GoogleもIUU漁業対策に!Global Fishing Watchとは?!

先月ボストンで行われたSeafood Expo North America。世界各地から集まった1327社がブースを構え商品や技術の紹介、商談があちらこちらで行われました。並行して行われた世界の水産業のトレンドや課題について学べるセミナーでは水産物のトレーサビリティーの重要性がハイライトされました。その中でも印象に残ったのがGoogleが開発に関わったGlobal Fishing Watchです。このGlobal Fishing Watchの特徴は誰もが無料で使え、漁船のトラッキングができること。早速使ってみました!
Global Fishing Watch とは?
Global Fishing Watchとは世界中の漁船のモニタリングと海洋保全を目的とし、国際的海洋保全NGOのOCEANA、リモートセンシングやデジタルマッピング技術を持つNGOのSkyTruth、そしてGoogleの共同開発で2016年の9月に正式発表されました。あのレオナルド・ディカプリオが資金援助し強力にサポートしたことで、海外では一躍話題ともなりました。Global Fishing Watchは船に搭載されているAIS(自動船舶識別装置)から送られるシグナルを分析し、漁船の位置や航路をトラッキングします。本来AISは船舶同士の衝突予防などの安全対策のために船に搭載されています。漁船全隻への搭載義務は現在のところありませんが、大型の漁船になどを中心に搭載義務が国際的に強化されている傾向にあります。世界中の海で漁業を行う膨大な数の船から送られる情報と海域の情報を掛け合わせることで追跡の難しいIUU漁業や過剰漁業の発見に役立つことが期待されています。
違法の“可能性“をキャッチする
Global Fishing Watchの強みは1隻1隻の航路を辿れること。これにより、海上での“怪しい動き“が探知されます。例えば洋上転載。多くの漁船は港に戻り水揚げを行いますが、港には戻らず、洋上で別の船に漁獲物を積み替えることを洋上転載といいます。多くの場合、違法に漁獲された魚はこうした洋上転載を通してサプライチェーンに紛れ込みます。またそこでは労働者の移動や船への給油なども行われ、現在問題視されている奴隷問題も多く発生しています。冷凍貨物船や漁船の動きをAI技術を用いて分析した結果、なんとGlobal Fishing Watchにあるデータ上(2012年〜)だけでも洋上転載の可能性がある動きが86,000件以上もあることが判明しました。
写真を見て分かるように、日本近海でも船上転載が多数発生しています。もしも洋上転載で違法に漁獲された魚が紛れてしまっていたら…。海外では直接的な関与はないものの、奴隷問題に担架したとして大手スーパーが消費者から訴えられるケースも発生しています。この写真を見る限り、日本のマーケットもリスクがないとは言い切れません。
海外ではこうしたIUU漁業や奴隷問題との関連のある水産物をサプライチェーンから排除する方法として、洋上転載された水産物は取り扱わないと宣言している企業もあります。
IUU漁業を追跡する
Global Fishing Watchのもう一つの特徴が地図上にさまざまな情報を表示できることです。排他的経済水域(EEZ)、保全海域、海の深さ、そして過剰漁業が懸念されるマグロにおいては地域漁業管理機関(RMFO)を表示することができます。これらの情報をレイヤーとして組み合わせ、船舶の航路と比較することでIUU漁業の発見に繋がります。IUU漁業規制に法律はあっても、海の上で起こっていることを実際に発見し、防ぐことはこれまで困難とされていました。しかしGlobal Fishing Watchを使えばIUU漁業の早期発見が可能となります。
国を挙げてGlobal Fishing Watchを運用しているキリバスでは、保全海域で違法な漁業を行う漁船を発見し、罰することができました。

赤で囲まれた海域が保全対象の区域。大きな四角はキリバスが設定したフェニックス諸島保護区です。水色が船の航路を表します。水色の線が密集している部分では船の速度が落ち、漁をしている可能性が高くなるとみなされます。
AISを搭載している漁船もシグナルを停波してしまえば大海原に消えてしまいます。Global Fishing Watchではシグナルが消えた場所と再度探知された場所が表示されるため、怪しい動きは一目瞭然。
今後Global Fishing Watchは、アルゴリズムやAI技術を駆使し、違法性の高い洋上転載や禁漁海域の航海のIUU漁業への関与をより明確に判断できるように研究を重ねる予定だそうです。
世界中に点在する日本漁船
最後に水産大国、日本船籍の漁船をGlobal Fishing Watchで見てみましょう。
お隣の中国と韓国はどうでしょう?
中国
韓国
ではアメリカは?
現在、Global Fishing Watchには水揚げ後の魚の追跡機能はありませんが、サプライチェーンとの繋がりや既存のトレーサビリティーシステムとの提携などが始まると、漁獲から消費者の食卓まで、包括したトレーサビリティーが可能となります。
誰でも無料で使えるGlobal Fishing Watch、ここから使ってみることもできますよ。→http://globalfishingwatch.org
今後の展開に期待です!

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