VMS
VMS(Vessel Monitoring System: 船舶監視システム)は衛星を使用して船舶名、日時、位置、進路などに関するデータを収集して24時間監視するシステムです。広範囲の海で操業する漁船などの船舶に対して衛星を使用することで効率的かつ高い精度で監視することができます。
図:株式会社シーフードレガシー作成
VMSの目的は主に2つあります。
(目的1)遭難等緊急時の救助
自然災害や不慮のトラブルなどに見舞われたとき、VMSによって近隣の関係当局や船舶が迅速な救助を行うことができます。
(目的2)IUU漁業問題の解決
IUU漁業による操業は、資源管理のルールを守らないだけではなく、海洋環境や生物多様性の破壊、人権侵害の温床として深刻な問題となっています。この状況を解決するためのツールの一つとしてVMSを導入し、漁船の追跡・監視を行うことで、各国の当局は資源管理に関するルールへの遵守状況を確認することができます。そしてRFMO(地域漁業管理機関)加盟国の漁船が違法操業を行なった場合、該当する漁船がウェブサイト上で公開されます。またNOAA(アメリカ海洋大気庁)の海洋漁業局においては、違反者を起訴する際の重要な証拠としてVMSが使用されます。
VMSの設置規定は国によって異なります。アメリカでは現在4,000隻以上の漁船にVMSが設置されており(*1)、どこで操業しているかなどが追跡・記録されています。また持続可能な漁業の実現に向けて積極的に取り組み、大きな収益をあげてきたノルウェーやオーストラリアでも漁船にVMSを設置しています。
VMSは乗組員がスイッチを操作できるため、作動させずに違法な操業を行うことが問題となっています。そこで日本では、改正漁業法によって、大臣許可漁業の漁船にはVMSを設置、操業時には作動させておくことを命じられるようになりました。これによってIUU漁業の監視体制が強化されることとなります。
*1 https://www.fisheries.noaa.gov/node/696
IUUに関する記事

IUU漁業撲滅の旗手が示す、日本の水産が歩むべき未来(後編)

IUU漁業撲滅の旗手が示す、日本の水産が歩むべき未来(前編)

業界変遷半世紀。持続する豊かな海で日本の水産業が生き残る道とは(後編)

日本の水産企業の評価 改善のカギとは

日本の水産企業 人権対応 今後の課題は?
テクノロジーに関する記事

宇宙開発の視点から地球の海を見つめ、新たな技術で水産養殖を変える(後編)

宇宙開発の視点から地球の海を見つめ、新たな技術で水産養殖を変える(前編)
トレーサビリティに関する記事

北米での寿司ネタのスペシャリストが語る「圧倒的な信頼のある日本の水産物、もっとアドバンテージを生かせたら」(後編)
