サステナブル・シーフード用語集

水産流通適正化法

特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(通称:水産流通適正化法)とは、2020年12月11日に公布された法律で、2022年までに施行されることになっています。

水産流通適正化法の目的

この法律は、国際的な問題となっているIUU(違法・無報告・無規制)漁業により漁獲された水産物を日本の市場から排除することを目的として策定されました。日本は欧州や米国とともに、世界の三大水産消費国・地域ですが、欧米ではすでにIUU対策について法的な規制がかけられていたため、行き場を失ったIUU漁業による水産物が、日本に流入しているリスクがとても高まっていました。
IUU漁業は、水産資源や生物多様性の減少、適切な資源管理の妨害、人権侵害などの犯罪行為、漁業者の経済的損失を招く温床となっており、こうした問題を防止・解決する上で、この法律は重要な役割を果たすと考えられています。

 

流入経路を国内外から断つ

この法律は国内で生産された水産物と輸入水産物を分けて規制の枠組みを設けています。

1. 国産水産物

国産の水産物に適用される枠組みでは、漁業者が農林水産省に申請して発行される漁獲番号が、一時買受業者、加工・流通業者、販売業者に伝達され、その番号を受け取った企業は取引や購入内容を記録・保存することになります。ただし、一般消費者に販売する場合は漁獲番号を伝達したり、取引記録は作成する義務はありません。また、国内で漁獲された水産物を海外市場へ輸出する場合は、適法漁獲等証明書をつけることになっています。
規制対象となるのは、国内において違法かつ過剰な採捕が行われるおそれが大きい魚種で「特定第一種水産動植物」に分類されます。2021年9月時点で、ナマコ、アワビ、シラスウナギ(ウナギの稚魚)が対象として案が作成され、ナマコ、アワビは2022年12月から、シラスウナギは2025年12月から規制が始まる予定です*1。

2. 輸入水産物

輸入水産物に適用される枠組みでは、国際的にIUU漁業のおそれが大きいと指摘されている水産物を「特定第二種水産動植物」と分類し、この対象となった魚種を輸入する場合は、輸出元の国の政府機関等が発行する証明書が必要となります。この証明書を税関にも提出することになっています。
2021年9月時点の案ではサンマ、イカ、サバ、マイワシが対象となっており、2022年12月から規制が始まる予定です*1。

 


特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律の概要
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/attach/pdf/suisannryuutuutekiseika-3.pdfより引用

 

日本よりも規制が早く始まった欧州では、域内に水産物を輸入する時には全ての水産物に対し、漁獲証明書の添付を義務付けています。また、米国では、対象魚種をIUU漁業や偽装が起こりやすいもの*2 に絞った仕組みから、全輸入水産物を対象に拡大する動きも出ています。日本でも国内から全水産種を対象にする提言が既になされており*3 、施行内容や実施方法を検討する段階にある中で、最終的にどのような形で水産物サプライチェーンの関連企業がこの法律を活用してどのようにIUU製品の排除に関わっていくのかが注目されます。

 

*1 水産流通適正化制度検討会議(第4回)水産庁配布資料
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/attach/pdf/tekiseika_kaigi-11.pdf

 

*2 概要 米国水産物輸入監視制度(NOAA Fisheries、2017年)
https://www.iuufishing.noaa.gov/Portals/33/SIMP.FactSheet.Japanese.pdf?ver=2017-10-19-165351-127

 

*3 水産流通適正化法によるIUU漁業撲滅に向けて 野上農林水産大臣と面談(IUU漁業対策フォーラムのニュースより、2021/8/11)https://iuuwatch.jp/news/news_20200810

 

 

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