AIP

AIPとは、Aquaculture Improvement Project (水産養殖改善プロジェクト)の略称です。
国際的に統一された定義はありませんが、北米で水産サステナビリティのための活動を行うNGOのプラットフォーム、CASS (Conservation Alliance for Seafood Solutions)が発行するガイドラインに基づくと、「一定の区域で、複数のステークホルダーが、水産養殖に悪影響を与える影響や、魚介類の疾病を防ぐための取り組み」を意味します*1

AIPは、養殖生産現場の環境改善や、養殖における社会的な影響の緩和など、現場によって解決したい課題が異なるため、プロジェクトの進め方の基準も異なります。例えば。例えばASC (Aquaculture Stewardship Council)にはASC Improver Program、同じ養殖認証を運営するGAA (Global Aquaculture Alliance)にはiBAP(BAP Improvers Program)というプログラムがあります。

認証取得を目指すAIPもありますが、AIP自体は認証スキームではないため、MSC、ASC認証のような特定のロゴマークは存在せず、AIPによって生産された水産物に何らかの表示がされるわけではありません。
しかし、AIPは水産サプライチェーンにおいても重要性が認知されており、北米最大手のウォルマートをはじめとする小売企業の調達方針にも含まれています。(参考1参考2)。こうした企業はサステナブル・シーフードの調達を、認証付きのものに限らず、AIPを行う生産者や地域を直接支援したり、プロジェクトの結果、生産された製品の販売先となったりすることで改善活動の継続や目標達成を支援しています。

以下に日本における事例もいくつかご紹介いたします。日本では、ASC認証の取得を目的としたAIPが定着しつつあります。

宮城女川・銀鮭AIP(国内1例目)
主な内容:生簀が生態系に及ぼす影響のモニタリング、餌や稚魚のサステナビリティ、社内ガイドラインに社会的責任に関する事項を明記するなどの改善*2

熊本マダイAIP(国内2例目)
主な内容:養殖場による周辺生態系や生息域への影響評価のモニタリング、稚魚及び飼料の持続可能性の評価、病害虫の管理、養殖業の社会的責任に関する方針策定など *3

スラウェシ島 エビ養殖業改善プロジェクト
主な内容:養殖池開発によって失われたマングローブの再生、水質調査などに関する手順書の作成とトレーニングの実施、エビの資源管理に関する政策提言など*4

 

*1 “Introduction to Aquaculture Improvement Project” (Sustainable Fisheries Partnership)
*2 https://jp.asc-aqua.org/news/latest-news/marukin/
*3 https://note.com/umito_partners/n/nc024315be5ee
*4 https://jccu.coop/info/newsrelease/2018/20180628_01.html