消費者、サプライヤ―と共に海の資源を守る新PB商品シリーズの立ち上げ(後編)

消費者、サプライヤ―と共に海の資源を守る新PB商品シリーズの立ち上げ(後編)

日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、日本の消費生活協同組合(生協)の全国組織として1951年に設立されました。加盟する会員生協とは「本部と支部」という関係ではなく、人事交流、商品の共同開発、物流機能の共同化などが行われています。

日本生協連の主な事業は、プライベートブランド「コープ商品」の開発と供給、会員生協の事業・活動の支援、そして、生協の全国的な事業・活動方針の策定です。

「コープ商品の2030年目標」とコープ商品「責任ある調達基本方針」について、日本生協連の第一商品本部・本部長スタッフ(サステナビリティ戦略担当)の松本哲さんに取り組みの経緯と意義を伺いました。(前編を読む

コープ商品「責任ある調達基本方針」の公開に至るまで

―― 「コープ商品の2030年目標」とコープ商品「責任ある調達基本方針」は、どのような背景で公開に踏み切られたのでしょうか。

2017年に「イオン持続可能な調達方針」「持続可能な調達2020年目標」を発表したイオンをはじめ、日本でも大手企業を中心に調達方針や目標の公開がすすみました。日本生協連では、2016年にCO・OP商品「責任ある調達」指針を策定して取引先に公開し、水産や木材など分野別の「調達の考え方」の文書をまとめて、会員生協には共有していましたが、ウェブサイトでの一般公開まではしていませんでした。

世の中からは会員生協と日本生協連の違いがわかりづらいのですが、宅配や店舗などは会員生協が独立して事業を行っており、日本生協連は会員生協に向けてプライベートブランドのコープ商品を開発し供給する役割を持っています。

持続可能な社会を実現するために全国の生協で推進する2030年までの政策として「生協の2030環境・サステナビリティ政策」を策定するにあたり、日本生協連が販売者として直接的な責任を持っているコープ商品について、調達方針を公開して目標を示していこうということで検討を行うことになり、会員生協との論議をすすめました。

コープ商品について、サプライチェーンを通じて人権を尊重し、環境に配慮した「責任ある調達」を一層推進するため、各種の方針を改めて整理し、コープ商品「責任ある調達基本方針」と「コープ商品の2030年目標」として、「生協の2030環境・サステナビリティ政策」の発表に合わせて2021年5月に公開しました。

―― 政策や調達方針や目標の策定過程にはどのような人たちが関わったのでしょうか。

「生協の2030環境・サステナビリティ政策」は、日本生協連の専門委員会である環境・サステナビリティ政策検討委員会で検討を行い、理事会での論議・承認を受けて確定しました。理事会は、全国の主要な生協や連合会の役員や組合員の代表、有識者で構成されています。

コープ商品「責任ある調達基本方針」と「コープ商品の2030年目標」は、日本生協連の内部で部門を越えて担当者が集まって議論を重ね、NGOや有識者との意見交換を経て素案を作成しました。その素案から会員生協との論議・修正を重ねてまとめ、社会的な公開に至ったという経過です。

 

「 責任ある調達基本方針」

出典:日本生協連コープ商品「責任ある調達基本方針」
詳細はこちら

出典:コープ商品の2030年目標

 

取引先、会員生協、組合員への働きかけ

―― 責任ある調達基本方針の周知はどのように進めていますか。

「責任ある調達」推進の基本的な取り組み姿勢として、「ステークホルダーとの協同/協働の関係に基づく取り組みの推進」を掲げており、取引先との対等なパートナーシップの下、取引先と生協双方の努力によって、「責任ある調達」の構築に努めることを基本としています。取引先には、まず今回の「責任ある調達基本方針」を見ていただいて、各社の取り組み状況についてアンケートによるご回答をお願いする予定です。その回答を日本生協連で分析します。

調達方針を公開したことで、エコラベル付き商品の拡大について取引先への協力要請や取り組みの連携がすすめやすくなるのではないかと考えています。アンケートと合わせて調達基本方針の周知をはかる予定です。

組合員向けには、「コープサステナブル」シリーズなどの具体的な商品を通じて、この取り組みについて理解を深めてもらうことを考えています。

会員生協での先進的な取り組みをご紹介すると、コープデリ連合会が宅配カタログの表紙にMSC「海のエコラベル」付き商品をたびたび掲載して、ラベル付き商品を利用することの意義や、さらに美味しさも伝えているという例があります。

コープデリ連合会が宅配カタログ「Vie Nature」の表紙にMSC「海のエコラベル」付き商品を掲載

 

日本生協連の2020年10月の組合員アンケート調査ですが、MSC「海のエコラベル」の付いた商品を購入したことがある人が22%、見たことはあるが購入したことはない人が10%でした。組合員が利用する生協別にみると違いがあり、認証ラベル付き商品を積極的に取り扱うとともに、組合員とのコミュニケーションに積極的に取り組む生協では、利用や認知が高くなることも明確になりました。

 

「コープ商品の2030年目標」を達成するには

―― 「コープ商品の2030年目標」の中で、水産物についてはMSCやASCの認証商品の拡大を重点としつつ、GSSIが認定した認証スキームによる認証品の供給額を構成比で50%以上にするという目標を定められました。目標達成に向けて、どんな課題がありますか。

これまでは、水産部門のコープ商品だけを対象にしてきましたが、今回公開した調達基本方針では、「水産物を主原料とする仕様指定商品および生鮮水産物」と範囲の定義を変更しましたので、日配部門の練り製品、冷凍部門の水産フライ、加工食品部門の水産缶詰・海産乾物、菓子の海産珍味、家庭用品部門のキャットフードなども対象となります。

水産部門の商品は、原料の調達先がはっきりしているところが多いのですが、他の部門では原料の産地を固定していなかったり、中間加工業者が複数入るためトレースが難しかったり、認証エコラベルへの関心が低い業界もあるので、なかなか容易ではないところがあります。

また、供給量が大きい大西洋サバのMSC認証の回復に向けて、日本生協連も、NAPA(※)に参加しました。沿岸国に対して科学的な勧告に従った漁獲枠の決定を働きかけるため、ヨーロッパなどの企業や組織と連携していく考えです。

コープ商品に使われているノルウェー産の大西洋サバMSC認証の回復に向けて、日本生協連もヨーロッパなどの企業や組織と連携して働きかけていく

 

生協では、組合員の国産水産物への支持が非常に強いことが特徴です。日本生協連の水産部門のコープ商品は約半分が国内での漁業か養殖による原料を使用していますが、持続可能な国産水産物をどのように増やしていくかも課題ですね。

 

※NAPA(The North Atlantic Pelagic Advocacy):北大西洋における浮魚漁業の管理改善を目指すグループ

 

関係者の努力の相乗で世の中は変わっていく

―― エコラベルが付いているか否かに関わらず、国産への支持が強いのですか。

組合員からは国産の農畜水産物に根強い支持があります。しかし、日本の水産物では様々な理由で漁獲量が減っている魚種もあり、漁業の持続性を高めるための取り組みもしていかないと、商品の継続が難しくなっていくと思います。

いま広島のカキを育てる漁業者のMSC認証取得のサポートなどをしていますが、実際に認証を取得するということはなかなかたいへんなこともよくわかりました。「インドネシア・スラウェシ島 エビ養殖業改善プロジェクト」も新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、当初の計画通りにはすすんでいないところもあります。

認証を取得するためには、現場の関係者のこれまでの仕事のやり方を変えなければいけないところもありますので、簡単ではありません。日本生協連の方針を理解されご協力いただいている関係者のみなさんに心から感謝しています。

―― 確かに、これまでの価値観ややり方を変えるのは難しいですね。

そうですね。それでも、変えざるを得なくなる時に世の中が変わっていく流れというものがあるのではないでしょうか。私が就職した当時はオフィスのデスクでタバコを吸えるのが当たり前でしたし、育児休業法も施行前でした。今では信じられませんよね。喫煙ルールが厳しくなり、ジェンダー平等への施策が企業にも強く求められるようになりました。

ここ数年で変わったこともいろいろあります。たとえば、2016年に大西洋のサバ漁業がMSC認証を取得したときに、発売中のサバ商品にMSC「海のエコラベル」を付ける提案をした頃は、積極的な受け止めは少なかったのですが、今では、MSC認証を含めてサステナブルな商品の取り扱いをもっと増やしてほしいといった声を多くの会員生協からいただくようになっています。社会環境の変化に、それぞれの努力が相乗的に反映しているのかなと思います。

今、世の中で求められているSDGsのさまざまなターゲットに対してどのように応えていけるのか。私たちは、大局的な視点を持ちながら、生協の連合会の立場で何ができるのかを考えて取り組んでいくことが大切なのでしょうね。

 

日本生活協同組合連合会
各地の生協(生活協同組合)や生協連合会が加入する全国連合会。1951年設立。現在の会員(会員生協)数は314、供給(売上)高は4,396億円。主な事業は、プライベートブランド(PB)商品の開発と供給、通販事業、会員の事業・活動支援など。PB商品の開発に積極的であり、赤地の楕円に白文字で (CO・OP) のマークが付けられた製品(コープ商品)は日本生協連の開発。

 

取材・構成:井内千穂
中小企業金融公庫(現・日本政策金融公庫)、英字新聞社ジャパンタイムズ勤務を経て、2016年よりフリーランス。2016年~2019年、法政大学「英字新聞制作企画」講師。主に文化と技術に関する記事を英語と日本語で執筆。

 

松本さんのサステナブル・シーフードの取り組みへの思いを知りたい方はこちらもお読みください。

生協の社会的役割。 組合員とつくる 豊かで持続可能なくらし。

 

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