現代奴隷
現代奴隷(modern slavery)とは、強制労働、人身売買、性的搾取、臓器売買、強制結婚などを意味し、国際労働機関(ILO)によると世界に4,030万人いると推定されています※1。この数はかつて15-17世紀の奴隷貿易でアメリカ大陸に連行された奴隷の数よりも多いとされています※2。
– 強制労働:2,500万人
– 強制結婚:1,500万人
– 大人1,000人の内、5.4人が現代奴隷
– 子ども1,000人の内、4.4人が現代奴隷
– 71%は女性
– 25%は子ども
(ILO(国際労働機関)とウォーク・フリー財団『Global Estimates of Modern Slavery』(2017)p.5より抜粋)
4,030万人の内、1,600万人は民間セクター、つまり企業活動によって発生しています。さらに、その内、11%にあたる約176万人が農林水産業分野に従事していると推定されています。
民間セクター分野における現代奴隷の業界等の内訳
ILO(国際労働機関)とウォーク・フリー財団『Global Estimates of Modern Slavery』(2017)p.32より作図(小数点以下の数値は100%にするため、円グラフ上は若干調整数値が表示されています)
2000年代半ばから、欧米メディアでタイの水産業における現代奴隷問題が明るみになるなど、水産分野における現代奴隷問題は世界的にも注目されています。2020年5月にも、中国の水産会社による漁船でインドネシア人の乗組員が過酷な労働環境で働かされた上、暴力をふるわれ、病気などにより死亡するなど深刻な人権侵害が発生していたことが問題になっています※3。さらに、漁獲されたマグロは日本の市場で取引されていることが明らかになっています。
国内でも外国人技能実習生に対する、低賃金、長時間労働も問題になっています。このように日本の水産業界でも現代奴隷問題が生じています。
海外では国による法整備も進んでいます。英国の現代奴隷法をはじめ、各国で現代奴隷を取り締まる法律が施行されており、海外で事業展開する企業は特に、ビジネスの継続性を確保する上でも人権侵害防止対応が求められます。
※1 ILO(国際労働機関)とウォーク・フリー財団『Global Estimates of Modern Slavery』(2017)
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—dgreports/—dcomm/documents/publication/wcms_575479.pdf
※2 Trans-Atlantic Slave Trade – Estimates
https://www.slavevoyages.org/assessment/estimates
※3 日本が食った「奴隷」のマグロ
https://tansajp.org/investigativejournal_category/oceans/
(参考)p10,11,震災復興から生まれた持続可能な養殖~南三陸戸倉の挑戦~(2021),WWFジャパン発行
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210308resource01.pdf