SeaBOS
SeaBOS (Seafood Business for Ocean Stewardship)は、世界最大の水産会社10社と科学者が連携して、より持続可能な水産物の生産および海洋の健全性向上を目指す世界的なイニシアティブです。
2012年に研究者らが世界の水産物関連企業上位160社のデータ分析*1を開始し、わずか13社が世界の漁業生産量の11~16%を支配していることが示されました。また、これら13社は「キーストーン・アクター」として位置付けられ、(1) 世界的な漁獲高および漁獲量に大きな影響を与え、(2) 水産物の関連分野を世界的に管理し、(3) 子会社を通じてグローバルにエコシステムを結合し、(4) 世界的な管理法や制度に影響を与える、大企業、と定義*2されました。
研究者らは、水産資源および海洋の責任ある管理に向けた世界的な変革を進める必要があると13社のキーストーンアクターに呼びかけました。そして企業がこれに合意し、2016年にSeaBOSが設立されたのです。
科学とビジネスの新しい世界的なイニシアチブの基礎を築いたこと、さらにはアジア、ヨーロッパ、北米の漁業・飼料生産者・養殖業を結びつけた点がSeaBOSの特徴と言えます。
現在はノルウェー・タイ・アメリカ・韓国・日本を中心に世界で漁業や養殖業10社の企業がメンバーとなっており、日本からは国際的な水産企業であるマルハニチロ、日本水産、極洋が参加しています。なかでも世界最大のマルハニチロの売り上げは他国の大手水産会社の3〜4倍の規模であり、非常に大きな影響力を持っています。
またメンバー企業の一つである、世界第3位のサーモン養殖・加工・販売会社のセルマック(Cermaq)社は三菱商事の完全子会社であり、SeaBOSにおける日本企業の位置付けはとても高いです。
SeaBOSでは以下10個の課題を最重要課題として位置付けています。
・透明性の向上
・IUU漁業の削減
・科学への傾聴
・現代奴隷の撲滅
・養殖における抗生物質使用削減
・プラスチックの使用削減
・温室効果ガス排出量の削減
・養殖業の発展
・新技術の開発と展開
・イノベーションの支援
そしてこれらの課題を指針として、以下6つのタスクフォースに分けて各社と科学者が活動を進めています。
Ⅰ. IUU漁業、絶滅危惧種、強制労働への対応
Ⅱ.コミュニケーション(SeaBOSのリーダーシップを促進し、説明する)
Ⅲ.各行政機関との協働
Ⅳ.SeaBOSの透明性とガバナンス
Ⅴ.海洋プラスチックの削減
Ⅵ.気候変動への対応
2016年から年1回「キーストーン・ダイアログ」が開催され、参画企業と科学者らが持続可能な水産業について協議しています。
そして前述した6つのタスクフォースに基づいて漁具類(プラスチック製品)の管理や、取扱資源を調査・公表する水産資源の「見える化」に向けて取り組み始めています。
<引用文献>
*1「科学とビジネスの連携で、世界の水産業を動かす」(東京サステナブルシーフ―ド・シンポジウム2019、2019)
https://sustainableseafoodnow.com/archive/report/tsss2019/1329/
*2 SeaBOSホームページより(“About SeaBOS”)
https://seabos.org/about/