Planet Tracker
Planet Trackerは、2018年に設立されたロンドン拠点の非営利シンクタンクです。同団体は、資本配分を「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)」に整合させることで、金融市場の変革を推進しています。そのミッションは、2030年までにグローバルな金融活動を変革し、生産システムに実質的な変化をもたらすこと、そしてレジリエントで公正、かつネットゼロでネイチャーポジティブな経済への移行を実現することです。
Planet Trackerは、食品システム、海洋、プラスチック、石油化学といった主要なバリューチェーンに注目し、自然資本に関連する金融リスクと機会を特定しています。投資家、金融機関、企業とのエンゲージメントやターゲットを絞った調査を通じて、自然資本の誤った価格付け(ミスプライシング)を明らかにし、ステークホルダーの説明責任を促し、金融をてことして持続可能性の推進に活用しています。
水産・海洋セクターにおいては、現在、資金の流れと海洋の健全性との間に乖離があります。Planet Trackerはこの不整合を明らかにすることで、投資家、企業、業界関係者に行動のためのエビデンスを提供し、金融システムを持続不可能な慣行の是正と変革推進のテコへと転換することを目指しています。この取り組みは近年、金融機関によるスチュワードシップや企業経営層・取締役会との対話の指針として活用されています。
Planet Trackerの「変革理論(Theory of Change)」は、グローバル・サプライチェーンに内在する持続可能性リスクに対処するため、金融システムをテコとして活用することにあります。
海洋プログラム
Planet Trackerの海洋プログラムは、海洋資源の過剰利用を終わらせ、破壊的な産業慣行を転換し、海洋生態系の劣化を防ぐ解決策を見出すことを目的としています。同プログラムのレポートやデータベースは、世界の漁業および深海採掘産業を対象とし、各国の水産セクターやサプライチェーンに関する詳細な分析も含まれています。
『Against the Tideー上場水産関連企業70社の財務分析 報告書』
2021年に発行した「Against the Tide」では、日本の上場水産関連企業70社を対象に、自然資本の減少が財務パフォーマンスに与える影響を分析しました。日本は世界有数の水産企業を多数抱えており、グローバルな調達網を通じて海洋の健全性に大きな影響力を持っています。
調査の結果、日本では水産物消費量、天然漁獲量、養殖生産量がいずれも減少しているにもかかわらず、2010年から2019年にかけて企業の利益および株価は上昇していました。これは、海外展開、M&A、垂直統合、コスト削減、負債圧縮といった経営戦略により、自然資本の制約を相殺していたためです。
さらに詳細な分析では、水産資源への依存度が高い企業(小売、卸、加工・生産、外食など)は、資源劣化の影響を受けやすく、同業他社と比較して企業価値が相対的に低下していることが明らかになりました。一方で投資家は依然として、売上成長、EBITマージン、営業キャッシュフロー、投下資本利益率、バリュエーション倍率といった指標を重視しており、これらはいずれも自然資本リスクを十分に反映していません。本レポートは、持続可能な魚類資源の回復が、財務的レジリエンスを高めると同時にシステミックリスクの低減にもつながることを示しました。
Against the Tide
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『Fishful Thinkingー中国の遠洋漁業船団分析』
2024年に発行した『Fishful Thinking』は、中国の遠洋漁業船団を分析したもので、同船団は2022年に233万トンの水産物を漁獲し、グローバル・サプライチェーンにおいて重要な役割を担っています。1,446隻を対象とした分析では、平均推定粗利益率は14%であり、少なくとも利益の45%が補助金に依存していると推定されました。財務的な圧力に加え、気候変動や規制強化の影響により、環境破壊、労働問題、違法漁業のリスクが高まっています。
本レポートは、透明性の向上、モニタリングの強化、持続可能な慣行への移行を政府および金融機関がどのように支援できるかを提示しています。WTOの漁業補助金協定の進展や気候変動によるマグロ資源分布の変化により、金融リスクは今後さらに増大すると見込まれます。Planet Trackerは、船団全体に対する100%の監視およびトレーサビリティを実現するため、中国元55億元規模のサステナビリティ連動型ソブリン債「Hai Feng債」による資金調達を含む、野心的な移行計画を提案しています。
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『Tuna Turnerーマグロ産業の透明性に関する報告書』
2025年に発行した『Tuna Turner』は、グローバルなマグロ産業における透明性の欠如に焦点を当てています。マグロ資源量は大幅に減少しており、複数の種が脅威にさらされています。しかし、情報開示不足により、どの企業が過剰漁獲や持続不可能な慣行にどれほどさらされているのかを投資家が評価することは困難です。
Planet Trackerは、Global Fishing Watchの衛星データと船舶所有情報の分析を組み合わせ、魚種および海域別の漁獲量を再構築しました。その結果、世界のマグロ漁獲量の46%をわずか30社が占めていると推定されましたが、漁獲量を開示している企業は4社のみであり、魚種・漁場・漁法・認証レベルまで包括的に報告している企業は1社にとどまっています。
本レポートは、「何を(what)」「どこで(where)」「どのように(how)」「どれだけ(how much)」という4つの開示指標を提示するとともに、船舶追跡および所有構造の透明性向上の必要性を示しています。いわゆる「ダーク・ツナ」(船舶や所有者に紐づかない非公開漁獲)を排除することは、投資家リスクの低減および中長期的な企業価値の改善につながる可能性があります。透明性の向上は、デューデリジェンスの強化、投資家信頼の回復、追跡可能なサプライチェーンの構築に寄与します。
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水産トレーサビリティ・エンゲージメント
Planet Trackerは調査活動に加え、投資家エンゲージメントにも積極的に関与しています。FAIRR Initiativeによる「Seafood Traceability Engagement」のパートナーであり、世界最大級の水産企業7社を対象に、サプライチェーン全体における重要リスクへの対応と機会創出に取り組んでいます。
本イニシアチブは、総額9.6兆米ドルの資産を運用する45の投資家によって支持されており、世界自然保護基金(WWF)、World Benchmarking Alliance、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)のSustainable Blue Economy Finance Initiativeと連携して実施されています。この連携は、トレーサビリティの強化、透明性の向上、そしてよりレジリエントで持続可能なグローバル水産システムへの資本の整合を目指す共通の目的を示しています。
公式ウェブサイト:https://planet-tracker.org/


