ゴーストギア
ゴーストギアとは海上で流出、逸失、もしくは放棄された漁具を指します。年間50万トンから100万トンが海洋に流出していると推計されています*1。
そして日本では、近年問題となっている海洋プラスチックごみの容積として1位を占めるのが漁網となっています*2。
一般的な漁具の多くは耐久性に優れたプラスチックによって作られているため、一度海に流出すると永久に漂い続けます。そのため、多くの海洋生物が漂流する漁具に捕まったり絡まったりして窒息、衰弱し、苦しみながら死んでしまうのです。この状況は漁業者なき生物の捕獲となることから「ゴーストフィッシング」と呼ばれ、海洋生態系に深刻な被害をもたらしています。
また高価な漁具を失うことで漁業者にとっては経済的なダメージとなるほか、海上の障害物となっていることで航海の安全をも脅かしています。
漁具流出の主な原因は海洋での事故的な紛失の「逸失」、意図的な廃棄の「投棄」、そして意図的な非回収の「放棄」であるとされています。
投棄と放棄はIUU漁業を隠蔽するために行われることがあり、IUU漁業とゴーストギアは密接に関係していると言われています。他にも陸上に適切な処分場がないことや、処分費用が高いために漁具が投棄されるケースも多くあります。
こうしたゴーストギア問題の対策として、まずは漁具流出の防止(予防)に取り組んだ上で、流出してしまった場合に海上・海中で生物に絡んだりしないような漁具設計などを採用して被害を減らす(軽減)、そして流出した漁具の報告や回収(回復)を徹底するといった複合的かつ包括的なアプローチが重要となります。
国際的な枠組みや法制度の制定も同時に必要となりますが、既存の枠組みは断片的で統一されておらず、十分なものではありません。
こうした中でゴーストギアの問題解決に取り組む世界最大のイニシアチブにGGGI(グローバル・ゴースト・ギア・イニシアチブ)があります。水産業界・民間セクター・民間企業・NGO・アカデミア・政府など多様な参加者によって構成されており、それぞれのセクターが協力しながらグローバルとローカルの両面から解決を目指しています。
*1 https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210728_wildlife01.pdf (p.10より)
*2 https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/conf/02_02doukou.pdf
<参考文献>
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210728_wildlife01.pdf
https://www.ghostgear.org/resources
https://www.nissui.co.jp/news/202006042.html
https://www.ecodane.jp/plastics-smart/house-trash.html