サステナブルシーフード?いやいや、水産系は関係ないから…と思った方、必見です。企業のCSRやブランドイメージ確立のため、国連で採択されたSustainable Development Goals(SDGs/持続可能な開発目標)をベンチマークと定め、CSRに取り組む企業は多いのではないでしょうか。実はサステナブルシーフードもSDGsの17の目標のうち、特に12番(持続可能な生産と消費)と14番(海洋の持続可能な利用)に当てはまる重要な課題なのです。10番(人や国の不平等をなくす)や17番(パートナーシップによる問題解決)も深く関係します。 北米、EU、日本などの主要水産市場へ輸出するために世界各地で乱獲が急増している背景もありますが、水産関連で実際にこれらの課題に取り組んでいる企業は日本ではまだごくわずか。今回は企業の内側から取り組めるSDGs目標、サステナブルシーフードに関する5つのご提案です。
世界的に乱獲が問題視されて、資源量が2.6%と危機的状況の太平洋クロマグロ。世界中から厳しい管理と保全を求める声が上がる中、日本のスーパーやレストラン等では当たり前のように販売、提供されています。クロマグロ同様、絶滅危惧種に指定されたウナギの資源も危機的状況です。私達の世代でこうした魚がいなくなる…なんて無責任なことがあっていいのでしょうか。こうした絶滅危惧種の取扱を中止することは日本の魚食文化を将来へつなぐための大きな一歩です。 また、日本近海の魚で資源状況が心配される魚種については水産庁発表の資料「平成28年度我が国周辺水域の資源評価一覧(50魚種84系群)」も参考になります(グローバルスタンダードとは異なる方法により評価されたものですが、少なくとも取り扱いを避けるべき種を知る参考にはご活用いただけます)。赤ラベル、またラベルの色に関わらず資源が減少傾向にある魚種は避けるのがベストでしょう。いきなりゼロにするのが困難であれば、タイムラインを作り、「20XX年までにXX%削減、20YY年までに取扱を中止する。」といった具体的な数値目標を立てることが有効的です。
国際的に認められているサステナブルシーフードの証であるMSC認証やASC認証を取得している水産物の取り扱いを拡大しましょう。日本でも大手スーパー等では取り扱いの拡大や普及が着実に進んできています。世界の漁獲高の約1割はMSC認証を受けているというデータでもわかる通り、国際的に急速な広がりを見せています。
漁業改善計画(FIP:Fishery Improvement Project)はご存知ですか?持続可能な漁業と供給を確立するために漁業者と小売企業などが協力して行うプロジェクトです。企業側は資金を提供したり、プロジェクトで漁獲された水産物を買い取ることで漁業者を支援します。漁業者は専門NGOなどの手助けを受け、最終目標である認証取得を目指し、持続可能な漁業に取り組みます。 昨年末、西友(小売企業)×海光物産(漁業者)×オーシャンアウトカムズ(国際NGO)の3者が連携し、日本で初となるFIPが開始されました。FIPは東京オリンピックの水産物調達コードにも入りました。グローバル市場では、タラなどの主要な白身魚でFIPもMSC認証もない漁業は、全体のたった16%(2012年時点)というデータもあります。
水産物のサプライチェーンは非常に複雑で世界の漁業はIUU(違法・無報告・無規制)漁業や奴隷問題といった深刻な問題に直面しています。産地情報やサプライチェーンの透明性が得られず、IUU漁業や奴隷労働に関与した可能性のある水産物を販売して利益を得たとなれば企業イメージの低下につながるリスクもあります。包括的なトレーサビリティーを実現すればこうしたリスクは緩和されます。
商品として水産物を取り扱っていない会社でもできることはあります。例えば社食のサステナブル化もそのひとつです。まずはケータリング会社に相談し、どのような魚が提供されているのか調べてみてください。2012年のロンドンオリンピック時に水産物とは直接関係のない企業(スポーツメーカー、銀行、シンクタンクなど)でも「社食をサステナブルにしよう!」という動きが広がりました。この活動はロンドンオリンピックのレガシーとして高く評価され、当時のロンドン市長やロンドンオリンピック委員会会長から表彰されるほど。 上記の提案全てを行うことは難しくとも、「20XX年までにXXXを達成する。」とタイムラインを作り企業のコミットを公表することが重要です。ロンドンオリンピック時の企業の誓約についてはこちらのブログで紹介しています。社食のサステナブル化は海外では広く浸透しており、米グーグルやFacebookなど多くの企業で社食のサステナブルシーフードポリシーが制定され、高く評価されています。
シーフードレガシーではこのような活動に意欲的な企業を応援しています。興味はあるけれどどこから手を付けたらいいのか分からない、そんなときはお気軽にご連絡ください。国内外の事例のご紹介やあなたの会社にとってベストなアプローチをご提案いたします。