責任ある漁業のための行動規範
「責任ある漁業のための行動規範(Code of Conduct for Responsible Fisheries)」は、環境や次世代の人類にも配慮した水産資源の持続的開発と利用を漁業者及び漁業に関係する国々が自ら責任を持って実現する漁業の体制を確立するために、1995年に国連食糧農業機関(FAO)の総会で採択された行動規範です。GSSIに認定される国際的な水産エコラベル認証の基準の照合先として利用されています。
1970年代に排他的経済水域(EEZ)が広範に導入され、1982年に国連海洋法条約が採択される(発効は1994年)など、海洋の新しい法制度により、沿岸国は、EEZ内の水産資源の管理に大きな責任を負うことになりました。しかし、多くの沿岸国はEEZ内の漁業からより大きな利益を引き出すことを目指したため、乱獲による資源枯渇に直面しました。1980年後半までには、野放しの漁業では水産資源が持続できないこと、そして、資源を保護するための漁業管理と環境への配慮が急務であることが明白になりました。
1992年5月、「責任ある漁業に関する国際会議(カンクン会議)」がメキシコのカンクンで開催され、採択された「カンクン宣言」は、以下の4点を包括する概念として「責任ある漁業」を提示しました。
これを受けて、FAOは、1995年10月に第28回FAO総会で「行動規範」を採択しました。さらに、同会議は、FAOに対し「責任ある漁業に関する国際行動規範」を策定するよう要請することも合意しました。
「行動規範」は、協定や条約と同じく条文の形をとりますが、法的拘束力を持たない自主的な規範と位置付けられています。
全12条から構成され、以下のような条約が規定されています。
・一般原則(第6条)
乱獲および過剰漁獲能力の防止、科学的根拠に基づく管理など「責任ある漁業」のあり方についての基本原則
・漁業管理(第7条)
資源の持続的利用のための措置の採択、関係国の協力、データの収集などについて
・漁業操業(第8条)
旗国による操業許可等の記録、適切な漁具・漁法の利用などについて
・養殖業の開発(第9条)
適切な餌料、餌料添加物、薬品の使用、遺伝的多様性の保全など適正な養殖の推進について
・漁獲後の処理および貿易(第11条)
資源の保存・管理措置への合致など貿易および漁獲後処理について
「責任ある漁業のための行動規範」の採択で、環境と調和した持続的な水産資源の利用や生態系の保全に関する理念や基本原則が示されたことにより、水産資源の管理や生態系保全等の行動規範を具体化する水産エコラベルについて検討が始まりました。1997年にはイギリスで設立された海洋管理協議会(MSC)がMSC認証を旗揚げしました。
その後FAOでは、2005年に「海洋漁業からの漁獲物と水産物のエコラベルのためのガイドライン」が、2011年には「養殖業及び内水面漁業に関する認証スキームの国際的なガイドライン」が策定されました。これらのガイドラインをもとに、 世界中で多数の水産エコラベル認証スキームが誕生しています。
<引用文献>
FAO「責任ある漁業のための行動規範」(日本語訳)
Code of Conduct for Responsible Fisheries(英語原文)
水産エコラベルをめぐる状況について(水産庁)