サステナブル・シーフード用語集

サステナブルファイナンス

サステナブルファイナンスとは、環境や社会に関する課題を解決するための金融活動全般(ESG投融資、債権発行など)を指します。近年深刻になっている、気候変動や生物多様性の損失などを解決する手段として、機関投資家や銀行などから注目を集め、国内外で発行額が年々増加しています。

 

【サステナブルファンド・アセット 2010-2021年】 (World Investment Report 2022 (UNCTAD, 2022)より)

 

企業が資金調達をする方法として、ボンド(債券)やローンがあります。ボンドは企業が機関投資家や一般投資家に対して発行するもので、ローンは金融機関から受ける融資です。投融資は通常、財務データを基準に判断されますが、サステナブルファイナンスは、環境や社会課題の解決のためにどのようにファンドが使われるのか、どの程度良い影響を与えられるのかを最も重要な判断基準とします*1。サステナブルファイナンスは、課題別に以下のように分類されます。

 

*1を元に作成

 

その中でも、サステナビリティ・リンク・ローン(Sustainability Linked Loan: 以下SLL)は、借り手(企業)が、KPI(重要業績評価指標)とSPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)を設定し、その目標の達成状況に応じて貸出条件が変動するのが特徴です。KPIとSPTsの達成状況は独立した外部機関が評価し、その結果を少なくとも年に1回、貸し手(金融機関)に報告することになっています*2

SPTsは、借り手のサステナビリティ戦略全体と合った、各KPIを実質的に改善する野心的なものであること、可能な限りベンチマーク、または外部の参照先と比較できることが必須要素となっています。ローンの開始時期と同時、またはその前に設定し、達成期限についても決めます*2

SLLは、借り手にとってはSPTsの設定やレポーティングなどの手間・コストが発生する、貸し手にとっては、融資先が目標が達成できなかった場合などにレピュテーションリスクを負う可能性がある、などのデメリットがありますが、借り手、貸し手ともにサステナビリティに対する取り組みのPRができる、借り手にとってはSPTsの達成による金利負担軽減などのメリットがあります*3

水産業界でも近年サステナブル・ファイナンスが活用され始めています。
例えば世界最大のツナ缶メーカーであるThai Unionは、2021年に約400億円のSLLを発行しました。融資したのはみずほ銀行、三菱UFJ銀行、アユタヤ銀行です。

① Dow Jones Sustainability Index (DJSI) Emerging Marketsに選ばれること、 DJSI Food Products Industry Indexのトップ10にランクインすること
②商品の製造過程で生じる温室効果ガスの排出量(Scope 1, 2)を2019年ベースで毎年4%ずつ減らすこと
③電子モニタリングシステムを搭載している、かつ(または)監視員が搭乗している漁船で漁獲されたマグロの調達率を、2020年のベースラインの75%から毎年5%ずつ増やすこと
を5年以内に達成することをKPI、SPTsとしています*4

国内では2022年に初めてマルハニチロがブルーボンドを発行しました。みずほ証券株式会社、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社が50億円の融資を予定しており*5

①グループ全体におけるカーボンニュートラルの実現(CO2排出量削減ロードマップ策定、およびロードマップに基づく削減実施、TCFDを活用したシナリオ分析の実施)
②取扱水産物の資源状態確認率を100%(グループ全体、2030年)(水産資源調査の継続実施、環境に配慮した養殖の実践)
③サプライヤーガイドラインへの同意率・重要項目改善率100%(グループ全体、2030年)、サプライチェーン上の人権侵害ゼロの確認率100%(グループ全体、2030年)(持続可能な調達を可能とするサプライチェーンマネジメントの強化、自社事業・サプライチェーンにおける人権リスクの排除)を5年以内に達成すること
をKPIとして設定しています。

 

 

*1 Simplifying Sustainable Finance – Explaining Green Bonds, Green Loans, Sustainability-Linked Loans and Bonds and More (Sustainalytics、2023/4/5閲覧)
*2 Sustainability-Linked Loan Principles (APLMA, LMA & LSTA, 2023)
KPIやSPTsの必要条件などは「サステナビリティ・リンク・ローン原則(Sustainability Linked Loan Principles: SSLP)」によって決められています。
*3 企業等のサステナビリティ・パフォーマンスに着目したサステナビリティ・リンク・ローンの発展と注目点(江夏あかね、野村資本市場研究所 2019秋号)
*4 SUSTAINABLE FINANCE “BLUE FINANCE” (Thai Union, 2023/4/5閲覧)
*5 本邦初となる「ブルーボンド」発行に関するお知らせ(マルハニチロのプレスリリース、2022/9/29発表)

 

サステナブル・シーフード用語集

あ行

違法漁業防止寄港国措置協定 (PSMA)

か行

改正漁業法 海洋保護区 グリーバンス・メカニズム 現代奴隷 ゴーストギア 混獲

さ行

サステナブル・シーフード サステナブルファイナンス 循環式陸上養殖(RAS) 人権デューデリジェンス 水産エコラベルのガイドライン 水産流通適正化法 責任ある漁業のための行動規範 絶滅危惧種

た行

調達方針 トレーサビリティ

は行

プラネタリーバウンダリー ブルー・エコノミー ブルーカーボン

ま行

未利用魚 モントレー・フレームワーク

ら行

陸上養殖

A

AIP ASC認証

B

BAP認証 BSP認証

C

CoC認証

F

FIP

G

GDST Global Fishing Watch GLOBALG.A.P.総合農場認証 GSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)

I

ILO漁業労働条約(第188号) IQ(個別割当方式) IUU(違法・無報告・無規制、Illegal, Unreported and Unregulated)漁業

M

MEL認証 MSC認証

S

SeaBOS SeafoodWatch

T

TAC(漁獲可能量制度) TNFD

V

VMS