Z世代を巻き込め!サステナブル・シーフードを次世代に訴求するには(後編)

Z世代を巻き込め!サステナブル・シーフードを次世代に訴求するには(後編)

前半では、未来の消費者となるZ世代の概観をお伝えいたしました(前編はこちら)。

後半となるこの記事では、そんなZ世代への訴求の仕方や先行事例についてご紹介いたします。

前半でも触れたところですが、サステナビリティへの関心が高く知識があるとされているZ世代でも、すべての層が実際に何かしらの行動をとっているわけではありません。行動に移せない原因としては、「テーマが大きすぎるため当事者意識を持ちにくい」「そもそも何をすべきかがわからない」などが挙げられました。

そのため、企業側(発信側)はZ世代の消費者に対し「当事者意識を持ちやすいようにする」「具体的な行動を示す」「行動のハードルを下げる」などのポイントを意識して発信することが有効です。以下ではそれぞれについて例を交えてご説明いたします。

 

 

消費者が当事者意識を持ちやすいようにする

例:Dole「もったいないバナナプロジェクト」

ポイント:テーマや問題を分かりやすく伝える工夫をする

輸入の過程で廃棄されてしまうバナナを「もったいないバナナ」と名付けることで消費者に分かりやすい言葉で問題意識を共有し、彼らを自社の目標である「フルーツ廃棄物ゼロ」達成に巻き込もうとしています。

難しい用語をキャッチーで分かりやすい名前に置き換えることで、当事者意識を持ってもらいやすくなる効果が見込まれます。

 

具体的な行動を示す

例:コメダ珈琲店「くつろぎの持続化投票」

ポイント:消費者を巻き込むような発信をする

このキャンペーンでは、コーヒーの生産地にまつわる課題を3つ取り上げ、重要だと思うものを投票で選んでもらうという形で消費者参加を促しています。そして得票率が最も高かったプロジェクトはコメダ珈琲店によって実行されるという試みです。

選択肢を与えることで、やや漠然とした「コーヒーの生産地の問題」を具体的に「どの問題を解決しなければならないか」という問いに転換し、消費者が考えやすいようにしています。またこのような投票を通じ、消費者に「自分もコメダを通じて貢献した」と思ってもらい、自社の商品の購買も促すことが可能です。

 

行動のハードルを下げる

例:オズモール編集部 「#マイボトルチャレンジ」

ポイント:「いつのまにか貢献している」という状況を作る

SNSを活用した宣伝手法として、「元となる投稿を拡散することで特定の景品がもらえる」というものがよく見かけられます。この投稿も手法こそは同じですが、応募の条件を「マイボトルチャレンジに関連した投稿(または当該投稿のリポスト)」としています。

すなわち、フォロワーに自分の使っているマイボトルの写真を投稿させることを通じてマイボトルの使用も普及させようとしているキャンペーンなのです。このように、キャンペーンの応募条件が知らず知らずのうちに環境保全につながるような設計も効果的です。

 

 

ここまでは、Z世代に対する発信のポイントをご紹介いたしました。

それではこれらを踏まえたうえで、Z世代にサステナブル・シーフードを訴求するにはどうすればよいでしょうか?

発信をする際に押さえておくべきなのは、売り手と買い手はそれぞれ問題に向けている意識の種類が異なるという点です。例えば、これを読んでいる水産業界の企業や生産者の方々は各々の問題意識に基づき、なおかつ十全な知識を持って課題解決に取り組んでいるかと思われます。しかしながら、そのような方々に比べると消費者は知識が追いつかない部分があったり、課題に対する関心もまばらです。そのため企業が歩み寄ったりリードすることが必要となります。

また、買い手には意思決定を行うための情報や知識が不足しているという点も改めて押さえておきたいところです。例を挙げると、水産資源を守るためのアプローチとして、違法な漁業を取り締まる、漁業に関する法律を改正する、エコラベル認証を取得するなどの取り組みが考えられます。ただ「アプローチが多様」とは、裏を返せば「自分はどの立場から・どうすれば貢献できるのか」を考えて選ばなければならないことを意味するため、消費者の負担が大きくなってしまいます。

そのため、企業側から分かりやすい言葉で問題意識を共有したり、具体的な行動を示したり、行動のハードルを下げたりするなどの工夫をし、消費者が行動を起こすきっかけを与えることが求められます。

以下では上記のポイントを踏まえた発信の例として、サステナブル・シーフード購買促進のためのアイデアを2つ挙げました。

 

(アイデア例1)分かりやすい言葉で言い換える+行動のハードルを下げる

キーワードを言い換えたり、具体的な行動をあらかじめ示す。
また、取ってほしい行動を「購買」ではなく「購買を通じた何か」に設定する。

・「サステナブル・シーフードを買おう!」
→「エコラベルの付いた商品を売り場で探してみよう!」
・「サステナブル・シーフードを友達にも広めよう!」
→「エコラベルの付いた商品を買ったら、お店の位置情報をつけてシェアしよう!」

 

(アイデア例2)消費者参加型の発信

SNSでの投票機能を利用した投稿を利用する。以下のようなクイズを作り、消費者に考える機会を与える。

問: あなたは今日から農林水産大臣になりました。次の水産業における課題のうち、どれを率先して取り組むべきでしょうか。

A. 違法な漁業や不当な労働
B. 水産物の乱獲による資源枯渇
C. 混獲による生態系の破壊

投票終了後に、いずれの選択肢もサステナブル・シーフードの購買によって解決されることを伝える。

 

ここまで挙げてきたポイントや例で一貫しているのは、なるべく消費者に分かりやすい形で問題提起をするという点にあります。やはり売り手として「持続可能な漁業」の実現は重要な課題であるためその背景を知ってもらったうえで買ってほしいと思うものですが、今後サステナブル・シーフードを普及させるには「まずは買ってもらい、そこから知ってもらう」という流れが必要になるでしょう。

その過程で水産資源の枯渇という課題に対する消費者の認識が「世界の誰かが解かなければならない課題」から「自分自身が向き合いたい課題」に変化し、どのような行動をとるべきか分からなかった層が積極的な購買層に変化するかもしれません。

これまで全2回にわたり、Z世代にサステナブル・シーフードを訴求するためのヒントとして、Z世代の特徴や彼らに対するアプローチの仕方などをご紹介いたしました。

確かにZ世代はサステナビリティに関心が高いとされていますが、実際に何をしていいか分からないという層もまだまだ存在しています。だからこそ、企業側がリーダーシップを発揮して消費者を積極的に巻き込み、私たちZ世代と一緒に課題に向き合っていく姿勢を見せてほしいと考えています。

 

担当:髙木燎