人権デューデリジェンス
人権デューディリジェンスとは、企業活動における人権への悪影響を特定し、予防・軽減させ、対処方法を説明するためのプロセスを意味します※1。
デューディリジェンス(Due Diligence)とは、直訳すると「相当な/適当な努力」を意味し、もともとM&Aや投資が行われる際に、リスクやメリットを把握するために行われる財務や法務、人事などの調査を意味しています。人権侵害はそもそも問題ですが、ビジネスにおいても、事業を通じて人権侵害に加担してしまうことで不買や評判の低下リスク、さらには財務リスクにもなるため、近年、企業による人権デューディリジェンスへの関心が高まっています。
人権デューディリジェンスは、自社の製品やサービスの製造販売プロセスだけではなく、サプライチェーンも含めて人権侵害への関与を把握する必要があります。
取り組むにあたっては、まず人権を尊重することを企業方針として策定・公表した上で、以下のステップで作業を行い、継続し続けることが重要です。
<人権デューディリジェンスの基本的な取り組みプロセス>
①企業の事業、サプライチェーンおよびビジネス上の関係における負の影響を特定、評価する
(例:セクター(サプライチェーン等)、地理的(紛争地域等)、製品的リスクに関する情報を、政府や国際機関、NGOなどから収集、分析)
②特定された負の影響を停止、防止および軽減する
(例:高いリスクがある事業、サプライヤー、地域などを洗い出し、停止・防止・軽減する)
③実施状況および結果を追跡調査する
(例:第三者による審査や監査、労働組合、NGOなどとの定期的なダイアログなど)
④特定された影響にどのように対処したかを伝える
(例:CSR報告書やウェブサイトなどに掲載する)
出典:OECD「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」(p23)をもとに作成
人権デューディリジェンスの実施にあたっては、2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとにつくられた、OECD「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」や日本弁護士連合会「人権デュー・ディリジェンスのためのガイダンス(手引)」などが参考になります。
欧米諸国では人権デューディリジェンスの法制化が進んでいます(図1)。2022年6月現在、日本政府でも経済産業省にビジネス・人権政策調整室が設置され、同室のもとで、サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドラインの検討が行われています。2022年の夏にはガイドラインの素案が発表される予定になっており、企業としては早急に取り組むことが重要です。
(図1)
(2022年7月現在)
上記以外にも、EUは2022年2月に人権・環境デュー・ディリジェンス指令を公表したほか、2023年にはドイツでデュー・ディリジェンス法が施行される予定。
※1 外務省、ビジネスと人権に関する指導原則:国連「保護、尊重及び救済」枠組みの実施(仮訳)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000062491.pdf
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