ESG投資で変わる水産業

ESG投資で変わる水産業

近年、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した投資、ESG投資が急速に成長しています。

世界持続的投資連合(GSIA)の調査によると、2020年のESG投資総額は世界全体で35.3兆ドル(約3900兆円)。世界の投機マネーの35.9%を占めるほどになり、前回調査(2018年)と比較すると15%の増加しています。日本の伸び率もめざましく、総額は約320兆円、34%の伸び率になっています。ただ、運用試算全体に占める割合は24.3%と欧州(41.6%)、米国(33.2%)に比べるとまだ少ない状態です。

ESG投資の波は水産業界にも押し寄せつつあります。今年の6月には、気候変動リスク開示枠組み「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の生物多様性版、「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」​​が発足。海も含め、森林や河川など自然が破壊されることによって及ぼされる企業財務リスクの開示の枠組みが2023年までに公表される予定です。TNFDに基づく情報開示は今のところ義務ではありませんが、先行するTCFDの例をみると、投資機関がTNFDに基づく情報開示を求める可能性は高く、水産関連企業が海洋保全を含め、生物多様性保全について取り組むことはもはや避けて通れなくなるでしょう。

すでに、金融機関を対象に、海洋保全を促進する動きも高まっています。2018年にUNEPや欧州投資銀行などによって金融機関向けにつくられた「持続可能なブルーエコノミー 金融原則」、そして、海の持続可能性を高めるための投融資ガイダンス「Turning the Tide:How to finance a sustainable ocean recovery」です。前者は、ブルー・エコノミー、つまり持続可能性を確保しながら海洋を基盤とする経済を発展させていくため、投資の際に重視すべきことを14の原則にまとめてあります。後者は、サステナブル・シーフードの分野で、市場、規制、風評それぞれについてどのような具体的リスクがあるかなど政策担当者に役立つ情報が提供されています​​。これらの原則やガイドラインをもとに、世界の金融機関は、海洋保全をはかる投融資をすすめるための準備をしはじめています。

国際的な枠組みが大きく変わり始める中、先行して海洋保全、海洋資源保護を目的とした融資を獲得する企業や投資を行う投資機関も現れています。

世界最大のツナ缶をはじめとする食品関係のグローバル企業であるタイ・ユニオン・グループは、気候変動、人権保護やIUU(違法・無報告・無規制)漁業に関連したトレーサビリティーの強化をはかることを目的に2021年2月、環境対応型融資「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」で400億円超を調達。この融資を行ったのは、みずほ銀行と三菱UFJ銀行、そして第一生命、つまり日本の金融、アセットオーナーでした(詳しくはこちら)。第一生命はその後、 アジア開発銀行が発行するブルーボンドにも投資をするなど海洋保全に関する投資を強化していると伝えられています※1。

こうした国際的な動きは大企業が対象であって、中小企業には影響がないのではないか、と思われる方もいるかもしれません。しかし、多くの企業がサプライチェーンの中でビジネスを行う今日、大手企業の方針の変更は、取引先の方針・行動変化を求めることにつながります。もはや、どの企業もESG投資とは無関係とは言えなくなるでしょう。

先日、MSCジャパンは、ある研究によって、MSCのCoC認証を取得した水産企業の株価の方が取得をしていない企業に比べて高くなる傾向にあることが明らかになったと発表しました※2。気候変動の分野でも、時価総額が上位の企業ほどTCFDに賛同しており、温室効果ガスも減少傾向にあることがわかっています※3。

つまり、海洋保全、海洋資源保護を含めたサステナビリティの取り組みは必須になりつつあり、取り組めば評価される時代が急速かつ着実に来ています。大きなチャレンジではありますが、言い換えれば中長期的なビジネスチャンスでもあります。

もっと詳しく知りたい、と思った方は、来たる10/11-13に開催する東京サステナブルシーフード・サミットにぜひご参加のうえ時代の先端をつかんでください。

<東京サステナブルシーフード・サミット2021>
2021年10月11,12,13日 9:30-17:00(予定)
3日間で 5,500円(税込)
特典:参加者同士の名刺交換やオンラインミーティング・資料のダウンロード・    アーカイブは12月まで聴けます
詳細・申込はこちら

※1 https://www.kankyo-business.jp/news/029446.php
※2 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000059178.html
※3 経産省調べhttps://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kankyo_innovation_finance/pdf/003_04_00.pdf

参考:
「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2020」世界持続的投資連合(GSIA)

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