改正漁業法
改正漁業法は2018年12月に改正が決定され、2020年12月1日に施行された漁業法のことを指します。
現在の法律は、1949年に漁業生産力の発展と漁業の民主化を目的として公布された漁業法が元となっていますが、当時は資源管理は念頭に置かれていませんでした。
その後日本の漁業生産量は増加し続け、1984年にはピークを迎えましたが、その後減少に歯止めがかからず、2018年時点でピーク時の約1/3程度まで落ち込んでいます。こうした減少傾向を受けて、法律が改正されることになりました。
水産庁ホームページ 「水産政策の改革について」より
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/suisankaikaku.html
改正前と改正後で水産業のサステナビリティに直結する主な相違点としては以下の3点が挙げられます。
・「持続可能」という言葉が明記された
目的(第一条)の部分で初めて「持続的」という言葉が使われました。これにより、この法律が持続可能性を目指すものであることがわかります。
第一条:
「この法律は、漁業が国民に対して水産物を供給する使命を有し、かつ、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、水産資源の保存及び管理のための措置並びに漁業の許可及び免許に関する制度その他の漁業生産に関する基本的制度を定めることにより、水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、もつて漁業生産力を発展させることを目的とする。」
・資源管理を科学的根拠に基づいて行う
改正前は、船舶の隻数や漁具、漁法など操業に関する規制を行っていましたが、これはその魚の資源量を持続可能な数まで増やすことを目的としていませんでした。そこで改正後はその持続可能な資源状態を保つために漁獲量そのものを規制することにしました。これまでもこうした手法で管理されていた魚種もありましたが、今回の改正により対象となる魚種が増えました。
・漁業に新規参入しやすくなる
現在、日本の水産業では漁業従事者の減少と高齢化が課題となっています。
この課題を解決するためには新規漁業者を増やすことが必要です。そこで改正後の法律では、これまで5年に1度一斉更新していた、漁業を行うための許可を、他の漁業者が廃業した時など、その時々に応じて承認できるようにし、次の更新を待たずに参入できるようにしました*2。また、定置網漁業や沿岸漁業で使われなくなった漁場での漁業権を取得できる対象者も拡大されました。
上記以外に、沿岸水域や漁場清掃に漁業者以外も参加しやすくなる制度や、密漁の罰則強化(個人に対する金額としては最高の3,000万円)も決定されました。
しかし、この法案を実際に運用する上で、適切な漁獲量を設定できる専門家の不足、漁獲量や漁業権の公正な配分のあり方や適切な漁獲量を保つための方法や基準の設定、資源管理を実際に進める生産現場での理解が進んでいないこと、なども課題となっています。
*1 水産庁ホームページ「漁業法」より
https://www.jfa.maff.go.jp/j/yugyo/y_kisei/gyo_hou/
*2 平成30年度 水産白書 第1部 第1章 (3)水産政策の改革(新漁業法等)のポイント
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h30_h/trend/1/t1_1_3.html