SDG目標に見る日本の水産事情

SDG目標に見る日本の水産事情

 

企業のCSRに欠かせないベンチマーク、Sustainable Development Goals(SDGs/持続可能な開発目標)。この国連で採択された17の目標に対して、世界中の国々はどのくらい取り組んでいるのでしょうか。

2016年、ドイツ最大手の財団であるベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワークが共同で「持続可能な開発目標インデックス&ダッシュボード」を立ち上げました。この「持続可能な開発目標インデックス&ダッシュボード」とは各国の2016年時点でのSDG目標の項目別の成績表。企業が中心となり積極的にSDG目標に取り組む日本、さて日本の成績はいかに!?

2016年の日本の総合成績は調査対象の149カ国中18番目、100点満点中75点という結果に。目標達成により近い上位にランクインした国は環境問題に積極的に取り組む北欧を中心としたEU諸国が目立ち、経済政治が不安定な国、開発途上国、そして人口が急激に増加している国は下位にとどまっています。

日本の項目別の達成度を色別で表したものを見ると、17項目のうち緑(目標達成)は3つ、黄色(取り組み中)は7つ、そして赤(目標達成には程遠い)は7つという先進国の中では課題が多く残る現状が浮き彫りになっています。

気になる14番目の開発目標である「海洋の持続可能な利用」は赤ラベル、取り組み度に関しては17の目標中下から2番目、水産大国としては悲しい結果に。また、IUU漁業などに関連する10番(人や国の不平等をなくす)や、消費者意識や持続可能な生産に関連する12番(持続可能な生産と消費)も残念ながら赤ラベルの評価になっています。

14番目の目標の評価基準となる5つの項目を見てみると日本の水産業界に問題点が見えてきます。

 

– 海洋汚染 –

化学物質や生活排水などによる海洋汚染を100点満点で採点。
63.7点(黄色ラベル)

– 生物多様性 –

海域の生物多様性を100点満点で採点。
90.4点(緑ラベル)

– 漁業 –

漁業の持続可能性(現状の保全、管理下で翌年の漁獲を増やせるか)を100点満点で採点。
29点(赤ラベル)

– 保全海域 –

世界の海の生物多様性を守るために重要な海域が保全されている割合。
34.8%(黄色ラベル)

– 過剰漁業により漁場が崩壊してしまった海域 –

EEZ圏内で過剰漁業により漁場が崩壊してしまった海域の割合。
51.5%(赤ラベル)

 

上記を見て分かるように、日本の水産業界の問題点が浮き彫りになっています。唯一緑ラベルの評価を得た生物多様性に関しては日本近海が恵まれた漁場だからこその評価でしょう。しかしその豊かな生物多様性を守るための活動は追いついておらず、保全海域に関しては黄色評価、そして51%もの漁場が崩壊の危機にあると評価されています。水産業の成長指数を表す持続可能な漁業に関しては100点満点中29点!データのある114カ国中、下から15番目という結果に。

今回の結果を見る限り、まだまだ課題の残る日本の水産業界。しかし海外には厳しい管理と保全努力の結果、低迷していた水産業が復活、そして成長産業にまでなった例がいくつもあります。きちんとした管理を行えば魚は戻ってくる、日本の水産業にも復活の兆しはまだまだあります。企業はSDGの14番やそれに関連する目標に取り組むことで健全で持続可能な海の実現へ貢献するだけでなく、日本の水産業を復活へと導く手助けができるのです。具体的な取り組み例については、過去のブログをご参照ください。

この「持続可能な開発目標インデックス&ダッシュボード」は毎年更新され、最新版(2016年の結果)は今年の7月に発表予定とのこと。日本の追試の結果はいかに?!今後の展開に注目です。

 

 

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