EU、アメリカに次いで世界で最も多くの水産物を輸入し消費している日本は、世界の水産物の持続可能性を考える上で外すことのできない存在です。中でも消費者と直接関わりを持つリテーラーは、サステナブルシーフードを一般消費者に広める重要な役割を担っています。
そこで、WWF ジャパン、グリーンピース、シーフードレガシーは、リテーラーと持続可能な水産物調達方針の設定における現状と課題を共有し解決策を共に考えていくため、7月9日に「リテーラーの持続可能な水産調達を考える会 第1回:持続可能な水産物調達方針設定における課題と解決策」を開催しました。当日は、複数の大手小売企業から16名が参加された中、持続可能な水産物調達の重要性や、それを実現する為の具体的プロセス、また漁業者の取り組みとして養殖改善に取り組む地方事例などが各団体から紹介されました。
シーフードレガシーからは、7月に公開した最新レポート、「水産物の持続可能な調達方針とその実現に向けたマイルストーン〜米国小売編〜」から、大手アメリカ小売企業の取り組み事例を紹介しました。
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「水産物の持続可能な調達方針とその実現に向けたマイルストーン〜米国小売編〜」
北米では15年ほど前からサステナブルシーフードの機運が高まっており、現在では小売企業の90%以上が明確な調達方針を公開するなど、その取り組みは広く浸透しています。このサステナブルシーフードマーケットの急成長と成功の背景にはリテーラー中心の強いイニシアチブとNGOからの統一されたメッセージがあります。特に北米では、Conservation Alliance for Seafood SolutionsというNGOなどの専門組織からなるグループがまとめた、水産物の持続可能な調達に関する取り組みの6か条(Common Vision)が北米を中心に事業展開するリテーラーに取り入れられています。
本レポートでは北米売上上位リテーラーの調達方針とその実現に向けたタイムラインをグラフィックを用いて分かりやすく紹介しています。例えば、世界最大手のウォルマートでは、2005年に企業方針にサステナビリティを追加し、その後MSC認証済の水産物の割合を徐々に増加させています。2010年には、2005年当時目標になかったFIP、AIPを調達方針に加え、翌年からは2年毎の進捗報告を義務づけています。
これらの例から、多くの企業が調達方針の策定から10年ほどの長い年月をかけて目標を達成していることが分かりました。また、その過程で、認証スキームの途中追加など柔軟に目標を変化させていること、非競争連携プラットフォームを設立し、同業者を巻き込みプロアクティブに行動していることが見えてきました。これは日本のリテーラーにも応用できる考え方であり、ステップ1:社内ワークショップを開催し複数部署で問題意識と解決ビジョンを共有すること、ステップ2:ベースラインのチェック、タイムラインや調達先の設定などマスタープランの作成・・というように長期的かつ段階的に取り組めば実現も不可能ではありません。
例えば調達する水産物のうち、ある一定の割合を認証製品にするという目標を立てるのであれば、プライベートブランド商品から取り組むなど優先順位をつけて着実に進めていくことが重要です。日本でも同業者が集まり、課題や意見交換を行う場を設けていくことで、持続可能な調達実現に向けた大きな推進力に発展していくことが期待されます。
後半では参加企業が自社の取り組みや課題を発表し、消費者からの理解、社内外での情報共有やコミュニケーションの取り方、コストが課題となっていることがわかり、今回はこれらの問題解消に向けた第一歩となりました。
シーフードレガシーでは今後もリテーラー同士が集まり議論を深めていく場として継続的にこのような会を開催していきます!規模の大小や参加する方の部署に決まりはありませんので、ご興味のある方は是非お問い合わせください。
次回はこの後に開かれたネットワーキング・レセプションの模様をお伝えします。