シリーズ:チャンピオンに聞くサステナブル・シーフード普及への道〜パナソニック株式会社編:前編

シリーズ:チャンピオンに聞くサステナブル・シーフード普及への道〜パナソニック株式会社編:前編

日本の水産業のサステナビリティ、そしてサステナブル・シーフードの普及に貢献したプロジェクトを表彰し、ムーブメントを拡大させるために2019年から始まった「ジャパン・サステナブルシーフード・アワード」。

第1回のイニシアチブ部門(現:リーダーシップ部門)のチャンピオンは、日本で初めて社員食堂(以下:社食)にサステナブル・シーフードを導入し、給食サービス業界にCoC認証取得の流れを作ったパナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部が受賞しました。

プロジェクトを牽引してきた喜納厚介氏にアワードに応募したきっかけ、そして今後の取り組みについて弊社代表取締役社長・花岡和佳男がお伺いしました。

 

第1回ジャパン・サステナブルシーフードアワードの授賞式でスピーチをする喜納さん

 

新しい社会貢献の形をつくりたい

花岡:このプロジェクトは喜納様が中心になって始められましたが、きっかけを教えてくださいますでしょうか。

喜納:この活動に取り組むベースになる背景は、大きく3つありました。企業がSDGs達成に向けた貢献を求められるような時代になってきたという社会的背景。オリンピック・パラリンピックのワールドワイド公式パートナーである当社にとって東京2020のレガシーとなる活動であること。あとは、私たち社会貢献の部門で、20年来取り組んでいる「海の豊かさを守る」活動の中で、東北復興支援も兼ねて支援させていただいた、南三陸の戸倉(宮城県漁業協同組合志津川支所 戸倉出張所)のかき養殖が2016年に日本で初めてASC認証を取得された事に貢献できたことです。

こういった背景のもと、今回の取り組みは、企業が行う社会貢献活動の新しい理想的な形を作れるんじゃないかと思ったことが、実は、大きなきっかけとなりました。

これまでの企業の社会貢献活動は、自社が得意な分野で、自社だけでできる範囲に留まることが多く、なかなか大きな社会的なインパクトを産むに至らないことが多かった気がします。しかし、今回の活動は、SDGs目標14「海の豊かさを守る」という大きな社会課題に対して、社食を持っている企業ならどんな業界でも取り組めるため、企業が連携して解決に貢献できるという新しい社会貢献活動になるのではないか。また、トップランナーとして取り組むことで得られたノウハウ共有などを通じて他の企業の皆様にも貢献できるのではと考えました。

花岡:素晴らしいですね。自社の中で出来ることや得意技ではなくいわば本物の利他精神をもって社会貢献をするためにサポーティブな開けた形にしようと。これまでそういう形はなかったとのことですが、なぜそれを自社だけではなく外へ広めようと思われたんですか?

喜納:それは当社の約10万人の社員の消費行動が変わっただけでは、社会的なインパクトが小さいと取り組む前から、考えていたからです。サステナブル・シーフードを選択して購入するという消費行動の変革を、日本中で大きなうねりとしようとすると、やはり多くの大きな企業の皆さんにも賛同いただいて、取り組んでいただけないといけない。

そのためには、なかなか事業活動では取り組むことが難しく、多くの企業が困っておられるだろうSDGs達成への貢献活動の新しい方法として提案していけば、理解されるのではないかと考えました。

花岡:日本初の取組みということで、社内外で色々ハードルがあったと思いますが、どのように乗り越えてきたんですか?

喜納:そうですね。取り組み当初は、給食会社様もサステナブル・シーフードについて知らない方がほとんどで、毎回質問攻めに合い大変でした。また、先程もお伝えしたように、取り組み当初から、この活動は他の企業の皆さんと連携して大きなムーブメントを作っていきたいと考えておりましたので、プレス発表をするために広報部門に、SDGs達成への貢献など、この取り組みの社会的な意義などを何度も説明しないと、なぜ電機メーカーがサステナブル・シーフードに取組むのかを理解してもらえないなど色々なことがありました。しかし、その結果、発信したプレスリリースは、色々な企業で反響を呼び、現在では、7社に導入が広がっていますし、特に、デンソー様からは、社内にSDGsを浸透させるための良い手法だというご評価をえ、全拠点導入を進めていただけるまでになっています。

私たちの活動を知ってほしいということより、皆さんのお役に立てるのではという思いを込めて発信できたのが、良かったなと思います。

花岡:素晴らしいですね。

喜納:お魚というのが身近で面白かったんだと思います。「え、うちの会社が魚!?」っていう(笑)

 

たくさんの人に支えられた活動

 

パナソニックの社員食堂。サステナブル・シーフードをアピールするポスターが貼られている

 

花岡:応募してみて良かったことはありますか?チャンピオンになったことではなく応募した段階で。

喜納:私としてはすごくありました。活動を始めて2年間、社内外からの理解を得て社食への導入を進めたり、この取り組みを一人でも多くの方に知ってもらうために、積極的な発信活動をするなど走り続けてきたので、振り返る機会なかったから。応募にあたっては、第三者の方に活動を評価いただくために、客観的な数値で実績やポテンシャルを示さないといけないと考え、様々な数値を確認する過程で、当社だけで年間1,000万食提供しているというインパクトの大きさ等に気づけました。

また、給食会社さん、人事・総務部門の皆さんなど本当に多くのたちの支援があってこそ、この取り組みが進められたんだなということを実感し、改めて感謝の気持ちを持てました。

花岡:ありがとうございます。最終的にチャンピオンになられて、どんな反響がありましたか?

喜納:社内外で本当に色々あったのでありがたかったです。社内で言うと、社会貢献活動というのは売上や利益のように明確な評価軸がないため、社外での評価が上がると社内の評価も上がるというサイクルになります。よって、今回の受賞を通じて、社内の多くの人にこの取り組みを知ってもらえ、社外で評価されていることの認知が高まりました。

社外で言うと、これまでアプローチしたくても出来なかった大手水産企業さんや流通企業さんからお声がけいただけるようになりました。やはりそれは賞を取って頑張りを認めていただいたからだと思っています。

花岡:社内外で良い刺激になってますね。社食で食べる社員の方々がサステナブル・シーフードをより選ぶようになったというのはありますか?

喜納:選択率が50%にもなった「おばけ」メニューがあったり、社食で「サスシー」という言葉が日常語として使われるようになるなど、社内でのサステナブル・シーフードの認知度の高まりは、肌で感じられるようになっています。

また、社内の社会貢献活動の社長賞を受賞したり、社内広報でのインタビュー記事の掲載等により、社食への積極的な導入機運も高まりつつあります。

更に、働き方改革の一環として、社食という場所自体の見直しが始まろうとしており、サステナブル・シーフードの導入を、社食が社会課題を楽しく学べるコミュニケーションの場となって行くきっかけにしたいと思っています。

 

後半はチャンピオンになったことで変わってきた周囲、そして活動の極意をお伺いします。>>>