漁業法
漁業法とは
漁業法とは、日本において漁業の権利やルールを定める基本的な法律のことです。正式には「漁業法(昭和24年法律第267号)」と呼ばれ、1901年の明治漁業法を基に1949年に制定され、1950年に施行されました。その後、2018年に70年ぶりの大改正が行われ「持続的な水産資源の利用と保存」が明記されました。2020年からはこの「新漁業法」が本格的に施行されています。
目的と主な規定分野
漁業法は、「水産資源の持続的な利用の確保」および「水産資源の保存・管理」を目的とし、漁業権や漁業の許可制度、漁業調整の仕組みなどを通じて、漁業生産力を発展させることをめざしています。
漁業法が施行された1950年当初は特に、戦後の漁業生産と民主化を目的として構築されました。以降、今日に至るまで主に以下の分野を規定しています。
・漁業権制度(定置・区画・共同漁業権など)
・許可漁業制度(大臣・知事許可)
・漁業調整委員会による調整機構
・漁場の計画・管理、罰則規定
漁業法の改正の背景
戦後間もなかった1949年当時は、資源管理は念頭に置かれておらず、漁業権の種類や内容、漁船大型化による大臣許可漁業の増大など、戦後の制度改革や国際漁場への再進出などに伴う事項に重点がおかれました*1。海面や漁場を誰が利用し、誰が利益を得るのかという点において、特に民主化に主眼が置かれたと言えます。
制定後、日本の漁業生産量は増加し続けました。1977年に排他的経済水域(EEZ)が設定され国外で自由に操業ができなくなったものの、マイワシの漁獲量が急増したため日本の生産量は飛躍的に増加しました。しかしその後、主要な漁獲対象であったマイワシなどの漁獲量の減少に歯止めがかからず、その結果、現在では日本周辺に生息する魚種45種のうち約半分の資源水準が再生産が困難とされる低位となっています。
こうした状況を受けて水産庁は、適切な資源管理を行うことで資源の減少を防止・緩和することを目指し、2018年12月、約70年ぶりに漁業法を大幅な改正しました。
*1 https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/r0503in1.pdf

左:我が国漁業生産量の推移及び漁業を取り巻く状況の変化(
令和元年度水産白書より)
右:我が国周辺の資源水準の状況(「高位・中位・低位」の3区分による資源評価 45 魚種73 系群)(令和2年度水産白書より)
漁業法改正の改正のポイント2点
一番大きな改正ポイントは、法の目的に「持続的な水産資源の利用と保存」が明記されたことです。さらにこれまで以上に科学的根拠に基づく管理を推進する方向に舵をきり、これを契機に、漁業の法的枠組みがサステナビリティ対応へと明確にシフトしました。
改正前は船舶の隻数や漁具、漁法など操業に関する規制による資源管理(インプットコントロールやテクニカルコントロール)が主流でしたが、改正後は、「漁獲量規制(アウトプットコントロール)」型の管理へと変化しました。
大きな政策ポイントは2点。
まず1点目は漁獲量の多いものを中心に、資源調査・評価を行い、最大持続生産量(MSY)を達成すべく、これまではTAC法(海洋生物資源の保存及び管理に関する法律)によって8種に適用されていた魚種ごとに漁獲量の上限を決める「総漁獲可能量(TAC)」を拡大することを採用した点です。全体での漁獲上限を定めることで、総じて獲りすぎてしまうことはなくなります。
現在、TACが設定されているのはサンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、サバ類(マサバ、ゴマサバ)、スルメイカ、ズワイガニ、クロマグロの8種で国内総漁獲量の約6割をカバーしています。2025年までにTACの対象魚種を増やすことによって日本全体の漁獲量の8割までカバーすることが目標として掲げられています*2。
2点目はIQ(Individual Quota、個別割当)方式の採用です。
TACは総量規制のため、漁業者間で先取り競争が起こる可能性があります*。そこで漁業法の改正により、TAC管理された魚種に関しては漁業者あるいは漁船ごとに漁獲量を割り当てるIQ方式も合わせて採用されることになりました。IQ方式は国際資源であるミナミマグロや大西洋クロマグロを対象にさらにベニズワイガニなどで採用されていましたが、2023年度までに大臣管理漁業*3の11漁法・資源に導入されました*4。
また、漁業者の減少・高齢化が深刻化する中、新規参入者が参入しやすくなるよう漁業許可制度の見直しや漁業権制度の見直しも行われました*5。
*2 令和2年 水産庁 新たな資源管理について, 6p
*3 複数都道府県の沖合や外国へ出漁する漁業について農林水産大臣が許可する漁業。
*4 水産庁、資源管理の部屋、(7)IQ(漁獲割当て)による管理
*5 水産政策の改革(新漁業法等)のポイント
資源管理・調査の精度向上を
TACおよびIQを進めていく上で重要になるのが、今、魚がどれぐらいいるのかを漁獲情報や生態学的情報をベースに科学的に推計する「資源評価」です。政府は、漁業法が改正された2年後の2020年、資源管理の推進のための新たなロードマップを発表し、「資源評価の対象魚種を23年度末までに50種から192種へ、対象資源を8種18資源から27種47資源に拡大」*6 してきましたが、水産企業側からは「資源評価の精度をもっと上げてほしい。資源評価やそのための人員の増加、機器導入などにもっと予算を充て、より正確なデータの取得を進めていただきたい」といった声もあげられています*7。
今後、質の向上をはかりつつ、資源管理対象魚種を拡大し、着実に資源管理を進めていくことが求められています。
*6 森元水産庁長官の発言より
*7 マルハニチロの池見賢社長社長の発言より
詳細:
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