家具メーカー イケアがサステナブル・シーフードに取り組む理由

家具メーカー イケアがサステナブル・シーフードに取り組む理由

サステナブル・シーフードが普及するためには消費者の理解や認知度の向上が必要不可欠です。とは言え、実際には顧客の認知度の低さから、取り扱い商品を増やしてもなかなか売れない、というジレンマに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

「サステナブル・シーフードに関する消費者の認知度の向上」。この命題に、自ら取り組む企業も増えつつあります。

今回ご紹介するのはその一つ。スウェーデン発のホームファニッシングカンパニーイケアです。イケアは2022年の9月15日から11月6日の約1か月間、MSC認証、ASC認証を得たサステナブル・シーフードメニューを日本国内の全店舗で提供するキャンペーンを行いました。2017年にも同様のキャンペーンを実施しており、今回は2回目となります。

家具メーカーがなぜ、サステナブル・シーフードの推進に取り組むのでしょうか?

イケアフード担当の山崎さんとカントリーフードマネジャーの佐川さんにお話をおうかがいしました。

まず、キャンペーンの開催経緯について、「イケアでは『より快適な毎日を、より多くの方々に』をビジョンに掲げ、『人と地球にポジティブな影響をもたらす、より健康的でサステナブルな暮らしを提案したい​​』という思いから、毎年『サステナビリティマンス』と題して、食べ物だけではなく、イケアジャパン全体でサステナブル商品の販売促進を行う月を設けています。今回の取り組みもその一つ。サステナブル・シーフードをお客様にもっと知ってほしいという思いから始めました」と山崎さん。

 

一番人気はフィッシュ&チップスだったそう。

 

筆者も実際に行ってみたのですが、フィッシュ&チップスに、サーモンマリネ、エビのビスクなど、レストランコーナーにずらりとならんだメニューには迫力がありました。流通の工夫もあると思いますが、純粋に現時点でこれだけのメニューの実現が可能なんだ、という印象を受けました。

期間中の販売数は16万食。喫食人数は非公開ですが、かなりの人数の方がサステナブル・シーフードを楽しんだことがうかがえます。特に「エビのビスク」は想定以上の売上だったそうです。

 

メニュー横の説明にもご注目を。

 

特に印象的だったのは、各メニュー説明から店内放送に至るまで、店内のさまざまなコミュニケーション媒体を通じて、サステナブル・シーフードについて伝えようとしている点でした。

山崎さんによると、「フェアの中で、『すべてのメニューが認証を受けたシーフードであること」をお客さまに分かりやすくお伝えしたく、ラベルはもちろんのこと、フェアの紹介文の冒頭にもその趣旨を記載し、イケアのサステナブルな取り組みについてお伝えしました」とのことでした。

多くの方に期間中、サステナブル・シーフードについて伝えられたと思うだけで気持ちが高揚しますが、気になるのは一般のお客様の受け止め方です。前回キャンペーンを実施した2017年の開催と比べると、お客様からのメッセージなどから、「サステナブル」という言葉が浸透していることを感じたそうです。

ただ、企業がまだあまり顧客に認知されていない内容を伝えていくのは労力もコストもかかります。

この点について、山崎さんは「弊社としては、まだ消費者の中で馴染みのない言葉であっても、率先して使うこと、そして継続して使い続けることが大事だと思っています。継続して使うことで、『イケアといえば』と覚えてもらえることも多くあります」と企業が認知度向上に貢献する意義を語りました。

消費者の認知度はそう簡単に変わるものではありませんが、だからといって「認知度が上がるのを待ってから販売する」のではなく、自ら「認知度を上げるところから取り組む」。この攻めの姿勢が、市場を少しずつ変革し、さらには企業のブランド力も向上させていくことになるのでしょう。

 

店内では、商品説明と共に省エネや節水、プラスチック削減につながるヒントが多数紹介されている。

 

カントリーフードマネジャーの佐川さんは「現状はまだまだサステナビリティ商品やプラントベース商品(植物性の素材を使った商品)は、コストに負担がかかるため、多くの中小企業が取り扱えません。イケアのような大きな企業が、率先していくことによって市場が活性化し、より多くの方々が地球環境と共存する商品を手ごろな価格で購入できる市場をつくっていく。その結果、誰もがこれからも素晴らしい食環境を楽しんでいけるようになるのではないでしょうか」とイケアが取り組む意義について語りました。

大手企業としての役割に共感しつつ、利益の確保とどう折り合いをつけているのかも気になります。

「もちろんビジネスをしているので売上の最大化もとても大事ですが、どうしたら共存していける社会をつくっていけるかという観点から物事を考えることがとても大事ではないでしょうか。それを大前提に、どうやったら会社が求めている売上や利益を最大にしていけるのかを考えていくことだと思います」。

売上があってこその社会ではなく、サステナブルな社会があってこその売上。考える順番を逆にするだけですが、事業戦略は大きく変わります。

「地球環境に配慮した商品が当たり前の世の中にしていくために、企業努力や実現したい想いをお客さまに伝え、共に実現していきたいと思っています」。佐川さんの言葉に、サステナブルな社会の実現に向けた強い意思を感じました。

今回提供されたシーフードは海外産でしたが、今後は日本の水産業界との連携も模索していると佐川さん。次に日本でサステナブル・シーフードキャンペーンが行われる時には、日本のサステナブルな水産物がメニューに登場することを期待しています。

 

Text/シーフードレガシー Comms & Branding 有川真理子

 

【参考】イケア、サステナブルシーフードフェアを9月15日(木)より開催