サステナブル・シーフード
サステナブル・シーフード(持続可能な水産物,Sustainable Seafood)とは、海が豊かな生態系を育み続け、次世代社会がその恩恵を受け続けることができるよう、海の生物の育成に必要な環境を保護し、再生産のペースを守りながら漁獲・養殖を行い、労働者の人権や労働安全の確保といった社会的な側面にも配慮した水産物を指します。それに加え、経済的に事業が継続できることも重要な要素です。 法的な定義があるわけではありませんが、具体的には以下のような状態を指します。
<環境面>
・水産資源が持続可能な状態で管理されている
漁業が漁獲対象とする水産資源が十分に豊富にある
科学的根拠に基づく適正な漁獲量に基づいて漁を行っている
国際法・国内法を守る漁業管理システムと体制・制度がある
科学的根拠に基づいて、漁業による環境への影響を最小限に抑えている
持続可能な漁業を行うための適切かつ有効な管理システムが構築されている
・生態系が健全な状態で保たれている
漁獲対象になっている生物が豊富に存在する
漁獲対象でない生物も豊富に存在している
絶滅危惧種を混獲しないように対策する、混獲した場合の記録管理をしている
生息・生育環境が保たれている
養殖の場合、上記以外に養殖場周辺の生態系への影響、水質汚染を最小限に抑えること、種苗ならびに飼料の原材料のサステナビリティを担保すること、逃亡の防止、魚病管理なども加わります。
<社会面>
・労働者の人権を保護し、安全な労働環境を確保している
・周辺地域からの苦情や要望に対して適切に対応している
・水産業に関わる地域やコミュニティが維持、発展される
<経済面>
・漁業従事者、水産流通加工業者など水産業やそれに関わるステークホルダーが利益を得られ、事業が維持、発展する
こうした状態を将来世代も水産物を活用し続けることができるよう、考慮した上で漁獲されたものがサステナブル・シーフードです。当然、IUU(違法・無報告・無規制)漁業はこの対極にあるもので全くサステナブルとはいえません)。
では水産物のサステナビリティを担保する仕組みにはどのようなものがあるでしょうか。
もっとも信頼性が高いのは、いわゆる水産エコラベル認証制度です。具体的には天然漁業を対象とするMSC認証、養殖漁業を対象とするASC認証、BAP認証、Global G. A. P. 認証などがあります。これらの認証制度は環境だけではなく、労働者の人権配慮なども審査の対象になっています。
また、一般の消費者がサステナブル・シーフードを見分ける手がかりとしては、資源状態や海洋環境への影響、管理体制などを評価し、格付けするスキームがあります。たとえば、米モントレーベイ水族館が運営する 「SeafoodWatch」は、北米の小売企業なども水産物の調達の際に活用しています。特に日本で魚介類を選ぶ時の手がかりにする場合は、一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局が作成した「ブルーシーフードガイド」、WWFジャパンが制作した「おさかなハンドブック」があります。
「ブルーシーフードガイド」では日本で流通する水産物からブルーシーフードガイドが科学的評価基準で選定したブルーシーフードチョイスに加え、日本で手に入るSeafood Watch でBest Choiceに選ばれた魚介類とMSC、ASC認証の魚介類のすべてが一覧で紹介されています。また、「おさかなハンドブック」では、日本人がよく食べる32の水産物を対象に、資源状況や漁獲・養殖方法が環境に悪影響を及ぼしていないかなど、サステナビリティを総合的に評価した上で、緑から赤までの5段階で表示されています。
サステナブル・シーフードを選択することは、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」を実現することにもつながります。
海の生態系、海洋資源、さらには人の暮らしや生活を豊かさを将来にわたって守っていく、それがサステナブル・シーフードなのです。