IUUとは「illegal, unreported, unregulated」の略であり、日本語では 「違法・無報告・無規制」を意味します。IUU漁業は各国の保全努力やルールを守り漁業を行う漁師の生活に大きな損害を及ぼし、その損失は世界中で年間約100~230億ドルにもなると言われています。またIUU漁業の影には奴隷労働や人権問題など多くの問題が潜んでおり、直接的な関与はないものの奴隷労働に関わった商品を消費者に販売したとして訴訟が起きるなど、企業も目を瞑ってはいられない状況になっています。漁業の域を越えて、国際問題に発展するIUU漁業。シーフードレガシーのブログでは3回に渡り各国のIUU漁業に対する取り組みを紹介します。
水産物の輸入国として先陣を切ってIUU漁業対策を打ち出したのはEU。EU圏内、またEUへ輸出される水産物に対し2010年より法律が施行されています。EUに輸出される水産物は、世界で取引される水産物の約24%を占めており、世界一の水産輸入高を誇ります。よって、輸入によりEU圏内にたどり着くIUU漁業由来の水産物の量もとりわけ多く、法律が施行される前の2005年には、IUU漁業による市場の損失は1億ユーロにも及んでいたと言われています。2010年に施行されたEUのIUU漁業規制はEU諸国の漁業政策の“3本の柱“の1つであり、3つの原則から成り立っています。
EU圏内への輸出には、IUU漁業規則に基づき正当に漁獲された水産物であることを漁船籍国が証明する書類を提出することが求められます。また各国はEUの規則に従い漁船管理を行っていることを証明するために「旗国通知」を提出しなければなりません。この「旗国通知」が受理された国が発行する漁獲証明書のみが有効とされます。2015年までにこの「旗国通知」がEUにより受理された国は90カ国を越え、EU圏内でも有数の輸入高を誇るドイツ、フランス、スペインでは年間40,000~60,000もの漁獲証明書が届きます。よって全ての水産物が証明書との照らし合わせや細かい検査されるわけではなく、商業的に価値の高い魚種やIUU漁業が懸念される海域で漁獲された魚などを中心に抜き打ち検査が行われます。
IUU 漁業を防止、抑止及び廃絶するための義務を果たさない国はEU諸国より「非協力的第三カ国」とみなされます。「旗国通知」がEUにより受理されなかった国など、IUU漁業に対する国としての対策が重要視されます。非協力的、もしくは問題ありと判断されるとその国にはイエローカードが与えられ、公表されます。イエローカードを受けた多くの国は自国の水産業に対する信用を損なうことを防ぐため規制の見直し、及び強化を行います。期限内に規制の見直しが適切に行われない場合はレッドカードとなり、EUへの輸出が禁じられます。どちらのカードも問題点や課題が改善された場合にはグリーンカードとなり、非協力的第三カ国のリストから除名されます。
EU圏内の国、もしくはビジネスが何らかの形でIUU漁業に加担した場合、厳しい罰則が課せられます。最大でIUU漁業に関連して得た儲けの5倍、再度摘発された場合は8倍と厳しい内容になっています。
このIUU漁業規制はEU圏内だけでなく、EUへの輸出を大きな産業とする世界の国々にまで影響を与えました。IUU漁業由来の水産物がEU圏内に流れ込むことを防ぐだけでなく、IUU漁業廃絶に向けて各国の意識を高めることにも繋がりました。IUU漁業に対する懸念が広がる中、消費者への積極的な情報開示や認証付き水産物の販売を拡大するなど、マーケット間でも販売する責任を重要視する動きが広まっています。
次回はオバマ政権により採択され来年2018年1月より施行されるアメリカのIUU漁業規制についてご紹介します。
出典:
The EU IUU Regulation Building on success EU progress in the global fight against illegal fishing
水産庁/EUのIUU漁業について