シンポジウム2017総括レポートー2 トークセッション

シンポジウム2017総括レポートー2 トークセッション

 

去る10月27日に行われた東京サステナブル・シーフード・シンポジウムレポートの二回目は、基調講演に続いて行われた3つのトークショーについてレポートします。

 

トークセッション1:日本の水産市場が抱える課題と描く展望

最初のトークセッションは、基調講演に続いてイオン執行役の三宅香氏、国立研究開発法人水産研究・教育機構理事長・宮原正典氏、そして日立製作所理事CSR・環境戦略本部長・荒木由季子氏の3名をパネリストにお迎えし、シーフードレガシー代表の花岡和佳男のファシリテーションで行われました。

左から:シーフードレガシー花岡、国立研究開発法人水産研究・教育機構理事長・宮原正典氏、日立製作所理事CSR・環境戦略本部長・荒木由季子氏、イオン執行役・三宅香氏

まずは宮原氏が、国際的な観点から捉えた日本の水産業の危機的状況と、その状況に面しながら危機感の足りない日本国内の現状に警鐘を鳴らしました。「世界的にみても、魚食市場が成長傾向にないのは日本くらいで、漁師一人あたりの生産性はほぼ底に近い」とした上で、「漁業の技術は日進月歩を遂げており、科学的根拠に基づいた管理が必要」であることを強調。またそのためには漁船を減らし、IUU漁業についても手を打つなど、システム全体を見直して、利益が上がるようにしなければならないとの見解を示しました。

日立の荒木氏は、自社のIT技術を使い、トレーサビリティに関するインフラ構築など、事業貢献の可能性を示しました。また近年では特に環境への負荷軽減や人権問題が、サプライチェーンを含めたグローバルな規模での課題となっている実情に触れ、「一社だけでこういった問題に対応するのは難しい。NGOなどの力を借りながら、グローバルに取り組むことが重要」と強調しました。

そしてイオンの三宅氏を交えて、それぞれの視点から水産市場の課題やその解決に向けての展望についての意見を交わしました。宮原氏は「日本は『そのうちなんとかなるだろう』という楽観主義が根強く残る中で、規制を入れることにまだ強い抵抗がある」と説明。荒木氏は「データを示して現状を共有し、危機感を持たせることが不可欠。」であり、技術による解決の可能性を示しました。また三宅氏は、「イオンのフィッシュバトンを知っている人はまだまだマジョリティではない。ただ、全員が知るのを待つのではなく、話題になって考えるきっかけが提供できればいいと思っている。」と語りました。

 

トークセッション2:SDGs達成にとって、海洋保全やサステナブル・シーフードはどのような貢献ができるのか?

続いてのセッションは日経エコロジーの藤田香氏のファシリテーションのもと、SDGsの研究で知られる慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史氏と、基調講演にもご登壇頂いたパークハイアット東京のトーマス・アンゲラー氏がパネリストとして登壇しました。

左から:日経エコロジー・藤田香氏、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授・蟹江憲史氏、パークハイアット東京・トーマス・アンゲラー氏

まず蟹江氏は、サステナブルシーフードひとつをとっても、SDGsの目標がいくつも連なっていること、またSDGsは法的拘束力はなく、「やる気のある人」が集まって実現していく新しい仕組みであることをなどを紹介しました。

そういった観点からしても、アンゲラー氏率いるパークハイアット東京の挑戦は、2020年のオリンピックを契機に、2030年のSDGs達成に向け、自らすすんで踏み出した一歩といえるでしょう。アンゲラー氏は、啓蒙活動がシェフのひとつの仕事だと位置づけています。東京での取り組みが始まった2014年頃は、サステナブルといえる国産の魚介類は数が少なく、お客様の理解や関心もそれほど高くありませんでした。しかし、地元の産業に手を差し伸べ、フードマイレージを抑え、何よりもホテルのお客様に喜んで頂き、誇りを持って料理を提供できるように、WWFなどのNGO等と協力しながら、自ら産地に出向き地元の供給源を確保する努力の結果、目標に着実に近づきつつあることを紹介しました。

「オリンピックは人々のマインドセットを変えるまたとない機会」と語る蟹江氏は、そういったパークハイアット東京の挑戦が、SDGs実現のベストプラクティスになってくれれば、とエールを送りました。

 

トークセッション3:サステナブル・シーフードが食卓に届くまで

最後のトークセッションは、日本生活協同組合連合会(生協)で水産調達方針の作成などを担当する商品本部本部長スタッフ・松本哲氏、西友の企業コミュニケーション部VP・和間久美恵氏の2名を壇上にお迎えし、再びシーフードレガシー代表の花岡によるファシリテーションで行われました。

松本氏は、生協は近年エシカル商品へ力を入れており、その実現のために1)組合員と共同での商品開発、2)責任ある調達の仕組みづくりを基盤としていることを紹介しました。サステナブルシーフードについていえば、2007年からMSCの商品を取り扱い始め、今年度は卸売金額にして前年度の4倍ほどの規模に拡大される見込みとのこと。特に既存の利用が高い商品をMSCに切り替えることで、理解がされやすいといいます。一方で、昨年組合員を対象に行なったエコラベルの認知に関するアンケートでは、MSCは「聞いたことはあるがよく知らない」を含めても、認知度は15%程度であり、今後もその意味や意義についてコミュニケーションを続けていきたいと目標を語りました。

中央:日本生活協同組合連合会(生協)商品本部本部長スタッフ・松本哲氏

また和間氏は、グローバルでサステナブルシーフードに早くから取り組んだ西友の親会社ウオルマートは、米国では既に100%自社のサステナブルな調達方針にそった商品を扱っていることを紹介。一方日本では、認証取得をした魚を扱うのはまだまだ簡単ではありません。そんな中、「今年度はオーシャンアウトカムズ(O2)と協力し、宮城県女川の銀鮭養殖業を営むマルキンのAIPを資金面・販売面でのサポートを決定。那智勝浦のビンチョウマグロのFIPにも支援を行い、11月からは関東20店舗で販売する」ことを紹介しました。こういった動きは、一社だけではなし得ず、サプライチェーン全体の動きとしてくことが重要という見解を示しました。

西友企業コミュニケーション部VP・和間久美恵氏

ディスカッションの中で両者は、「売り場でのコミュニケーション手段はPOPなど限られている。直接会話ができる従業員が、いかに重要性を理解してパッションを持てるかが鍵。」(和間氏)「カタログで目につくように、だけでなく、職員や組合員に向けて学習会を行うなどの取り組みを続けていきたい。」(松本氏)と、コミュニケーションの重要性を強調しました。

このように、午前中だけを振り返っても様々な共通するキーワードが浮かびあがった今年のシンポジウム。次回は午後行われた分科会についてお届けします。

 

 

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