シリーズ:チャンピオンに聞くサステナブル・シーフード普及への道〜パナソニック株式会社編:後編

シリーズ:チャンピオンに聞くサステナブル・シーフード普及への道〜パナソニック株式会社編:後編

第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワードのイニシアチブ(現:リーダーシップ)部門の初代チャンピオンに輝いたプロジェクト『日本初 社員食堂へのサステナブル・シーフードの継続導入』拡大推進プロジェクト ~社員食堂から、消費行動を変革し、SDGs達成に貢献~」のパナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部の喜納厚介氏にチャンピオンになってから、そしてサステナブル・シーフードのムーブメントづくりへの思いについてお伺いします。

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第1回ジャパン・サステナブルシーフード・アワードの授賞式にて表彰される喜納さん

 

業界を超えてムーブメントをつくりたい

花岡:社食へのサステナブル・シーフードの導入は、働き方改革にまでにつながっていきそうなんですね。プロジェクト自体は今後どう展開していくのでしょうか。

喜納:まずは来年度中に自社に約100拠点ある全社食へのサステナブル・シーフードの導入を目指したいと思っています。それに加え、MSC/ASCのCoC認証を取得する大企業の拠点も増えつつありますが、この流れをさらに加速させるためにこれまで蓄積したノウハウ等を共有して活用していただける企業ネットワークを立ち上げていきたいと思っています。

この活動は導入したら終わり、ではありません。導入後も社員の皆さんに関心を持ち続けてもらうための工夫等も重要ですので、ご一緒にぜひムーブメントとして盛り上げていきたいなと思っています。

花岡:パナソニックさんのような水産業に直結しない大企業がこの動きを活性化されていることに、このムーブメントのフェーズが変わってきていることを感じます。

喜納:私たちはこの活動を色々な企業や関連するすべての業界の皆さんと一緒にムーブメントとしていきたいと思っています。そしてSDGs達成期限の2030年に、日本でも世界でもサステナブル・シーフードが当たり前になっている世界が実現できるように、微力ながらも貢献したいと思っています。

こういった取り組みは流通量が大きいレストランチェーンでの導入を進めるのが理想的なのかもしれませんが、社会的な課題解決への取り組みというよりもセールストークと捉えられやすいですし、社会的に良い物でも少し高くなると買ってもらうのがなかなか難しくなるということがあると思います。

ですから、まずは大手企業の社員食堂に導入され、社員の方々の中でサステナブル・シーフードの認知度を上げ、消費行動を変えていくことがキーになるのではと思っています。2030年もそうですが、2025年の大阪万博もSDGsへの取り組み意識を盛り上げるきっかけになればとも思っています。

 

パナソニックの社員食堂で提供されるサステナブル・シーフードを使ったランチ(提供:パナソニック株式会社)

 

花岡:社食が体験型メディアのような位置づけにもなっていて、社員の皆様がご自宅で社食での体験を共有して週末にスーパーに買いに行く、というサイクルがあるというお話を以前されていましたよね。

喜納:はい。単に、社員にサステナブル・シーフードの社会的な意義を伝えるだけでなく、どこで売っているのか、ネットでも買えるよ等の情報を、社食のテーブルの上にあるPoPなどでも発信していたりして、消費行動を変えてもらうような取り組みをしています。ですので、社食の社員の会話の中でも「この間スーパーでこのマークを探して買ってみた」とか、「前からこのマークを知っていたけどその意味合いが分かってなかった」などよくサスシーのことが取り上げられているようです。

 

取り組みを前に進める3つの極意

花岡:楽しみですね。最後に、これからアワードに応募する方々へ応援メッセージをお願いします。

喜納:私たちのようなの日本で初めてのプロジェクトを始めたり広げたりする上で大切なポイントは3つあると思っています。

まず1つめは主体的な姿勢と思いがあるかどうか。

実際に社食にサステナブル・シーフードを導入しようとしても自社だけではできません。給食会社様に単にお願いするだけでなく、自分たちが主体性をもって社員に対して認知向上を図り、食べてもらえるよう取り組むから是非手伝ってほしいという思いや姿勢を伝えることが大事です。

2つめは、win-winのストーリーを作れるかどうかです。

当社としては、社食へのサステナブル・シーフード導入に社会的な意義を見出した訳ですが、給食会社様としても取り組む価値がある活動と思っていただくために、オリンピックに向けて必ずサステナビリティに対する関心が高まるから、今取り組まれることで「サステナビリティに先進的に取り組む企業」と発信できますし、当社での実績を他企業での営業活動に活用いただくこと等も提案しました。パートナー企業にも前向きに取り組んでいただけないと物事は前に進まないと思います。

3つめは社内外のパートナーと何でも相談していただける対等な関係を構築することです。

どんなことでも相談くださいと常々お伝えすることで、様々な課題が浮き彫りになり、早い段階で対策を打てたので、前に進めることができたと思います。例えば、当初給食会社様から否定的な反応が大きかったのは、全てをサステナブル・シーフードに変えないといけないのではとの誤解があったからで、課題提起を受け議論することで、月1回の提供から始めるという現実的な落としどころを見出せました。また、ハラル認証との混同で、包丁等の調理に関連するすべての物品を新しく発注しようとされた会社が何社もあったのですが、止めることができました。

お互い立場は違いますが、社会的な意義のある活動のパートナーとして喧々諤々と議論し、協力する関係ができれば、次に進むための知恵やノウハウが生まれます。私たちの取り組みは本当に皆さんに育ててもらったと思っていますが、それも対等なパートナー関係だったからこそですので、非常に大切だと思っています。

花岡:素晴らしいですね、これからも応援しています。ありがとうございました。

本ブログでも喜納様がご紹介されていた、サステナブル・シーフードの導入拡大や促進をするための企業ネットワークにご興味のある方は、下記メールアドレスまでご連絡をお願いいたします。
sus-sea@ml.jp.Panasonic.com

 

*本記事は株式会社シーフードレガシーのブログより転載されたものです。