが運営を勤める「サステナブルシーフードプラットフォーム」の設立が発表されました。本プラットフォームでは持続可能な水産業の実現に向けて、「20% Sustainable by 2020」、そしてその先の「100% Sustainable by 2030」を目標とし、月1回開催するワークショップを通じて参加者の皆様に持続可能な水産業に関する情報をお伝えしていきます。
11月29日に開催した第1回目のワークショップでは、「今さら聞けないサステナブル・シーフードとは」と題しサステナブル・シーフードの基礎を理解し、企業同士の連携による可能性について参加者の皆さまと議論をしました。

 

豊かな海を残すために企業に求められるもの

WWFジャパン 三沢 行弘 氏

まず初めに、WWFジャパンの三沢 行弘氏が水産資源が枯渇している現状とサステナブルシーフードの重要性を説明しました。

「人類を含む生命の基盤である生物多様性が失われ、SDGsにも生態系保全が盛り込まれています。しかしそのうちの目標14:海の豊かさを守ろう、に対する日本のパフォーマンスは他の目標と比べて低く、努力しなければなりません。世界全体を見ると魚の消費量は年々増加する一方、70年代には約40%あった開発余地のある漁業資源の割合が現在は10%にまで減っており付随する海鳥などの混獲も問題になっています。養殖も1匹育てるのに必要な餌となる魚を適切に管理しなければ持続可能とは言えません。さらに近年サプライチェーン上での強制労働などが明るみになりサプライチェーン全体でのリスク管理も必要とされています。こうした問題やリスクを排除し、海洋環境や水産資源、地域社会全てに配慮して生産(漁獲、養殖)されたシーフードがサステナブル・シーフードなのです。」

 

三沢氏は企業はサプライチェーンを「持続可能な魚の選択」を起点とし「海の生物多様性改善」を目標とするデマンドチェーンに転換すべきだ、と強調し、海洋プラスチック問題にも触れ、2050年の海では魚よりプラスチックが多くなると述べ漁具などの海洋投棄対策もしていきたいと話しました。

 

水産物の持続可能性への取り組み

クライアント・アース ケイティー・ミラー 氏

次にイギリスの小売企業による非競争連携プラットフォーム、「サステナブル・シーフード・コアリション(Sustainable Seafood Coalition, SSC)」を発足させたイギリスのNGO、クライアント・アース(Client Earth)のケイティー・ミラー(Katie Miller)氏より、SSCの概要と企業が協働することの重要性についてお話いただきました。

 

「SSCは企業が主体となり、NGO、認証スキーム、政府、研究者などの専門組織と協働で企業規模にかかわらず応用できる、責任ある調達と環境主張の2つの行動規範を3年かけて制作しました。参加企業はSSCの行動規範を守ることで対外的に持続可能性と責任ある事業を行っていることを示すことができるようになります。現在、SSCに参加する企業は行動規範を守るために、専門知識を持った第三者機関の支援の元、自社の取り扱い水産物に対してのリスクアセスメントを行い、サプライチェーンを巻き込んでの調達の改善に取り組むなど、自発的な活動を行っています」

(企業の取り組みの詳細については過去発行のレポートにて紹介しています。詳細はこちら

最後にミラー氏は、SSCの参加企業全社が合意に達するまでには時間がかかり苦労したが、最後まで忍耐強く関わることで企業が主体であるという意識の芽生えにつながったことを強調しました。現在、SSCはEUにおける水産物の主要国であるスペインや、香港でも現地NGOと協働で同様のプラットフォームを展開しており、日本でも企業主体の活動が広がりへの期待を寄せました。

 

グループディスカッション

ワークショップ後半では、参加者によるグループディスカッションが行われ、自社や水産物の持続可能性を達成する上での自社や業界全体での課題について意見を述べ合いました。参加者からは「特定の認証だけを根付かせるだけではなく、日本に根付いている食べ物に感謝する気持ちや、もったいないの精神などに乗せてどうサステナビリティをアピールしていけるのかが大事。」などツールとしての認証とその活用方法についての意見が多く出され活発な議論が展開されました。

 

次回ワークショップでは参加いただいた方からの関心も高かった水産物の認証スキームをテーマに取り上げます。まだ始まったばかりのこのプラットフォームですが、皆様と連携し持続可能な水産業を実現できるお手伝いができるよう成長してまいります。みなさまのご参加をお待ちしております!