世界の水産物、実際に「サステナブル」なのは何パーセント?

世界の水産物、実際に「サステナブル」なのは何パーセント?

SDGsへの関心の高まりもあり、日本でもサステナブル・シーフードの普及や水産業を持続可能にしていく取り組みが企業、生産現場、国を挙げて進められ、水産エコラベル認証のついた水産物を随分見かけるようになりました。

日本でもMSC認証、ASC認証、BAP認証などがスーパーなどでもよく見られますが、では実際、世界の水産物のうち、「サステナブル」と言える水産物の割合はどれくらいなのでしょうか?

サステナビリティはどう判断する?

この割合について知る時にポイントとなるのが、水産物のサステナビリティを判断するツールとしてよく使われる認証と格付け(レーティング)です。

認証制度
認証制度は、生産者が、第三者によって、環境、社会的な課題、管理体制についてサステナブルであると認められた場合に取得できます。サプライチェーン(仕入れから販売までの一連の流れ)上の企業は、この認証水産物を流通させることで、透明性とサステナビリティを確保できます。

レーティング
生産者が取得するものではなく、そのツールを運営する組織があくまで主要なマーケットで流通している魚種の資源状態を評価し、示すものです。サプライチェーン上の企業や消費者はこの資源状態の評価をもとによりサステナブルな水産物を選択できます。

認証制度としてはASC認証、MSC認証、最近ではBAP認証*1やGlobal G. A. P.認証*2などもあります。レーティングではアメリカのモントレーベイ水族館で開発されたSeafood Watch(シーフードウォッチ)が最もよく知られており、魚介類の資源状態を赤(回避)、黄(要注意)、緑(良好)で分けているのが特徴です。

世界の水産物はどのくらいサステナブル?

この認証とレーティングプログラムを運営する組織(ASC、MSC、Fair Trade USA、Seafood Watch、Sustainable Fishery Partnership)で構成されるCRC(Certification and Ratings Collaboration)が、メンバー組織がカバーする漁業、養殖漁業の情報を集約し、2016年の世界の漁業生産量(重量)に対してどれほどの割合が認証、レーティングされているのかを調査しました。(レポート:Sustainable Seafood : A Global Benchmark概要版

レポートによると2016年の漁業生産量は約2億トンで、うち45%が漁業、40%が養殖業により生産されています(15%は海藻)。このうち、CRCのメンバー組織が運営するMSC、ASC、Fair Trade USA認証*3取得済、レーティングで緑とされているものは全体の約25%(5,000万トン)でした。Fair Trade USA認証はサステナビリティについての認証ではありませんが、生産量が800tと全体の0.0004%と少ないため、この25%という数字はほぼサステナブル・シーフードの量として考えることができます。

また、認証取得可能なレベルにまで漁業・養殖業を改善するプロジェクトFIP(漁業改善プロジェクト)、AIP(養殖業改善プロジェクト)により生産されている水産物は3.3%(660万トン)だったことがわかりました。

5年経った現在は・・?

では5年経った現在の状況はどうなっているのでしょうか?
2021年2月現在、CRCから続報は出ていませんが、メンバー組織の進捗状況は各組織の年次報告書などで報告されており、グラフにすると以下のようになります。

4) MSC年次報告書2019年度、5) Progress Toward Sustainable Seafood –By the Numbers
6) The State of World Fisheries and and Aquaculture (2018) を元に(株)シーフードレガシー作図。ASC、Fair Trade USAは5のグラフより推定。レーティングは4と6より算出。

上記の重量を全て足すと、この4年間でサステナブル・シーフードは25%から36.7%(2018年度の全漁業生産量と比較)に増加していることがわかります。
また、認証については取得事業者の数がほぼ倍増していました。(MSC認証:671件から1,075件、ASC認証:1,107件から2,306件。Fair Trade USA認証:3件から13件)

日本でも東京オリンピック・パラリンピックやSDGsの機運もあり、認証取得に挑戦する生産者も増加し、認証製品を流通させるために必要なCoC認証の取得事業者も急増。例えばMSC CoC認証は2016年6月は82件*7でしたが、2021年1月時点では303件*8に増加しており、イオンリテールのMSC、ASC認証を取得した水産物の売り上げは2018年度には100億円を突破しています*9。

今後もサステナブル・シーフードは増え続ける?

政府も2018年に漁業法を改正し、持続可能な漁業に取り組むことを明言し、昨年末には水産業のサステナビリティを阻むIUU(違法・無報告・無規制)漁業による水産物を市場に流通させないための法律を発布しました。

SDGsの達成まであと10年を切り、こうした政策の進展やESG投資の高まりから今後、急速にサステナブル・シーフードの割合は高まっていくと思われます。次回、みなさんにサステナブル・シーフードの割合をお伝えする時には何%になっているか今から楽しみです。

 

*1 BAP認証・・Global Aquaculture Alliance (世界養殖連盟)の運営する養殖水産物の認証制度。飼料、孵化場、養殖場、加工工場の基準をもつ。
*2 GAP認証・・GlobalG.A.P協議会の運営する一次産品に対する認証。孵化場、養殖場、飼料、漁獲後のトレーサビリティについての基準をもつ。
*3 Fair Trade USAではよく知られるコーヒーやチョコレートの他、小規模生産者による水産物についてのプログラムを2014年に開始しています。
*7 東京サステナブルシーフード・シンポジウム2020の発表スライドより
*8 MSCニュースレター2021年1月号より
*9 東京サステナブルシーフード・シンポジウム2020の発表スライドより